アメリカ最後の野球グラブメーカーに迫ったムービーが公開中

野球をする上で欠かせない「グラブ」は、硬いボールを受け止めるための強度と手になじむ柔らかさと使いやすさなど、さまざまな要素が必要とされるとても重要な道具です。そんなグラブ生産の多くは人件費の安い発展途上国で行われていますが、野球大国アメリカで唯一生産を続けているグラブメーカーに迫ったムービーが、YouTubeで公開されています。
The Last Baseball-Glove Maker in America
野球選手にとって、ボールをキャッチするグラブはとても重要。

試合の中で幾度となくプレイヤーはボールをキャッチし、それを投げるというプレーを繰り返します。

壁一面にグラブが飾られている中で、女性がデスクワークをしています。

歩いてきた初老の男性はロブ・ストーリーさん。

アメリカに工場を持つ唯一のグラブメーカー・Nokona Ball Glovesの副社長を務める人物です。

Nokonaはテキサス州ノコナに本社を置いている世界的なグラブメーカー。

「グラブを作るためには、革がなければ始まりません」とストーリーさんは語り、Nokonaではカンガルー・牛・水牛・カイマンワニなどさまざまな革を用いてグラブを作っているとのこと。

重くて丈夫そうな革を入手したら……

革の質を確かめるところから、グラブ作りがスタート。革を手のひらでなでて目でよく見て、傷や弱っている部分などがないかをチェックしていきます。

良質な革は硬いものですが、グラブを使う野球選手がすぐにキャッチボールなどを開始できるように、グラブはできるだけ使いやすく仕込んでおく必要があります。

グラブの工場には、非常にたくさんの型が用意されていました。

この型を、クッキーの型のように革に押し当てて……

切り抜いていきます。

1つのグラブを作るために、25ものピースが必要になるとのこと。

まだグラブの形にはなっていませんが、手のひらにあたる場所にNokonaのスタンプを押していきます。

革をピースごとに切り抜いたら、次は革に刺しゅうを施す工程です。たくさんのミシンが稼働して革にメーカー名を刺しゅうしています。

Nokonaの工場では、1日に400~500ものグラブを生産しているとのこと。

グラブの質を妥協しないため、革のパーツについては厚さや硬さも測っています。

検査の終わったパーツが運ばれた先は、それぞれのパーツを縫い合わせる工程。

職人がミシンを扱い……

パーツを縫い合わせていきます。グラブの外側と内側は別のパーツとして縫い合わされているとのこと。

次第に手袋らしい姿ができあがっていきます。

なお、縫った段階のグラブは裏表が逆さまになっているため……

棒にグラブの指を差し込み、裏表を直していく必要があるとのこと。

続いてグラブは巨大な手の形をした金属製の器具にはめ込まれました。

なんと、この器具は120度ほどに加熱されているそうで……

革を引き延ばしつつ加熱し、さらにトンカチでたたいていくことできれいにグラブの縫い目や指の形を成形していきます。

ストーリーさんによれば、ノコナ以外の場所でNokonaのグラブを作ることはできないとのこと。ノコナという町や工場で働くノコナの人々も、グラブを製造するための必要不可欠な要素だとストーリーさんは語ります。

ストーリーさんはNokona創業者から数えて4代目にあたります。祖父のボブ・ストーリーさんは、1960年代に他のメーカーが工場を海外に移す中、地元でグラブを作り続ける道を選択しました。

それから数十年がたち、Nokonaはアメリカで唯一国内生産を行うグラブメーカーとなりました。

それぞれの従業員はさまざまな雇用形態で働いており、自分のライフスタイルに合った働き方を実現することが可能。グラブを作るために必要な熟練の職人技は、そうまでして手に入れる価値があるそうです。

グラブは手が直接触れる「裏」と、ボールを捕球する「表」という2つの部分から成っています。この2つを合体させた後……

手首の付近にあたるファーや裏地など、さまざまなパーツを貼り付けていきます。

また、手袋に開いた120もの穴に革紐を通し、縫っていくという作業もあるとのこと。

さらに、「コスモリン」と呼ばれるピーナッツバターのような石油系接着剤を塗っていきます。

コスモリンで接着すると、10年たっても貼り合わせた面がはがれないそうです。

さらに、グラブのポケットにあたるパーツを革紐で縫い合わせます。

グラブをなじませるため、捕球する部分をハンマーでたたくという工程もあります。

これにより適度な柔らかさをグラブに与えると同時に捕球しやすいように形成し、シワもなくなるとのこと。

そしてグラブの表面にオイルの層ができるようにまんべんなくスプレーをかけ……

しばらく乾燥させます。

そしてようやくグローブが完成。

袋に入り、290ドル(約3万3000円)の価格で販売されます。

野球選手のグラブ1個を作るのにも、非常に多くの手間がかけられているのです。

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