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剣闘士は筋骨隆々の戦士ではなく皮下脂肪に覆われ食生活は炭水化物中心だった

by Nathan Rupert | Flickr

古代ローマにおいて見世物として戦った剣士「剣闘士(グラディエーター)」はたびたびフィクションの題材に選ばれ、その際には筋肉質な体として描かれます。しかし、考古学研究によると、実際の剣闘士は炭水化物中心の生活だったため、割れた腹筋が目立つことなく、腹部も胸部も皮下脂肪に覆われていたとのことです。

Stable Isotope and Trace Element Studies on Gladiators and Contemporary Romans from Ephesus (Turkey, 2nd and 3rd Ct. AD) - Implications for Differences in Diet
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0110489

Gladiator Diets Were Carb-Heavy, Fattening, and Mostly Vegetarian - Gastro Obscura
https://www.atlasobscura.com/articles/what-did-gladiators-eat

映画「 グラディエーター」ではラッセル・クロウ演じる剣闘士が筋肉質な体を持つ屈強な戦士として描かれています。このようなフィクションにおける剣闘士の描かれ方から、剣闘士と聞いて筋肉隆々の体を思い浮かべる人も多いはず。

Gladiator - Trailer - YouTube


しかし、考古学の研究によると、当時の剣闘士は炭水化物中心の生活を送っていたため、腹部や胸部は皮下脂肪に覆われていたとのこと。現代の兵士や運動選手は肉や魚といったタンパク質を多く摂取しますが、剣闘士は大麦や豆といった炭水化物を多く含む食品が中心で、動物性のタンパク質の摂取量が少なかったといいます。

by Migle

この研究結果はウィーン医科大学の医学人類学者たちが示したもの。研究チームは、トルコ・エフェソスにある剣闘士の墓を調査しました。この墓地には67人の剣闘士と、剣闘士の配偶者とみれらる1人の女性奴隷の骨が埋葬されていました。墓地にあった大理石板には、剣闘士が戦う場面が浮き彫り細工で描かれていたことから、研究者は墓地が剣闘士を埋葬したものであると特定したといいます。

68体の骨は全て完全な形ではなかったものの、足や腕の骨、頭蓋骨、歯などは、研究者が当時の医療や剣闘士の栄養状態を理解できるほどには残っていたとのこと。骨に含まれるカルシウムや亜鉛から当時の食生活を部分的に再現することができるため、研究者は同位体解析という手法を駆使して調査を行いました。

その結果が、「当時の剣闘士は動物性タンパク質をあまり取っておらず、健康的な量のカルシウムや、炭水化物が豊富な豆科の植物を食べていた」という内容であるわけです。なお、プリニウスの「博物誌」には剣闘士が「hordearii(大麦を食べる人)」と記されており、今回の研究で「肉をほとんど食べていなかった」とされたことと一致しています。

剣闘士が肉を食べなかったのは奴隷であり身分が低かったからだと考える人がいるかもしれませんが、実際は、剣闘士の多くは戦争の捕虜や受刑者で、刑期などが終わった後にお金を稼ぐために任意で剣闘士となっている人もいました。このため、剣闘士が炭水化物中心の食生活だった理由について、研究者は「体を保護するため」だと見ています。脂肪で覆われた体は神経終末が露出しません。また傷を負ったり出血したりといった「視覚効果」は生まれても、脂肪で守られていれば戦い続けることができるほどには傷を浅く保つことができます。

この研究結果が正しいとすれば、なぜ古代の壁画などでグラディエーターの体形が筋肉質なものとして描かれてきたのかという疑問が残りますが、これは「現代の人がPhotoshopで体形を修正するようなもの」だといいます。


当時の剣闘士が炭水化物中心の生活を送っていたことは、彼らが不健康だったということや、ひどい待遇を受けていたということを意味しません。むしろ、訓練の場である要塞には冬場のトレーニングのための温かいフロア、風呂、医務室、水道があり、受刑者であっても一流の医療を受けることができたといいます。一般の人々と剣闘士の傷の処置の方法を見ても、剣闘士の方がきれいに処置されていることがわかるとのこと。また、現代の運動選手が行うように、炭にした植物や骨灰から作られたカルシウムサプリを摂取しており、一般人よりも圧倒的にカルシウムレベルが高かったそうです。

by Mike

当時のエリートは大きな宴会に剣闘士を招待することもあったため、中には宴会に参加する剣闘士もいたかもしれませんが、自分が娯楽の一部として死ぬ可能性がある剣闘士の多くは戦いのためにあえて炭水化物中心のストイックな生活を送っていたのだとみられています。

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