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誰でもデジタル世界でエストニア市民になれる「e-residency」に登録して感じることとは?


世界で最も電子化が進んだ国として知られるエストニアでは2000年に電子政府が始まり、行政活動だけでなく交通機関、医療サービス、銀行取引などあらゆるサービスが電子化されています。さらに、世界中の人のためにエストニアが運営する電子国家「e-residency」が設立されており、e-residencyの電子市民「e-residents」になることで、日本にいながらEUでビジネスをする、ということも可能になっています。実際にe-residencyに住民登録して3年になるビジネスコンサルタントが、e-residentsになる素晴らしさについてQuartz at Workに寄稿しています。

Estonia e-residency is a model for a more open world — Quartz at Work
https://work.qz.com/1241833/one-of-estonias-first-e-residents-explains-what-it-means-to-have-digital-citizenship/

◆e-residencyとは?
エストニアはソ連から独立後に自由主義経済国としての道を歩み始めた国で、2004年にはEU加盟国となっています。エストニアではすべての行政活動を電子化する「e-Estonia」という世界初の電子政府が生み出されており、完全ペーパーレス化をはじめ、IDカードによる情報の一元管理や交通機関、銀行口座、電子カルテ、法人登記、税務申告などのありとあらゆる官民サービスが電子化されています。

そんな世界最高レベルでスリム化された「小さな政府」を運営するエストニアでは、世界中の誰もが電子国家上の居住民になれる制度「e-residency」がカスパル・コルジャス氏によって考案されました。e-residencyは「世界市民のための新しいデジタル国家を創造する」というエストニアが掲げる壮大な計画の一部であり、e-residentsになることで身元を証明するパーソナルIDカードを発行してもらえ、さらにオンラインを通じてエストニアで会社を設立できるようになります。エストニアはEUに加盟しているため、e-residency制度を利用することで、世界中のどこからでもEU諸国の企業とビジネスを行えるようになる、というわけです。なお、エストニアでは累進課税制度は採用されておらず法人税は一律20%なため、節税用途での利用も考えられます。


e-residencyの運用から3年以上たった今、海外からEUビジネスを立ち上げる事業家だけでなく、医師、技術者、オンラインで仕事をするため世界中を点々とする「デジタル遊牧民」とでもいうべきフリーランサーなど、国境という時代遅れの障壁のせいで才能を発揮するのを妨げられている世界中の人が、国籍や居住地さえ変えることなくe-residentsとしてエストニアの電子国家に居住権を持つに至っています。ちなみに「世界初の宰相のe-residents」の称号は安倍晋三内閣総理大臣が持っています。

記事作成時点で世界154か国から3万3000人を超える人がデジタル国家の住民になり、5000を超える会社がデジタル市民によって設立されています。


◆e-residentsになってみて
世界中でビジネス支援を行うフィンランド出身のエイプリル・リンネ氏は、法制や税制、市民の義務などいくつかの理由から、フィンランドの小さな隣国エストニアに関心を持っていたとのこと。そんな中、エストニアに設立されたスタートアップのビジネス顧問になったことがきっかけで、リンネ氏はe-residentsになることにしたそうです。

3年前のe-residencyへの申し込みはそれほど簡単ではなかったとのこと。申し込みはエストニアの警察署で行う必要があり、手続きの案内はすべてエストニア語だったそうです(なお、記事作成時点ではオンライン手続きが可能で、英語も利用できます) 。さらに当時は「なぜe-residentsになりたいのか?」という簡単な作文の提出まで要求されていました。とはいえ、リンネ氏にとって学生時代の夏休みの宿題を思い起こさせる作業は思いのほか楽しい経験だったとそうです。すべての申し込み手続きを終えると女性警官は、「もうあなたはフィンランド人ではありません。エストニア人です」という宣言をしたそうです。

申請から数週間後にe-residencyへの承認を知らせるメールが届き、再び同じ警察署に訪れると、電子IDカードやカードリーダー、パスワード、説明書など一式が入った「ウェルカムパッケージ」を手渡され、晴れてe-residentsになることができたそうです。完全に電子化・オンライン化された個人IDカードシステムは、エストニア人にとっては古くからある変哲もないものですが、エストニア以外の国の人にとっては非常に新鮮なものに感じられたとリンネ氏は述べています。

By Masayuki (Yuki) Kawagishi

世界中に顧客を抱えるリンネ氏はアメリカに拠点を置いており、アメリカからe-residencyサービスを利用するためにファイアウォールを無効にする作業が必要だったとのこと。また、2017年後半にe-residencyの潜在的なバグが発見されたときは、ネット経由でIDカードが更新されるまですべてのカードが利用停止になるなど、少なからず不便なこともあったそうです。しかし、エストニア政府の仕事は非常に早く、徹底的なフォローがされていると感じられるなど、電子国家の市民としての生活はおおむね快適だとのこと。何よりも、「未来」を感じさせるe-residency体験は、仕事そのものの形態が目まぐるしく変化する世界について考え直す良いきっかけになったと、リンネ氏は述べています。

リンネ氏によるとe-residencyは決してパスポートではなく、市民権に遠く及ばないものの、観光ビザ以上のものだとのこと。e-residencyは新しい機会の窓を提供してくれ、考え方を改めさせる存在だそうです。トランプ政権下で国境を固く閉じようとするアメリカとは対照的に、エストニアは橋の建設を目指していると言え、未来の地球ではこのような橋づくりがより一層求められるだろうとリンネ氏は述べています。

e-residencyへの申し込みは、以下のページからオンラインで可能。IDカード登録費用に100ユーロ(約1万3000円)が必要です。

Application for e-Residency
https://apply.gov.ee/

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