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なぜファンタジー小説にはおいしそうな料理の描写がたくさん登場するのか?

by Paul Townsend

小説を読んでいるとおいしそうな料理が登場し、思わず頭の中にその料理を思い描いてしまうことがあります。現実とは違う世界を舞台にしたファンタジー小説の中でも、おいしそうな料理が非常に多く登場しますが、「ファンタジー小説においしそうな料理が登場するのはなぜなのか?」という記事がAtlas Obscuraに掲載されています。

Why Do Fantasy Novels Have So Much Food? - Atlas Obscura
https://www.atlasobscura.com/articles/fantasy-books-food

ライターのアンネ・ユーバンクさんは十代前半のころ、ファンタジー小説を次から次へと読みあさっていたそうです。ユーバンクさんがイギリス人の小説家ダイアナ・ジョーンズ氏の小説「A Tale of Time City」を読んでいたところ、主人公が「バター・パイ」というお菓子を食べている描写に行き当たりました。バター・パイとは、外側が棒状の黄色いアイスクリームで内側がトロリと溶けているバター風味でクリーミーなお菓子であり、トフィーに似た味の他にも20種類もの風味があります。

実はバター・パイはジョーンズ氏の小説の中にしか存在しないお菓子であり、今でこそ「A Tale of Time City」のファンによりバター・パイのレシピがインターネット上で見つけられますが、ユーバンクさんはバター・パイを食べたことがありませんでした。それにもかかわらず、主人公がバター・パイを食べるシーンを読んでいると、ユーバンクさんはまるでバター・パイを食べたかのようにおいしさを感じられたとのこと。

ユーバンクさんは大人になって大人向けのファンタジー小説を読むようになると、大人向けのファンタジー小説でも小説家たちはぜいたくな食べ物の描写を頻繁にしていることに気づきました。改めてさまざまなファンタジー小説をユーバンクさんが読み返してみると、ファンタジー小説の登場人物がバター・パイのような空想の食べ物を食べるシーンはそれほど多くなく、むしろ私たちが日頃食べている料理、ケーキ、エールビールなどを味わっている描写が多かったとのこと。Jones氏がファンタジー小説についてメタ的に記した「The Tough Guide to Fantasyland」では、「シチューはファンタジー世界での主食です」というジョークも載っていたそうです。

食べ物についての記述は神話や伝説の中にも見られ、例えばギリシャの女神ペルセポネーは冥府の神ハーデースが与えたザクロの実を食べたことで、冥界の女神として過ごさなければならなくなりました。1859年にクリスティーナ・ロセッティ氏が発表した「ゴブリン・マーケット」という詩には、人々を狂わせてしまうほどおいしいフルーツを売るゴブリンが登場します。

by Duchess Flux

グラスゴー大学の講師を務めるロバート・マスレン氏はファンタジー文学で初の修士号を取得した人物であり、映画「パンズ・ラビリンス」や「トーマス・ザ・ライマー」を例に挙げ、「空想上の食べ物が現れることは、『私たちはルールの違う世界にいる』という合図なのです」とファンタジー世界における食べ物の役割について述べています。

ホビットの冒険」「指輪物語」などで知られるファンタジー小説の大家J・R・R・トールキン氏によって、ファンタジー世界における食べ物の伝統が形作られました。トールキン氏は第1次世界大戦に従軍した時の悲惨な経験から、食べ物の重要性について繰り返し小説内で描写しています。「ホビットの冒険」の冒頭では、主人公ビルボ・バギンズの家の台所が魔法使いガンダルフとお腹を空かせたドワーフたちに襲撃され、ラズベリージャム・アップルタルト・チーズ・エールビールといったありとあらゆる食べ物をガンダルフとドワーフたちに食べさせてしまいます。ところが、これは後にビルボがいくらでも食べたいものを食べられるほどの報酬を得ることを示唆しているとのこと。

ブライアン・ジェイクス氏も著名なファンタジー小説家ですが、代表作の「レッドウォール伝説」シリーズでは登場するキャラクターたちによる豪勢な宴会が描写されます。ジェイクス氏によればこれらの宴会シーンは、第2次世界大戦を経験した幼少期に配給された食料しか食べることができなかったジェイクス氏が、頭の中で空想した素晴らしい食事が元になっているそうです。

by Paul Townsend

トールキン氏もジェイクス氏も、ファンタジー小説の世界を歴史や歌、言語と同時に食べ物でも広げることに成功しています。マスレン氏は「食べ物はファンタジー世界をリアルに描き出す方法です」と述べ、風景描写などで頭の中に視覚的な情景を描き出すと同時に、食べ物の描写で味覚に対しても訴えかけることができるとのこと。ファンタジー小説ではしばしば恐ろしいものが描かれたり、なじみのない要素が登場するものですが、そんな小説の中に読者の想像しやすいおいしそうな料理を登場させることで、読者をホッとさせることが可能だとマスレン氏は語りました。

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