3Dプリンターによるフィギュア造形はどこまで来たのか?ワンフェスで実感するデジタル造形と3Dプリント技術の進歩
3Dプリントの技術の進歩は凄まじいもので、既にかなりハイクオリティのフィギュアが3Dプリンターを使って作れるようになっています。ワンフェスには、3Dデータを制作するためのツールであるZBrushや、3DプリンターのFormlabs、Qholia、ZORTRAXなどがブースを構えていたので訪ねてみました。
◆ZBrush(造形ツール)
まずはZBrushのブースへ。まだ開場前ということで準備中でした。
既にスタンバイしていた初音ミクを撮らせてもらいました。
3Dプリンターで作られたとは思えないクオリティです。
ZBrushCoreを使用して作られた作品の例です。
出力元となったデータも展示してありました。ZBrushCoreを使うとこうした小物を簡単に作ることができます。
入門書も出版されているため簡単にZBrushCoreを使い始めることができます。
ZBrushを使った作品を置いているブースにロゴ入りスタンドが配布されていました。
午後にはZBrushの使い方を紹介するステージイベントが開催されました。講演の様子がYouTubeに上がっています。ZBrushで作られた作品をいくつか紹介する講演の様子は以下のムービーから。
『ホビージャパン本誌連動企画 デジタルモデリング作例について』デジタル原型師見習い 美環(みかん)|ホビージャパン編集部 伊藤大介
ZBrushの機能を説明しながらマグカップのモデルを作成する初心者向けの講演。
『ZBrush Coreを使い40分でつくる?! オリジナルグッズ』福井信明(ZBrush Core Club)
ZBrushを開発しているPixologic社のシニア・マーケティング・ディレクターのトマ・ルーセルさんによる、中級者から上級者向けの講演もありました。
『ZBrush 4R8で行う デジタルフィギュア制作について』トマ・ルーセル(Pixologicシニアマーケティングディレクター)
画面右の人物がトマ・ルーセルさんで、左にいるのは通訳の人。
実際に一作品完成させるまでの手順を細かく紹介していました。
顔に凹凸を付けます。
大まかな人の形はZsphereを使うことで簡単に作ることができます。
手の表現は繊細で複雑なので、締切が迫っている場合などは、あらかじめ作っておいたデータをくっつけるのが良いとのことでした。
手をくっつけました。
モデルを実際に出力してみておかしいところを修正します。
手の部分に継ぎ目が出てしまいました。ガレージキットにするときはこうした継ぎ目が出ないようさらなる修正が求められます。
顔をそのまま出力すると……
このように表面にサポート痕(バリ)が残ってしまいます。こうした痕跡が表に出ないように、出力する時のバリの付き方をイメージしてパーツをどう分けるかが腕の見せ所とのことです。
胴体の場合、使用する樹脂を減らすテクニックがあるとのこと。
レジンと異なり、3Dプリンターでの出力は内部に空洞があってもOK。内部に空洞を作ることで、樹脂の使用量を減らせるので経済的です。
3Dプリンターの「Form 2」で出力したとのことでした。光硬化樹脂は出力後に表面に未硬化樹脂が残ってしまうため、アルコールを使ってきれいにします。
実際の制作の様子は以下のPixologicの公式サイトのトマ・ルーセルさんのページにあるムービーで確認できます。
Thomas Roussel – Pixologic : ZBrushLIVE
http://pixologic.com/zbrushlive/author/thomas-roussel/
◆Formlabs(3Dプリンターメーカー)
FormlabsのブースではBLAME!に登場するキャラクターや重力子放射線射出装置をForm 2を使用して作られた作品が展示してありました。
ブースの前にはBLAME!の看板。
3Dプリンターで出力された重力子放射線射出装置が置いてありました。出力の際、空中に出力することはできないため下にサポートが付きます。
Formlabsが開発した3DプリンターForm 2が展示されています。
これはルークでしょうか。
見事な造形です。左下に見える切り欠きはそのように意図されたデザインとのこと。
3Dプリンターに特有の積層痕は全くないと言っても過言ではありません。
