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エンジンやタービンなどの複雑な曲面にも対応可能な超音波検査用のパッチが登場


カリフォルニア大学サンディエゴ校のナノ工学のシェン・シュウ教授ら研究チームは、構造物などの強度を調べる超音波検査に使用可能な伸縮性のあるパッチを開発しました。このパッチの登場により、これまで困難とされていた、エンジン部品やタービンなど複雑な形状の物に対して超音波検査が可能になるとのことです。

Flexible Ultrasound Patch Could Make it Easier to Inspect Damage in Odd-Shaped Structures
http://ucsdnews.ucsd.edu/pressrelease/flexible_ultrasound_patch_could_make_it_easier_to_inspect_damage_in_odd_sha

超音波パッチは、機械や建設部品に貼りつけたあと、パッチの面の直下にある損傷の有無を調べるための検査ツールです。従来の超音波検査のために使用されていた探触子は、検査用の面が平らで剛性があったため、「波状」や「湾曲」など形状が非平面の物体に対して超音波検査を効果的に行うことができませんでした。シュウ教授は「非平面の表面が多数存在している現代において、これはかなりの制限です」と語っています。

共同研究者で同大学の構造工学のフランシスコ・ランザ・ディ・スカレア教授は「曲がり管や角など、構造上最も力が加わる部分の強度を測定することは極めて重要です。しかし、剛性があり、接触面が平面な既存の探触子では、これらの内部欠陥を画像化することには向いていません」と語っています。


従来の探触子で非平面の物体を検査する場合、探触子との接触を良くするために、ゲルや油を利用して仮想的な平面が作られていました。しかし、ゲルや油などが多すぎると、信号の一部が遮断されるなど問題点があり、効率的な検査ができないという問題があります。また、探触子自体も大型だったため、曲がり管など接触が困難な部品を検査するには実用的ではありませんでした。そこで、シュウ教授ら研究チームは柔軟で接地面に依存しない超音波パッチを開発しました。

この探触子は「アイランド・ブリッジ」構造と呼ばれるパターンに従い、基板と銅線が配置されたシリコーンエラストマーのパッチです。このパッチは、規則的に配置された電子部品(アイランド)がバネ状の銅線(ブリッジ)によって接続されています。アイランドには圧電変換器と呼ばれる電極とデバイスがあり、電気が通過することで超音波が発生します。また、ブリッジはバネ状のため、伸ばしたり、曲げたりすることが可能となっており、数多くの非平面に接触させることができます。


シュウ教授ら研究チームは、このパッチの実用性を確かめるため、波状の表面をもつアルミニウムブロックで検査を行いました。なお、検査対象のブロックには、欠陥が存在しているものを使用しています。研究チームはあらゆる面にパッチを貼り付けて超音波検査を行い、画像化したところ、2ミリメートル幅の穴や亀裂の存在を確認することができたそうです。

論文の共同著者である同大学で材料工学を専門としているホンジエ・フー氏によると、「このパッチをエンジンや飛行機の翼など、さまざまな部品や構造物に使用して亀裂がないかどうかを継続的に監視することは、とても素晴らしいことです」と語っています。



なお、開発されたパッチはコンセプトの実証段階にあるとのことで、記事作成時点ではリアルタイムに画像化を行うことができないそうです。また、データを処理するために電源とコンピューターが必要とのことで、シュウ教授は「将来的には、ワイヤレスでリアルタイムの画像化と映像化を可能とするために、電源とデータ処理機能をパッチに追加する予定です」と語っています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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