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塩を活用して電力を蓄える施設を作るプロジェクト「Malta」をGoogleの兄弟企業「X」が進行中

By Yair Aronshtam

風力や太陽光を使った再生可能なクリーンエナジーは環境汚染や地球温暖化に立ち向かう方法の1つとされていますが、発電量が一定でないために安定した電力源として活用できないという問題が存在しています。そんな問題を解決するために、Googleと同じくAlphabetを親会社とする企業の1つで、先進的な技術を開発する「X」は塩を活用した電力貯蔵システムを開発するプロジェクト「Malta」を進めています。

Malta – X
https://x.company/explorations/malta/

Alphabet Wants to Fix Renewable Energy’s Storage Problem — With Salt - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-07-31/alphabet-wants-to-fix-renewable-energy-s-storage-problem-with-salt

Maltaで開発されている施設の構想はこんな感じ。加熱されて溶融した塩(塩化ナトリウム)を貯蔵しておくタンクと、不凍液もしくは炭化水素液などの冷気を蓄えることができる液体を貯蔵する2種類のタンクを持ち、その間には熱を交換するヒートポンプが配置されています。


仕組みの概念は次のとおり。太陽光や風力で発電された電力を装置で受け、その電力でヒートポンプを作動させます。ヒートポンプは片方で高熱を発し、融点が約800度の塩化ナトリウムを液体に変えると同時に、もう一方で冷気を生みだして不凍液を非常に低温にまで冷却します。つまり、電力エネルギーを高温と低温の温度差のエネルギーに変換し、タンクに貯蔵します。ここから電力を取り出す時は、ヒートポンプを逆に作動させることで両者の温度差を利用して強い空気の流れを生みだし、発電用のタービンを回転させて電力エネルギーに戻して実際の送電網へと送り出すようになっているとのこと。


Maltaは10名ほどのメンバーで構成されており、科学的な概念を実際のビジネスモデルに変換するための研究を行っているとのこと。まだ「X」の正式プロジェクトには昇格していないというMaltaですが、これまでに進められた開発により、他企業をパートナーとして迎えても大きな問題が起こらないだけの検証は行われており、実際の施設を作れる段階に達しているとのこと。


この分野に関しては、テスラが大量のリチウムイオンバッテリーを使った蓄電装置「パワーパック」を製品化しており、すでにハワイのカウアイ島の電力を太陽光だけでまかなえるシステムを導入済み。しかし、価格が下落傾向にあるとはいえ、使い続けるうちに消耗することが避けられないリチウムイオンバッテリーのメンテナンスコストを考えると、Maltaの装置のほうがランニングコストが低くなるという試算も出されているとのこと。

人口約7万のハワイ・カウアイ島の電力を太陽光だけでまかなう施設をテスラが完成させる - GIGAZINE


また、Maltaと同じように電力を別のエネルギーに変換して蓄放電する設備としては、日本ガイシ株式会社が開発した「NAS電池」が挙げられます。NAS電池は「ナトリウム・硫黄電池」とも呼ばれ、負極にナトリウムを、正極に硫黄を用いる二次電池で、メガワット級の蓄電設備を構築することが可能。重量エネルギー密度が高く、相対的に安価であることが特長ですが、動作させるためにセ氏約300度という高い温度を与えなければならないことや、危険物であるナトリウムや硫黄の管理を厳密にしなければならないという難しさが存在しています。

NAS電池とは|NAS電池|製品情報|日本ガイシ株式会社


再生利用エネルギーはクリーンにエネルギーを作り出すことができますが、作りすぎて消費されなかった電力は捨てられているのが現状。その無駄を防ぎ、電力を貯めておくことで必要な時に取り出せる「電気のダム」の普及が今後は重要になってくるはずです。

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in メモ,   ハードウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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