弾丸も出力してありました。
弾丸の頭の方にサポートがついています。
後ろにはForm 2という文字が入るこだわりよう。
Raspberry Pi用のケースもあり。
ゴムのような性質を持った出力物。フレキシブルレジンという素材が使われています。
印刷物に表面コート剤を付けたもの……と思いきや、これは本物のシルバー。ロストワックス鋳造で作られたもので、鋳造の原型をForm 2で出力したとのこと。
Form 2で出力したリングが無料で配布されていました。
ドクロの意匠が施されています。
これはForm 2で出力したキューブです。曇ったように半透明ですが……
研磨剤で磨くときれいな透明に。研磨はプロに依頼したそうです。
二次硬化の実演も行われていました。紫外線を当てることで表面のベタつきを取る工程です。
Form 2で出力した作品を展示しているブースに「Form 2で出力しました!」と書かれた旗が配られていました。
Formlabsの隣にある「ふしぎデザイン」のブースには、実際の製品の作例が展示されていました。
左側の箱がForm 2で出力されたもの。SNSの内容が感熱紙に印刷されて出てくるという製品でした。
◆Wacom(ペンタブメーカー)
WacomのブースにはForm 2で出力された重力子放射線射出装置が。
同じくWacomのブースにサナカンの3Dデータが置いてあり編集できるようになっていました。
◆Qholia(3Dプリンター)
Qholiaのブースにやってきました。Qhoilaは後発の3Dプリンターですが、熱積層方式を採用しているにもかかわらず積層痕がほとんど残らないという特長があります。
3Dプリンターの性能をテストするための印刷物が展示されています。
以下のサイトにあるデータを出力したようです。
Test your 3D printer! by ctrlV - Thingiverse
https://www.thingiverse.com/thing:704409
角度のついた物体は出力するのが非常に難しいのですが、きれいに出力できています。
印刷物が展示してありました。
このような小さいものも出力できます。
ここまで近づいても全く積層痕が見えません。
一部販売されている作品もありました。
◆Zortrax(3Dプリンター)
Zortraxのブースに来ました。
複雑な造形のメカと……
Zortraxの本体が展示されています。
出力の実演を行っていました。出力部に手が当たってやけどしてしまわないようにシリコンゴムが巻かれています。
材料の進入路です。制御用のケーブルが断線しないようにアダプターがついていました。
こちらはフィラメントのがたつきを抑えるパーツです。
フィラメントを取り付けるとこんな感じ。
◆ORIGINALMIND(成型機)
ORIGINALMINDのブースではINARIの実演が行われていました。
INARIを実際に使ってみることができました。
材料を入れてレバーを倒すと……
材料が押し出されます。
銀色の部品を外して……
ふたを開けると金型でした。
成型された部品が取り外されます。このように、金型があれば簡単に同じ部品を量産できます。
このようにして作られた部品や金型がたくさん展示してありました。
エラストマーという素材を使ったもの。
手で曲げられるほど柔らかい部品も成型できます。
金型を作る機械も展示してありました。CNCフライス盤のKitMill Qt100™だそうです。税込19万8000円とのこと。
大型の装置もあります。以下の「KitMill AST 200」は税込63万8000円。
金型は自分で作らなくても3DデータをDMM.make 3D PRINTに送れば代わりに作ってもらえるとのこと。今回の型の出力をDMM.makeに依頼するとアクリル型が8339円、チタン型が2万4058円かかったと表記されています。
3Dプリンターサービス - DMM.make 3Dプリント
http://make.dmm.com/print/
ワンフェスブースの3Dプリンターによる造形美を目の当たりにすると、3Dプリンターの性能が向上し値段も低下するという好条件の中、フィギュアのデジタル造形は今後ますます増えていくはずです。
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