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何トンもの重さがある機体を空に飛ばす「ヘリコプターのエンジン」はどういう仕組みなのか?

By Alexandre Prévot

ヘリコプターは、重さが数トンにもおよぶ機体をプロペラの回転だけで飛ばすことが可能です。そんなプロペラをパワフルに回すエンジン「ターボシャフトエンジン」がどのような構造になっているのかについて、複雑な技術をムービーで簡単に説明するYouTubeチャンネル「LearnEngineering日本語」が解説しています。

ヘリコプターのエンジンを理解する | ターボシャフトエンジン - YouTube


多くのヘリコプターにはプロペラを回すエンジンとして、「ターボシャフトエンジン」が使用されています。


プロペラ下に搭載されているエンジンをヘリコプターから取り出してみます。


ターボシャフトエンジンは単体だとこんな感じ。ターボシャフトエンジンは、軽くて、コンパクトそして高出力が特徴の「ジェットエンジン」の1種類です。その中でこのヘリコプター用ジェットエンジンの特徴は、エンジンの力を「回転する力に変換する」ところにあります。


ジェットエンジンには複数の種類が存在します。例えばジェット飛行機などに使われる「ターボファンエンジン」は、内部で燃料を燃焼させた高温・高圧の燃焼ガスでタービンを回すことで強い空気の流れ「噴流」(ジェット)を生み出すことで推力を生み出すと同時に、タービンで巨大なプロペラ「ファン」を回転させ、さらに大きな空気の流れを作ることでも得られる推力を合わせることで前に進む力を生み出します。

By Rattaphol Kerdkaen

一方で、ジェットヘリに使われるターボシャフトエンジンは、ジェットエンジンと同様にタービンを回転させますが、その力のほぼ全てをローターに伝えることで飛ぶ力「揚力」を生み出します。この時に、ジェットエンジンが生み出した噴流が飛ぶ力として使われることはほとんどない、というのがターボファンエンジンとの大きな違いです。

By Alexandre Prévot

次に、エンジンの内部を見てみましょう。


内部には金属製の羽を持つ「タービン」が何段階にも重なっており、それぞれのタービンがそれぞれの役目を担っています。


さらにパーツを外すと、エンジンの中心を貫く「パワーシャフト」と後方の「パワータービン」が現れました。これがターボシャフトエンジンの最も核となる部分です。


エンジンで高温・高圧の排気が生み出され、それをパワータービンの羽「ブレード」が受けて風車の要領で回転します。次に、ブレードの回転がパワーシャフトに伝わります。


エンジンの排気を受けるパワータービンのブレードは、飛行機の羽根と同じ断面の構造を持ちます。このブレードに高温高圧の燃焼ガスが当たることで、効率良くパワータービンを回転させます。


さらに、ブレードの先には、内部で「静翼」が固定されています。この静翼は、排気の流れを安定させてブレードの回転をさらに効率良くします。


次に、燃料を燃焼させて力を作り出す部分を見てみます。ここまで見ていた「パワーシャフト」と「パワータービン」は水色で示されており、オレンジで示されている部分「ガスプロデューサータービン」が、エンジン内部で力を生み出す部分です。


水色の部分とオレンジ色の部分は同軸上に配置されていますが、それぞれ独立した構造を持ちます。これにより、それぞれのタービンは以下の図が示すように逆方向に回転するようになっています。これは、高速で回転するローターが生じる「ジャイロ効果」をエンジン内部で打ち消し、飛行を安定させるための工夫です。


軸動力は、パワーシャフトを通して画像左側の前方に伝わっていきます。


軸動力はローターに伝わり回転させます。


そして、ローターつまりプロペラが回転することによりヘリコプターが飛行することができます。

By Roman Kopacek

次は、エンジンで生み出される「高温・高圧の排気」は「どこで生み出されるのか?」を見てみます。まず、画像左側で機体の外から空気が取り入れ、コンプレッサーで圧縮してエンジン後方に分けられて送ります。


コンプレッサーは中空軸になっています。


また、コンプレッサーは「ガスプロデューサータービン」に接続されています。コンプレッサーは、ガスプロデューサータービンの回転によって圧縮するエネルギーを得ています。


タービンによって圧縮された空気は、パワータービンの両脇にある「燃焼室」に向かいます。


燃焼室内では、前段から送られてきた中温・高圧な空気が折り返され、前に向かって流れています。そこに微粒子状の燃料を噴射して混ぜ合わせて燃焼させることで、高圧・高温の排気が生まれます。


そして、排気がパワータービンに到達し、軸出力を生み出してローターが回転します。


空気を圧縮するコンプレッサーの一番最後の部分には、このような「遠心コンプレッサー」が設置されています。


遠心コンプレッサーを使うことで、前から送られてきた空気を圧縮しつつ向きを変え、後方にある燃焼室へと空気を送ります。


ターボシャフトエンジンは、他にも高度な技術が使用されています。


その1つが燃焼室の構造「逆流型燃焼室」です。


エンジン前方から入って圧縮された空気は、燃焼室へと送られます。


しかし、空気はそのまま燃焼室に向かうのではなく、燃焼室をぐるりと迂回するように流れます。


そして、燃焼室の周りには穴が空いています。そこから圧縮された空気が、高温の排気を囲むように噴射されます。


このように中温の空気を燃焼室に噴射するのは、セ氏1700度という高温な燃焼ガスからエンジンを保護するためです。


エンジンに使われている金属素材は、この高温に耐えることができません。この問題を解消するために、燃焼室内部に小さな穴「ホール」や隙間「スロット」を作り、圧縮された低温の空気を流し込むことで保護層を作ってエンジンを高温から守ります。この目的のために、エンジンに流入した空気の約80パーセントが冷却目的で使用されています。また、逆流型燃焼室を採用することによって、「エンジンの全長を短くする」というメリットも生まれます。


異常時に使われる技術もあります。その一つが、「コンプレッサーストール時の制御」です。


コンプレッサーストールは、ひとたび発生するとエンジンの軸出力がゼロになってしまうという危機的な状況を生み出してしまいます。この現象は、コンプレッサーのブレードに当たる空気の流れがブレードの面から剥離するときに生じます。


大きな原因は「鳥の直撃」や「空気速度の低下」または「摩擦や亀裂」などの場合です。しかし、空気の流れが剥離しただけの場合であれば、エンジン内の可変ピッチ固定翼の制御でこのトラブルは回避することが可能です。


コンプレッサーストールについて詳しく説明すると、新しくムービー1本分が必要。ということで、Learn Engineering 日本語ではそのムービーを近日公開予定とのことです。

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