Googleのオープンソース機械学習システム「TensorFlow」はどのように活用されているのか?
Googleが製品開発で活用し、商用利用OKでオープンソース化もされている機械学習システム「TensorFlow」は、世界中の誰でも手軽に使うことができる機械学習システムとして、専門の研究者だけでなく一般の高校生までもが使用しています。その事例を、Googleがブログで紹介しています。
How TensorFlow is powering technology around the world
https://www.blog.google/topics/machine-learning/how-tensorflow-powering-technology-around-world/
ペンシルベニア州立大学のAri Silburt氏は、TensorFlowを用いた機械学習により、太陽系の起源について解き明かそうと試みています。Silburt氏は太陽系内の星に存在するクレーターをマッピングし、太陽系のどこにどのような物質が存在するのかを調べているとのこと。
従来は星の写真からクレーターを手作業でマッピングしていましたが、この方法では膨大な時間を必要とします。そこでSilburt氏は、TensorFlowを用いて既存の月の写真を学習データに機械学習モデルを訓練し、写真から自動でクレーターを判別させることに成功したそうです。以下の画像で、左側はクレーターが映った写真、右側は写真から判別されたクレーターを示した図です。
ブラジルの熱帯雨林を保全する活動を行うRainforest Connectionの創設者であるTopher White氏は、アマゾンでの不法な熱帯雨林伐採を防ぐ警報装置を、TensorFlowを用いて開発したとのこと。使われなくなった携帯電話を再利用したこの警報装置は、熱帯雨林の樹木に設置され、チェーンソーや伐採者のトラックの音を認識し、その地域を警戒するレンジャーたちに連絡がいくシステムになっています。これまでは人が警戒地域を巡回し、伐採者たちを探していたそうですが、このシステムを導入することにより人間がいなくても熱帯雨林を警戒することができるようになりました。
糖尿病の合併症の一つである糖尿病性網膜症は、非常に速いスピードで進行して失明に至る恐ろしい病気であり、全世界が4億人を超える人々が発症するリスクを抱えています。早期に発見できれば治療することができるこの病気を発見するため、Googleは2016年に機械学習を用いた診断方法が活用されていると発表しました。
患者の眼底写真を正確に分析することで糖尿病性網膜症を早期に発見できるほか、オークランドの検眼士であるJorge Cuadros博士は、「より機械学習モデルを進化させることで、患者の心血管疾患のリスクを判断することも可能だ」としています。
TensorFlowを活用した高校生の事例も紹介されています。Shaza Mehdi氏とNile Ravenell氏はPlantMDという、植物が病気にかかっているかどうかを診断するアプリを開発しました。機械学習システムにTensorFlowを使用したこのアプリは、PlantVillageという農業従事者向けのサイトや大学のデータベースに存在するデータをAIに学習させ、病気にかかった植物を判別するよう訓練して開発したそうです。Mehdi氏はこの技術を応用して、皮膚病を診断する別のアプリも開発したとのこと。
オープンソース化されたTensorFlowは、宇宙の謎を解き明かす目的から植物の病気診断まで、さまざまな場面で活用されているようです。
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