ハードウェア

Microsoftが秘密裏に独自命令セットのCPU「E2」を開発、Windows 10とLinuxの動作をテスト中


Microsoftがx86とはまったく異なる設計の命令セットを採用するプロセッサー「E2」を開発中だとRegisterが報じました。E2の開発には半導体メーカーのQualcommが協力しており、すでにWindows 10やLinuxを動かすテストも行われているとのことです。

Now Microsoft ports Windows 10, Linux to homegrown CPU design • The Register
https://www.theregister.co.uk/2018/06/18/microsoft_e2_edge_windows_10/

Windows OSを動かす命令セットはx86(IA-32)やARMが一般的ですが、整数演算ユニットや浮動小数点演算ユニット、メモリのデータへのアクセスなど処理がレーンごとに分かれる設計で、他のレーンの演算処理の動向次第で別のレーンの処理が待機する場面が出てきます。このような、あるレーンの命令が別のレーンで行われる出力に依存する構造では、待機する演算ユニットはリソースを無駄遣いしているため、命令の処理に無駄が生じ遅延が発生します。


Microsoftが独自に開発を進めているE2チップでは、「Explicit Data Graph Execution(EDGE)」と呼ばれる独自の命令セットが採用されており、既存の命令セットで発生するレーンでの待機問題をクリアするとのこと。EDGEではプログラムを単純な命令のブロックに分割し、データ依存性のない小さなトランザクションとして取り扱うことで、処理の中断を予防します。そして、ブロックを処理するコア内で多数の小さな命令ユニットを処理させることで、多くの命令を同時に処理できるようになります。このような「RISC」設計をさらに進めたような構造によって、既存のアーキテクチャよりもソフトウェアを高速に動かすことが目指されているそうです。

RegisterによるとMicrosoft Researchでは2010年からEDGEを採用するプロセッサーの開発に取り組んできたとのこと。その後、テキサス大学オースティン校で開発されていた「TRIPS」のノウハウが取り込まれる形で、IntelやARMを追い越す命令セットを採用する「E2プロジェクト」として研究開発が進められているとみられています。

E2の開発にはQualcommが参加しており、記事作成時点ではFPGAとして開発されていると予想されています。すでにWindows 10とそのアプリケーションを移植する試験が行われており、2017年10月の時点でLinuxを起動することにも成功していたとRegisterは述べています。

記事作成時点で「E2」に関するページはMicrosoft Researchサイト上から削除されていますが、以下のアーカイブでページの内容を見ることは可能です。

The E2 Dynamic Multicore System - Microsoft Research
https://web.archive.org/web/20160428161757/http://research.microsoft.com:80/en-us/projects/e2


ここではE2は既存の固定的なマルチコアシステムと異なり、CPUの物理コアを強力な論理プロセッサーとして利用できる構造「Core Fusion」を採用するため、単一チップでも幅広いワークロード処理のニーズを満たすことができると説明されています。Core Fusionによって、多くの物理コアが同時に複数のデータセットに対して並列動作するとのこと。そして、Core Fusion技術によって高い電力効率が得られ、組込み系端末向けチップから高性能サーバークラスのプロセッサーまでをカバーできると述べています。


なお、Registerの報道を受けてMicrosoftは、「E2は現時点では『研究プロジェクト』であり、製品化予定はありません」とコメントしています。

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