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ジェットエンジンで大気に穴を開ける「バーチャル煙突」で大気汚染を解消することはできるのか?

By Rajesh_India

世界各地で発生している大都市周辺の大気汚染は深刻さを増しており、中国やインドで発生する汚染物質「PM2.5」の異常とも言える濃度の高さがニュースになることも珍しいことではありません。そんな中、インドではジェットエンジンを使って汚染物質を大気中にとどめている「大気のふた」を破り、汚染物質の濃度を下げるという試みが行われることになっています。

Can jet engines clean up Delhi's foul air? - BBC News
http://www.bbc.com/news/world-asia-india-38285567

インドの大都市で首都でもあるデリーでは、石炭を使う発電所から排出される非常に細かい粒子状物質が大気中にとどまってスモッグを発生させる状態が発生しています。これは、暖かくて軽い空気の層が地表付近の冷たく重い空気を閉じ込めてしまい、通常とは温度分布が逆になる逆転層を発生させることで空気の対流が妨げられてしまい、有害な物質がどんどん大気中に蓄積されてしまうという現象です。

By Sourav Das

デリーでは1000メガワット級の石炭発電所が稼働しており、煙突から排出されるPM2.5などの汚染物質が地表近くの空気層にとどまり続けることで、世界でも最悪レベルの大気汚染がたびたび発生しています。この問題を解消するための実験が、2017年初頭から開始されることになっています。

そこで用いられるのが、以下のような装置。現役を退いたジェットエンジンを再利用し、排気口を上空に向けて配置しています。この状態でエンジンを稼働させると、最大で時速1400kmという、音速を超える強くて速い噴流が上空めがけて発生します。この空気で上空に覆いかぶさっている「空気のふた」に穴を開け、大気をかくはんさせることで汚染物質を効率的に拡散させようというものです。


装置はトレーラーの荷台に設置され、あらゆる場所に運んで稼働させることができるように設計されています。マサチューセッツ工科大学のモーシュ・アラマロ博士は「世界中のスモッグ問題を解消させることにつながる新しい技術導入をきっかけになる可能性がある」と、実験の成果に期待する見方を示しています。

気温の逆転層が発生すると、農業分野でも被害が及ぶことが知られています。そのため、これまでにも農家がヘリコプターを飛ばすことで大気をかき混ぜ、空気のふたを取り除こうとする試みが行われていましたが、ジェットエンジンを使うと言う方法が取り入れられるのは世界でも初めてのケースとなる模様。


はたしてジェットエンジンが大気の層に穴を開けることができるのか、また、騒音の問題はないのかなど、実験に懐疑的な見方もあがっているようですが、アラマロ博士は前向きな姿勢を崩していません。2017年1月にもアラマロ博士はインドのプロジェクトチームに合流して、実験の詳細なプランを作成することになるとのこと。

今回の実験に用いられるのは、旧ソビエト製の古いジェットエンジンとのこと。古いエンジンが大気汚染の解消に役立つとすれば、新しい環境対策と言うことになる可能性もあるわけですが、同時に粒子状物質を出さない取り組みが進められることも期待したいところです。

By Eric Parker

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in メモ,   ハードウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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