生き物

絶滅寸前まで追い込まれたチョウが研究者たちの必死の努力によって復活し自然に増え続けている

by U.S. Fish and Wildlife Service Southeast Region

かつて絶滅が危惧されていた貴重なチョウが、科学者による保全運動によって、活動開始から2年で自然公園内で自然繁殖できるぐらいにまで個体数を取り戻しました。地元メディアがその詳細を報じています。

Two Florida Keys butterflies have been saved from extinction | Miami Herald
https://www.miamiherald.com/news/local/community/florida-keys/article215330270.html


フロリダ州南東部を生息地とするマイアミ・ブルーは、アメリカの絶滅危惧種法によって絶滅危惧種に指定されたチョウです。かつてはフロリダ州一帯で見かけられたチョウでしたが、近年の都市開発によって個体数は急速に減少。さらに、1992年にアメリカ・フロリダ州を襲い、265億ドル(約3兆円)の経済損失を生んだ「ハリケーン・アンドリュー」によってそのほとんどが死滅してしまい、1999年にフロリダ州の細長い列島「フロリダキーズ」の先端部で生き延びていた数十匹が発見されるまで絶滅したものと考えられていました。



シャウスアゲハは羽を広げるとおよそ12cmほどにもなる大型のチョウで、フロリダ州南東部の熱帯広葉樹に生息しています。都市開発が進んで樹木が減り、殺虫剤が多く使われるようになったことで個体数が激減。2009年にはNatureServeの保全状況で「絶滅危惧(危急)」に指定され、2012年にはわずか4件しか目撃されなくなるほど、極めて希少な種となってしまいました。

by U.S. Fish and Wildlife Service Southeast Region

フロリダ大学・国立公園局・フロリダ州魚類野生生物保護委員会・北アメリカチョウ協会など複数の団体に所属する研究者が、絶滅を危惧されるマイアミ・ブルーやシャウスアゲハの保全を訴え、連携しながら保護活動を始めました。

2003年にフロリダ大学は、マイアミ・ブルーの卵を野生で100個採集し、大学内で飼育を始めました。2004年には2500匹にまで増やし、ビスケーン国立公園エバーグレーズ国立公園など自然公園に放しました。そのかいもあって、かなり難航はしたものの、フロリダキーズの国立公園では少しずつマイアミ・ブルーの個体数は増加しているそうです。

なお、マイアミ・ブルーの保全活動の予算を得るため、フロリダ博物館は地元のビール醸造所と協力し、「マイアミ・ブルー・ボック」という限定ビールを販売しています。また、マイアミ・ブルー・ボックやピルスナーグラスをスキャンすることで、マイアミ・ブルーの3Dホログラムやその生態についての解説を楽しむことができるアプリを配布するなどの取組みも行っています。


一方、シャウスアゲハは成体になってからの寿命がおよそ2週間と短く、その間に交尾ができなければ卵を残すことができません。そのため、研究チームは2012年の春から初夏にかけてシャウスアゲハの幼虫と卵を採集し、フロリダ自然博物館のMcGuire Center for Lepidoptera & Biodiversity内で飼育しながら卵を増やしていきました。

そして、研究チームは2014年6月に、シャウスアゲハのメス11匹とオス4匹、さらに幼虫308匹をエリオット・キー島に放しました。幼虫は島に自生するライムの木の葉1枚1枚に放したところ、ものすごい勢いで葉を食べて急速に成長していったとのことで、研究メンバーであるジャレット・ダニエル氏は「まるで葉を食べるための機械のようです」と例えています。

ただし、シャウスアゲハの幼虫を育てて公園に放っても、その幼虫全てが成虫になるとは限りません。公園に生息するリスや鳥といった捕食者や、熱帯低気圧の激しい雨風によって、幼虫の多くは成虫になる前に死んでしまうため、チョウに羽化できる個体は放たれた幼虫のわずか2%にも満たないそうです。「彼らは過酷な環境を生きなければなりません。シャウスアゲハの幼虫は、違う生き物のエサでもあります。それが自然なのです」とダニエルズ氏は語っています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1i_yk

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