サッカーにおいてコーナーキックはどれくらい得点につながるのか?
by Bianca Isofache
サッカーにおけるコーナーキックは、守備側のチームの選手が最後にボールに触れてゴールラインを超えた際に行われるプレーです。圧倒的に攻め込まれたチームがボールを蹴り出してコーナーキックに逃げるという場面は、サッカーにおいてよくあるシーンのひとつですが、そのコーナーキックは実際のところどれほどの価値を持ったプレーなのかをThe Washington Postがデータを用いて分析しています。
The value of a corner kick in soccer - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/news/fancy-stats/wp/2015/05/02/the-value-of-a-corner-kick-in-soccer/
守備側のチームが相手チームの得点機会を防ぐためにボールを蹴り出しコーナーキックに逃げる、というのはよくあることです。しかし、守備側チームがコーナーキックに逃げずにボールをつなぐことで、逆にカウンターから得点を決めるということもあります。2018FIFAワールドカップでセネガル代表と劇的な引き分けに終わった日本代表でも、原口元気選手のゴール前でのクリアが相手選手へのパスとなってしまい最初の失点につながってしまっています。原口選手は試合後に「もしかしたらコーナーに逃げた方が良かったかもしれない。それは、『たられば』なのであれですが。正直コーナーも怖いから、コーナーに逃げたくない気持ちもあった」と語っているように、コーナーキックに逃げるべきなのかそうではないのかは判断が非常に難しいところです。
そこでコーナーキックに逃げるべきか否かをリアルな数字で判断するために、コーナーキックからどれくらいの確率でゴールが生まれるのかをデータ分析したのが統計学者のマイケル・カレイさんです。カレイさんはイングランドのプレミアリーグ、ドイツのブンデスリーガ、スペインのリーガ・エスパニョーラという3つのプロサッカーリーグで行われた試合のデータを2年分集め、その中で行われた約2万回分のコーナーキックがどのような結果につながったかを調査しています。なお、調査ではコーナーキックから直接決まった得点から、コーナーキックからの流れで最終的に決まった得点、さらにはコーナーキックからのプレーで与えられることになったペナルティなど、さまざまな要素が含まれています。
この調査によると、コーナーキックを蹴ったチームがシュートにまでつなげる確率は約35%ほどで、そのうちゴールが決まる確率は3.5%です。ただし、コーナーキックを蹴ったチームが一連のプレーでPKを獲得し、そのまま得点を決めたケースも含めると、コーナーキックを蹴ったチームがシュートを放つと10%の確率で得点しているそうです。
コーナーキックでは攻撃側のチームから身長の高い選手がゴール前に集まります。サッカーでは特にセンターバックの選手が高身長であるケースが多いため、コーナーキック時は相手ゴール前に攻撃側のチームのセンターバックが集まることが多々あります。日本代表でも高身長の吉田麻也選手がコーナーキック時にゴール前まで上がってくる姿がたびたび見られるわけで、実際にコーナーキックから吉田麻也選手がゴールを決めるということもあります。しかし、守備の要となる選手が相手ゴール前にいるということで、ボールを奪われれば素早いカウンターを仕掛けられるケースが多く、攻撃側のチームが一気にピンチに陥ることとなります。
2万本のコーナーキックを調査したところ、コーナーキックを蹴ったチームがシュートにつなげられなかった回数は「約1万3000回」ありました。そのうちコーナーキックを蹴った側のチームがカウンターを受けるケースは「約1800回」、つまり9%の確率でコーナーキックを蹴ったチームはカウンターを受けるということになります。なお、カレイさんはチームがカウンターを受けたかどうかを「チームがアタッキングサードに侵入されたかどうか」で判断したそうです。そして、カウンターからシュートにまで持ち込まれた回数は「526回」、そのうち得点となったのは「72回」でした。シュートにまで持ち込んだカウンター攻撃が得点につながる確率はなんと13.7%で、これは平均よりも40%も高い数値だそうです。これはつまり、コーナーキックからのカウンターでシュートにまで持ち込めば、高い確率で得点が生まれることを意味しています。
しかし、「コーナーキックを蹴ったチームがカウンターを受けて得点される確率」で考えれば、その確率はわずか0.4%となります。
カレイさんは最終的に「アタッキングサードでコーナーキックに逃げるチャンスがある場合、ディフェンダーはそうすべきです。与えられたチャンスは30ヤード(約27メートル)のミドルシュートよりも危険ではなく、チームに優れた攻撃機会(カウンターのチャンス)を提供してくれる可能性もある」としています。
日本代表の失点シーンについて酒井宏樹選手は試合後のインタビューで「本当にノーリスクにするならCKに逃れても良かったけど、元気はスローインにしたかったということなので、トライしたことは間違っていない。逆に僕らとしては、瞬間的には難しいですが、『フリー』とか、もしくは『コーナー』とか言えれば良かった」と語り、原口選手のプレーを擁護しています。なお、このシーンで守備陣に指示を送る立場のゴールキーパーである川島永嗣選手は、「クリア」とコーチングの声をあげたそうです。
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