大気中の酸性度汚染は産業革命以前のレベルまで回復
By Billy Wilson
大気中の酸性度は火山の噴火および機械から排出される排気ガスによって変化するのですが、コペンハーゲン大学の調査で現代の大気酸性度は産業革命以前のレベルまで戻っていることが判明しました。
Acidity in atmosphere minimised to preindustrial levels – University of Copenhagen
http://news.ku.dk/all_news/2016/09/acidity-in-atmosphere-minimised-to-preindustrial-levels/
コペンハーゲン大学はグリーンランドの氷床からこれまでの気候と大気組成を調査するというユニークな研究を発表しました。氷床は積雪によって構成され、溶けずに圧縮されていくという性質を持っています。もともと氷床にドリルで1km級の穴を空けることで、気候の変化・温室効果ガスの濃度・大気汚染の度合いなどを1年ごとの年層から分析するという手法が知られており、氷のコアの伝導度を計測できる機器を使えば、過去12万5000年にわたる最終間氷期のころまでさかのぼって気候の状態を分析することができるとのこと。
一方で、この測定方式では氷床の最上部から60メートルまでは氷が圧縮されていないため、過去100年間の酸性度を調べるのは難しかったそうです。しかし人間が大気汚染に大きな影響を与えたのはこの100年間であるため、コペンハーゲン大学は分光計を使って直接氷の酸性度を測定するという新手法を使った研究結果を公開したとのこと。
氷のコアの長さに沿って切り出された氷の棒をゆっくり溶かすことで、化学的測定に役立つ融雪氷水を得ることができます。この融雪氷水をpH値を測定するというコペンハーゲン大学の新方式で測定することで、過去100年間という比較的近い年代の大気酸性度を割り出すことに成功したそうです。またこの新方式による測定では、火山・山火事・排気のどの変化によるものかまでフィルタリング可能とのことです。
研究チームは「産業の発展による大気の酸性度汚染は1930年ごろから始まり、1960年代~70年代にピークを迎えましたが、近年までに酸性度が劇的に低下していることを突き止めました」と説明。これはヨーロッパとアメリカが1970年代に採用した大気浄化法の結果によるもの。「大気中の酸性度は1930年代以前のレベルまで元に戻っている」と、研究者のHelle Astrid Kjar氏は話しています。
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