3Dプリンターで印刷した鋼鉄製の橋をかけようという壮大なプロジェクト「MX3D Bridge」
家をまるごと3Dプリンターで印刷して作ってしまうなど、建設業界でも3Dプリンターの普及・活用が進みつつあります。「MX3D Bridge」は金属製の橋をすべて3Dプリンターで印刷するというプロジェクトで、実際に「MX3D Bridge」で製作されていた、オランダ・アムステルダムに流れる運河にかける予定の橋が2018年3月末にほぼ完成したとのことです。
MX3D Bridge
http://mx3d.com/projects/bridge/
「MX3D Bridge」を進めているのは、MX3Dというオランダのベンチャー企業です。MX3Dが開発している3Dプリンターは、6軸の産業用ロボットに溶接機をとりつけたもので、空中へ立体的に金属製のオブジェを出力することが可能です。
ロボットアームは、PCによるシミュレーション通りに動きます。
3Dプリンターによってワイヤーフレームの小さな橋を試作しているところ。
小さな橋は人間が乗っても壊れることはなく、十分丈夫にできているようです。
2015年10月に「実際にアムステルダム中心部の運河にかける鋼鉄製の橋をすべて3Dプリンターで印刷してみよう」というプロジェクト「MX3D Bridge」が、AutodeskやLenovoなど、多くの企業の協力を得て発足しました。
橋を設計・建設するために、橋をかける予定地周辺を3Dスキャンし、2016年5月にはPCに取り込んだ上で橋のデザインが仮決定しました。
しかし、400年近い歴史をもつ運河の岸壁がどれだけの荷重に耐えられるのかは未知数であり、さらに当初のデザイン案が持っていた複雑な機能性と安全性に対応するためには現行の3D設計ソフトでは処理ができないということから、デザインの大きな変更を余儀なくされます。その結果、デザインの仮決定から最終決定まで、9カ月もかかったとのこと。
以下の画像は橋の最終的なデザインを3DCGで再現したものです。3Dプリンターで直接出力することで曲線を多用した有機的なデザインが可能になったとのことで、特に渦巻くような欄干が目を引きます。
工場内に再現された岸壁の上で、4台の産業ロボットによる3Dプリントが始まったのが2017年3月のこと。約1年かけて両端から少しずつ橋を出力し、2018年3月末に橋がつながったとのことです。
出力された橋の本体部分を上から見るとこんな感じ。橋の全長は12.5メートルで、幅は6.3メートルです。欄干部の一部はまだ出力されていませんが、本体部分は完成していて、2つの岸をつなぐ橋として機能していることがわかります。
橋にはボルトや鋲(びょう)は見当たらず、表面をよく見ると、3Dプリンターによる積層の跡が無数に見て取れます。橋の内部は空洞で、補強材が仕込まれているとのこと。
出力された橋は、運河の護岸工事に合わせて実際にかけられ、2018年6月に公開される予定とのことです。
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