3000円未満の安価な「Oregon Trail」ゲーム機の中身を流用して小型の携帯型ゲーム機を自作する
アメリカの西部開拓史をテーマにして累計6500万本以上を売り上げたゲーム「Oregon Trail(オレゴン・トレイル)」を、Basic Funが24.99ドル(約2700円)という安価なゲーム機として販売しました。しかし、このゲーム機が「デカくてダサい」と不満に思うハッカーが、中身を分解・改造してオリジナルのゲーム機「Oregon Trail Pocket Portable」を作り上げています。
Oregon Trail Pocket Portableを作り出す様子は以下のムービーで公開されています。
Oregon Trail Pocket Portable - YouTube
今回もハックを見せるのはYouTubeチャンネル「The Ben Heck Show」のベン・ヘック氏(右)
分解するのはゲーム「Oregon Trail」を持ち運んでプレイできるポータブルゲーム機の「The Oregon Trail Handheld Game」
初代Macintoshのようなディスプレイが搭載された縦長デザインのゲーム機です。
中身を見るべく、さっそく分解作業開始。
The Oregon Trail Handheld Gameを手に取るヘック氏。
フロッピーディスクを模したパーツが電源ボタンになっているようです。
ディスプレイの明るさはいまいちだとのこと。
まずはバッテリーを取り外す作業から開始。
単3電池が入っていました。ヘック氏の予想通りの中国製です。
電池を取り外したら、ネジを取り外して……
裏蓋が外れました。
「全然ぎっしり詰まってないね……」
マザーボード上の2つの黒い樹脂部分はASICが搭載されているとのこと。このようにASICを樹脂で保護する手法は「Glop Top」と呼ばれるそうで、安価にカバーできるため昔の電子機器では一般的だったとのこと。かつての任天堂ゲーム機でも採用されていたそうです。
コントローラーのボタン部分
ラバー部品を取り外すとこんな感じ。
スピーカーやコントローラー部分を切り離して、液晶ディスプレイ付き状態で主要部品が取り外せました。
液晶パネルを持ち上げて……
虫眼鏡でのぞき込むヘック氏。直接はんだ付けされていますが、安価な機器では珍しくないとのこと。シリアル接続ではないそうです。
次に、ROMデータを抜き出します。
データの取り出しにはフィリックス氏に協力してもらいます。
Raspberry Piを使うとのこと。
ヘック氏はThe Oregon Trail Handheld Gameの採用する「I2C EEPROM」メモリ部品の仕様を読み上げ、フィリックス氏にコード入力をサポートします。
バイナリデータの表示に成功しました。
さらに、登録したゲーム内の人物の名前の抽出にも成功。セーブされたデータが残っているのが確認できました。
次に、データのハックに取り組みます。
画面左が先ほど取り出したバイナリデータ。
「繰り返し」部分が見つかります。この領域内に、セーブデータの内容が書き込まれている模様。
ヘック氏は、自分でセーブしたゲームデータの中の数字をバイナリーデータから探します。食料の「400」ポンドというデータを……
16進数に変換して「190」を得ました。バイナリデータから数字列「0190」を探します。
「0190」と検索しても見つからず。そこで「90」のみで検索すると、「9001」の列を発見。エンディアンによって並び順が変更されているようです。
ヘック氏はゲームデータを記録したメモ帳を片手に、パラメータ部分を次々と発見していきます。
パラメータ部分が見つかると、数値を変更していきます。400ポンドしかなかった食料は65535ポンドへ、弾丸の数は100から65535へ、衣類は5からやや控えめの42000へ、という調子で装備を充実させていきます。
作成したバイナリデータは、市販のEEPROMへと書き込みます。
作ったデータを、The Oregon Trail Handheld Gameに書き戻します。
保存されたユーザー名が正しく表示されました。
ハック成功を確信したヘック氏はこの表情。
チップをはんだで付け直します。
ディスプレイでアイテム数を表示せて、しっかりと増えているのを確認。「こんなにお金持ちになった!」と大喜びのヘック氏でしたが、食料や弾丸の数は指定した16ビットで最大の「65535」ではなく「5535」であることに気づきました。
どうやら5桁目までアイテムが増えることを想定していないため、下4桁のみが反映されたようです。
The Oregon Trail Handheld Gameのハックが成功したところで、「SURPRIZE PORTABLE!」というコーナーへ。
オリジナルのThe Oregon Trail Handheld Gameを手にして浮かない顔のカレン氏。なんともわかりやすい演技です。
カレン氏の不満は、ゲーム機がレンガのように大きくて持ち運べないことだとのこと。ヘック氏は「ちょっとまってな」と告げると、その場を離れました。
ヘック氏は3Dプリンターでパーツを出力したり……
オリジナル設計の部品を作ったり……
レーザーカッターでパーツを切り出したり。
そして、すべてのパーツを組み立てていきます。
はんだ付けされたワイヤーだらけの中身。
完成させたのは、ヘック氏オリジナルの「Oregon Trail Pocket Portable」という携帯型ゲーム機。
赤色で目立つボタンを中央に配置。
カーソル選択用のキーもコンパクトにまとめました。
背面にはスピーカーホールもアリ。マザーボードなどのThe Oregon Trail Handheld Gameの主要部品を流用しつつ、オリジナル設計のケースやコントローラーを追加することで、まったく新しいデザインのゲーム機に改造したというわけです。
Oregon Trail Pocket Portableを手にドヤ顔のヘック氏。
わざとらしさ満点で大喜びするカレン氏。
「Micro-USBポートで充電することもOKよ」
そして、携帯性のチェックは女性用パンツのこれでもかと小さなフロントポケットで行います。
テスト合格。ヘック氏は白々しく驚きの表情を浮かべます。
ディスプレイの輝度もアップさせており、携帯性だけでなく性能もアップ。もちろん、いかさまデータも使えます。
チープな作りのゲーム機を、見事なハック技術で魅力的なポータブルゲーム機に生まれ変わらせました。
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