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サイエンス

人間の知性をつかさどる固有の神経細胞「ローズヒップ・ニューロン」が発見される


人間の知性はどこからくるのか?という疑問は古くからありますが、脳神経学においてもいまだに答えはみつかっていません。しかし、動物臨床試験でよく用いられるマウスなどのげっ歯類にはなく、人間の脳にはある「rosehip neuron(ローズヒップ・ニューロン)」と名付けられた新しい神経細胞が発見され、動物と人間を隔てる知性に関わっている可能性が指摘されています。

Transcriptomic and morphophysiological evidence for a specialized human cortical GABAergic cell type | Nature Neuroscience
https://www.nature.com/articles/s41593-018-0205-2

A new type of neuron lurks in the human brain, and we have no idea what it does | Popular Science
https://www.popsci.com/new-brain-cell-rosehip

学習や思考などに関わり高度な認知能力に関係していると考えられている大脳新皮質の上層の10~15%部分に、未知の細胞が発見されました。この新細胞の発見は、アメリカ・シアトルのアレン研究所によって開発されていた、個々の遺伝子プロファイルの配列決定の研究と、ハンガリーのセゲド大学のガーボル・タマシュ博士の研究チームが開発していた脳細胞の電気的活動の計測という2つの研究成果を合わせることで実現されたそうです。

新たに見つかった細胞はこれまで知られている脳細胞の半分程度の大きさしかない小さなもので、他の細胞に信号を伝える軸索終末の形状がバラの果実のローズヒップのような形状を持つという特徴がありました。そのため「ローズヒップ・ニューロン」と名付けられたとタマシュ博士は話しています。このローズヒップ・ニューロンは、マウスなど他のげっ歯類では見つかっていない細胞だとのこと。

by Dean Morley

人間が他の動物に比べて知的なのは脳の大きさが原因だという説が古くから支配的でした。しかし、単に脳の容積や脳細胞の量だけでなく、高い認知能力を生み出す人間に特有の脳細胞があると考える、脳の質の違いが理由だとする説もありました。今回、げっ歯類に見つからず人間にだけ見つかったローズヒップ細胞の発見は、この知性に関わる特別な細胞の存在を示唆するという意見が出されています。

これまで、脳疾患の治療などでマウスを使った臨床試験が人間に活用できない多くの例がありましたが、ローズヒップ細胞のように人間に固有の細胞が存在するとすれば、その謎は解けそうです。

by Charlotte Boyes

なお、ローズヒップ細胞はげっ歯類で見つかっていないだけで、人間だけが持つ特別な細胞とは限りません。このため、例えばサルやイルカなど比較的知能の高い動物にローズヒップ細胞に似た細胞が存在しないかどうかが、今後、調査されることになりそうです。

また、ローズヒップ細胞は認知能力へ影響が出るアルツハイマー病などの障害に関係しているのではないかとも指摘されています。タマシュ博士は、人間に特有の精神疾患に対するローズヒップ細胞の役割を探求し、それと同時に皮質層にある他の脳細胞の多様性をさらに研究する予定だそうです。

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in サイエンス, Posted by logv_to