60年以上愛される不朽の名家具「イームズ ラウンジチェア&オットマン」はどのようにして作られているのか?
20世紀を代表するインテリアデザイナーのチャールズ&レイ・イームズが設計したハーマンミラーのラウンジチェアとオットマンは1956年に発売されて以来60年以上愛されている椅子です。このラウンジチェアとオットマンがどのようにして作られているかを説明したムービーを、さまざまな工業製品の作り方を解説するBRANDMADE.TVが公開しています。
How an Eames Lounge Chair is made - BrandmadeTV - YouTube
「イームズ ラウンジチェア&オットマン」は、1905年創業の老舗家具メーカーであるハーマンミラーから1956年に発表されました。
設計はチャールズ・イームズとその妻レイ・イームズによるもの。20世紀前半ではまだ珍しかった合板やプラスチックなど最先端の素材を使った建築物や家具を多くデザインし、20世紀の工業製品のデザインに大きな影響を与えたデザイナーです。
チャールズ・イームズはラウンジチェアをデザインする際に「使いこんだ野球のグローブに包まれるような座り心地」を目指したといわれています。
ラウンジチェアの高級感あふれるたたずまいはインパクトが強く、テレビドラマの小道具として登場した時は画面の中でもひときわ存在感がある椅子として話題になったことも。
イームズ夫妻がデザインした椅子には他にもさまざまな種類があり、針金・ガラス繊維・金属で作った椅子は先進的だと評判になりましたが、最も人気があるのは中央の「イームズ プライウッドチェア」やイームズ ラウンジチェア&オットマンだとのこと。人は結局昔からなじんだスタイルに回帰するのかもしれません。
イームズ ラウンジチェア&オットマンの製作はまず最高品質の革を加工するところから始まります。
革は机の上にきれいに広げられ、質の悪い部分・傷・虫食いなどが少しでも見られたら赤いテープで印がつけられます。
印をつけたら大型のスキャナーでスキャンし……
コンピューターによって傷や汚れをよけたカットパターンが計算されます。
革のカットは全てコンピューターによって正確に行われます。
切り分けられた革はすべて2人の女性職人がミシンで縫い合わせてクッションカバーに仕立てられます。
クッションの中身に使用されるのは高密度のウレタン。
背中やお尻、背中にフィットするように形が整えられ、クッションに張りを出すためにボタンで革を留めてから、ウレタンを詰め込んでいきます。
特にボタンの位置は仕上がりの美しさに大きく影響するため、ずれがないよう入念に計測が行われながら整形されます。
台座や背板に使われるのは突板を合わせた積層合板です。まずは突板をプレスして薄くします。
プレスした突板をコンベアに載せて両面に接着剤を塗り、木の繊維が直交するよう交互に何枚も重ねます。
重ねた突板はプレス機に載せ、高温・高圧で成形します。
成型された合板はコンピューター制御のカッターによって、ラウンジチェアの背板やアームレスト、オットマンの台座の形に切断していきます。
表面は研磨され、滑り止めのゴムを固定する穴が彫られます。
側面を丁寧に研磨し……
組み立てるための金具をとりつけます。
完成した椅子の台座や背板は倉庫で職人による入念なチェックが行われます。傷やゆがみがないか目視で確認され、さらに人が座っても壊れないよう、圧力を加えて耐衝撃性のテストが行われます。
最後に革のクッションを台座や背板に固定する作業を行います。椅子やオットマンの足とクッションをネジで固定します。
組み立てたらすぐ工場から出荷されるわけではありません。「ロックテスト」と呼ばれる、出荷直前の最終チェックを1人の男性が行います。
クッションがしっかり固定されているか、座り心地を損なってないかを、実際に男性が座り、3回後ろに体重をかけてチェックを行います。デザインだけではなく、イームズ夫妻が目指した究極の座り心地を損なわないよう最高品質を追求する職人たちのこだわりが、60年以上愛される名家具を生み出しているといえます。
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