「Googleがアルゴリズム的な判断でユーザーのシステムを停止させた」として影響を受けた人物が抗議の声を挙げる
Googleが提供しているクラウドプラットフォーム「Google Cloud Platform(GCP)」はさまざまなビジネスシーンで活用されています。そんなGCPを使って発電施設のシステムをモニタリングする環境を構築していた企業がある日、ほとんど時間的な猶予も与えられない状態で突然GCPからシャットアウトされ、発電システムが一時的に停止してしまうという事態に追い込まれました。
Why you should not use Google Cloud. – Punch a Server – Medium
https://medium.com/@serverpunch/why-you-should-not-use-google-cloud-75ea2aec00de
Punch a Serverと名乗る人物がブログメディアのMediumに投稿した内容によると、この人物が運営している企業は風力・太陽光発電の稼働状況をモニタリングするためにGCPを使用しているとのこと。火力や原子力による発電とは異なり、自然を相手にする風力・太陽光発電は不安定さから逃れることができないため、何よりも24時間体制での細やかな稼働状況の管理が欠かせません。この人物の会社では、8カ国にひろがる発電拠点から供給される電力をリアルタイムでモニタリングし、発電状況と需要のバランスを緻密にとることで、ロスのない電力ビジネスを実現してきたとのことです。
しかしその仕組みが一時的にとはいえ崩壊してしまったのが、2018年6月28日の朝のこと。Punch a Server氏はサイトの稼働状況をモニタリングするサービス「Uptime Robot」からサイトがダウンしているという知らせを受け取りました。そして自身のメールアドレスの受信ボックスを確認したところ、「潜在的に疑わしいアクティビティがあった」としてクラウドサービスの使用停止を通知するGCPからのメールが届いていたことに気がついたそうです。
この影響で、電力モニタリングシステムは完全に停止し、アプリのサーバーやデータベースにはアクセスできない状況が続いたとのこと。この状況に対処すべく、Punch a Server氏は問い合わせ先を調べたものの、問い合わせ用のチャットはサービス時間外で、電話番号もわからない状態。受け取ったメールには、支払いに使うクレジットカードの写真と、行政機関が発行した身分を確認できるIDカードなどの写真を送れという一文があったので、この人物はカードを保有していた同社のCFO(最高財務責任者)をたたき起こして対応をとったそうです。
この時、GCPからのメールには「支払担当者が3営業日以内にアカウント確認フォームに記入して規約違反状態を修正しない場合、プロジェクトは削除されます。このフォームでは、お支払い手段に関連する身元と所有者を確認します。必要な書類が提出されない場合、恒久的な口座閉鎖が発生する可能性があります」と書かれていたとのこと。
ブログには明記されていませんが、この時点で何らかの支払いに関するトラブルが存在していたようで、GCPはその規約違反を理由にサービスを一時的に停止し、「3営業日」という是正のための期間を設定していたとも受け取れます。Punch a Server氏は「まずサービスを停止する」というやり方に納得できていない模様で、「もしカードの所有者が休暇を取っていたり、何らかの理由で3日間連絡が取れなかったらどうなる?我が社は、何年もかけて作り上げてきたものを全て失うところでした。何百万ドル(数億円)という売上を失うところでした」と、GCPがとった対応に疑問を投げかけています。
Punch a Server氏が対応をとったところ、約20分後に全てのシステムが復旧したとのこと。しかし実はこれは2度目のことで、1度目に同様のことが起こった時は数時間にわたってシステムがストップする状況になってしまったそうです。GCPからのメールには「ご不便をおかけして申し訳ありません」という定型文が記載されていたそうですが、Punch a Server氏は「残念ながら、機械には『ご不便の分量』は理解できないのだろう」と恨み節をつづっています。
見方によれば、何らかの問題があるまま放置していた側にも一端はありそうな構図ですが、Punch a Server氏は「とりあえずシステムを止めて説明を求めるようなやり方はとるべきではない」と異論を唱えています。「Googleが疑わしい行為に対して目を光らせる必要性は理解する」とする一方でPunch a Server氏は、ここに「人間が介在する必要性」があると指摘。かつてAmazon Web Service(AWS)を使っていたころには、なにか問題があったらまずはサービス担当者とのやり取りがあり、対応がとられていたとPunch a Server氏は述べており、AIやアルゴリズムが機械的に全てを判断するという仕組みをとるべきではないと主張しています。
Punch a Server氏はブログの文末で「GCPがこの件に関心を持ってくれることを望みます。それまでの間はもうGCP上でプロジェクトは作りません」と宣言。するとその後、GCPから「同様のことが繰り返されないための措置をとる」という連絡を受け取ったとのこと。そのメールの中身には、「今回のお客様だけでなく、全てのユーザーに対してサービスを改善しようと思っているスタッフがGCPの中には大勢います」と書かれていたそうです。
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