スタートアップ企業が求めるベンチャーキャピタリストの理想像とは?
スタートアップ企業にとって、ベンチャーキャピタリスト(VC)などから投資される資金や経営に関係するサポートは、とても重要な要素となっています。投資企業のNewfundに務めるアンリ・デシャイエ氏とシカゴ大学のオーウェン・レイノルズ氏が、運用資産残高が3000万ドル(約33億円)~約20億ドル(約2200億円)を超えているVC98人と会社創設者を121人集めてアンケートを行い、スタートアップ企業が求める理想のVCの姿を明らかにしています。
Do VCs really add value? — Founders say sometimes. – Hacker Noon
https://hackernoon.com/do-vcs-really-add-value-founders-says-f27bb956eb8c
◆会社創設者が見るVCへの評価
会社創設者とVCでは立場の違いがあるため、多くの質問で両者の回答が分かれる結果となりました。特に大きな違いがあったのは「投資先企業にとって、VCがどれほどの強い影響力を有しているか?」という質問でした。回答は1(最低)~10(最高)の10段階評価で回答し、質問にはVCなら会社創設者、会社創設者ならVCの立場で答えるものとなっています。
会社創設者の評価は平均で5.3となり、企業の経営にVCが不可欠ではあるものの、経営をする上ではほぼ対等の立場であると認識していました。対してVCの評価は平均で7.0となり、経営に多大な影響を及ぼしているという回答で、会社創設者よりも32%高い結果となっています。
次に「VCと会社創設者間で連絡をどの程度頻繁に行うべきか?」という質問でも評価が異なる結果となっています。この質問では「1週間に1回以上」が緑、「月に1回」がグレー、「四半期に1回」が濃いグレーで示されています。結果を見ると、会社創設者は「月に1回」と回答した人が6割に達しており、頻繁なやりとりは必要ではないと考えていました。対してVCは「週に1回以上」と回答した人が約6割を占めており、自身が会社創設者である場合は、頻繁な連絡が必要であると感じているようです。
デシェイエ氏は、「この格差は会社創設者の失望度が明確にわかる」としており、VCは投資先企業の経営に多大な貢献をしていると感じているようですが、現場はそこまで介入されなくても問題ないというのが本音のようです。
◆VCに求める必要な要素
次に、VCと会社創設者間でパートナーシップを締結するために必要な要素を調査しています。創業者は「VCに求める3つの重要な要素」、VCは「創業者が評価したと思われる要素」を回答し、数の多い物から順にランク付けしています。
すると、会社創設者とVCの1位は共に「相互の関係性」を重視するという点で同じ結果となりました。続いて会社創設者が選ぶ2番目の要素は「取引条件」となり、これもVCの3番目の要素と合致しているため、ここまでは両者ともに同じ視点に立てているといえます。会社創設者が重視する3番目の要素は「スピード」で、これはVCの中では、最下位の10番目という結果となりました。対してVCが2番目の要素として挙げているのは「自社のブランド力」で、これは会社創設者の中では8番目となり低い結果となっています。
この調査でデシェイエ氏が興味深い点として挙げているのは、スタートアップ企業は資金調達に厳しい時間制限があり「スピード」にこだわるのは当然にもかかわらず、VCはこの視点を持っていないということです。このため、新たにVCを目指す人は「スピード」という観点を重視しておけば、より良いスタートアップ企業とのパートナーシップを締結できる可能性が高まることがわかります。
VCの視点は地域によっても異なることが明らかになっています。以下はアメリカとヨーロッパの会社創設者がVCに求める要素の上位5つを示したものです。1位と3位は先ほどと共通の結果になりましたが、アメリカの2位は「VCの経験」、4位は「運用サポート」、5位は「VCのブランド力」となっており、アメリカの会社創設者はVCのサポート力を重視していることがわかります。対してヨーロッパの会社創設者は2位に「取引条件」、4位に「他の会社創設者の事例」、5位に「実績」となっており、実利を求めるという傾向が強いことが見えてきます。
VCに求められる要素は、資金調達フェーズによっても変わってくることがわかっています。以下の画像は「最初の資金調達フェーズ」と「以降の資金調達フェーズ」でVCに求められる要素を示したものです。1位と2位は先ほどのヨーロッパの順位と変化はありませんが、最初の資金調達フェーズでは3位に「スピード」、4位に「VCのネットワーク」、5位に「他の会社創設者の事例」となっており、資金面に関係性の高いものがランクインしています。しかし、以降のフェーズになると、3位が「VCの経験」、4位が「実績」、5位が「他の会社創設者の事例」となり、VCの経験値を重視する傾向にあることが明らかになっています。
会社創設者がVCに求める要素は、どの観点に立っても「相互の関係性」を重視する結果となり、VCのサポート力よりも一番に優先されるという結果になりました。VCが成功するには会社創設者との良好な関係構築が最も重要であることが示されています。
この資料の詳細は以下で確認することができます。
The VC-Founder Split
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