メモ

なぜ公式謝罪が謝っているように聞こえないかがわかる「謝罪の科学」

By livibetter

誰かを傷つけてしまった時、人は謝罪することを迫られ、有名人や責任者であれば公の場で謝罪を行うわけですが、どういうわけか「謝っているように見えない」と思われることもあります。なぜ人によって謝罪に差が出てしまうのか、その原因を探るべく心理学者によって調査が行われ、その研究結果が発表されています。

An affirmed self and a better apology: The effect of self-affirmation on transgressors' responses to victims
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022103114000638

StatusPage.io Blog - Why Most Public Apologies Suck
http://blog.statuspage.io/why-public-apologies-suck

アメリカのバスケットボールチームであるロサンゼルス・クリッパーズの元オーナーのドナルド・スターリング氏は、マジック・ジョンソン氏などに対する人種差別発言の録音が公開されたことで、公に向けて何度も謝罪を行うことになりましたが、最終的にNBAを追放され、250万ドル(約3億円)の罰金処分となり、チームを売却してオーナーの座を失うという事態に発展しました。


彼はインタビューで「私は人種差別主義者ではありません。人々を愛する気持ちをいつも持ち合わせています。どういうわけか問題の発言が私の口から出てしまったようです」と発言しましたが、人々の心には「誠意を込めた謝罪」と映らなかったことがよくわかる例となっています。

◆悪い謝罪の科学

By butupa

スタンフォード大学の心理学者カリーナ・シューマン氏は、98人の成人を調査して個々の個人的資質と価値のランキングを作成しました。シューマン氏は98人のうちの一部をグループ分けして「なぜランキングが高いことが自分たちにとって重要なのか」について簡潔に書くよう依頼しました。その後、98人の対象者全員に「誰かを傷つけたけど謝っていないこと」を思い出してもらい、もし謝罪するなら何と言うかを書き出すよう依頼しました。

シューマン氏は「人間は自らの保全性・モラル・適切性などの『良いイメージ』を維持しようとする強い傾向がある」という考えに基づいて調査を実施しており、この考え方が数多くの謝罪をうそくさく感じさせる原因になっているそうです。誰かを傷つけたり失望させた時、人は自身の理想像を危険にさらしてしまいますが、そんな状況におかれた人はとっさに自我を守ろうとしてしまうため、スターリング氏のような謝っているように聞こえない「弁解的な謝罪」になってしまうとのことです。

なお、参加者が書き出した謝罪文は個別にチェックされましたが、「なぜランキングが高いことが自分たちにとって重要なのか」について書いたグループは、他の参加者に比べてはるかに良い"弁護的でない"謝罪を書いたとのこと。これは事前に自分の理想像について考える時間を設けたことで、他の人よりも自己弁護が少なく済んだため。シューマン氏によると、謝罪の前に数分間でも自らの理想像を自己肯定すると、自己弁護的な謝罪がより悪い結果を生むことがわかることから、最終的に自分へのダメージが少なくなる「良い謝罪文」につながるそうです。

シューマン氏によると、典型的な「悪い謝罪」には4つの特性があり、「不快な行動や失言を正当化する」「被害者を非難する」「弁解をする」「事態の最小化を図る」が含まれていると悪い謝罪になるとのこと。スターリング氏はマジック・ジョンソン氏への人種差別発言に対して「私が言ったことは全て間違っていた。済まない。彼は良い人だ。何が言いいたいかというと、彼がしたことは未成年の助けになっただろうか?私はそうは思わない。彼はロサンゼルスの子どもにとってお手本にはなれないだろう」と述べました。

シューマン氏の論文をまとめたStatusPage.ioは「スターリング氏は最後まで自我を守り切った悪い謝罪のマスタークラスです」とコメントしています。

◆優れた謝罪を行う方法とは?

By Julie Blaustein

2015年5月にアメリカ・ペンシルバニア州のフィラデルフィアで発生したアムトラック脱線事故では、8人の乗客の命が失われ、200人以上の負傷者を出す大事故となりました。人々の命が失われた場合、多くの企業は謝罪を体裁よくごまかそうとしますが、謝罪の仕方によっては会社が倒産してもおかしくない状態です。そんな中、アムトラックのジョー・ボードマンCEOは、事故発生後すぐに謝罪を発表しました。

謝罪文の一部を抜粋すると、「心より謹んで亡くなった方々に哀悼の意を表します。彼らを失ったことは、私たち家族、および社会に大きな穴を残しました。アムトラック・ファミリーを代表して、私は可能な限りのお悔やみを申し上げ、亡くなった方々と彼らを愛する人々にお祈りを申し上げます。アムトラックは全面的に責任をとり、この悲劇を生み出してしまった我々の行いについて深くお詫び申し上げます」という内容になっており、シューマン氏は「現代における最良の謝罪の1つ」と述べています。

なお、シューマン氏の研究では「有効的な謝罪」を行う8つの方法について説明されており、以下のようになっています。
1:実際に『すみません』などの謝罪の言葉を使用する
2:混乱・失敗を認める(「アムトラックが全面的に責任をとり」の部分)
3:どのように事態に対処するか解決策を伝える
4:他人に押しつけたり、非難せずに何が起こったのか説明する
5:事態の改善を約束する
6:自分がどれほど人を傷つけたか・不快にさせたかを理解していることを知らせる
7:「2番」とは別に、「私は間違っていました」など、間違いを認める言葉を使用して容赦を求める
8:アムトラックの謝罪文を読んでどこが上記の7つに当てはまっているか、2回以上確認する

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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