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いかにして「プロテイン飲料」はマッチョ向け製品から女性・健康志向製品へと変化したのか

By U.S. Department of Agriculture

人間の筋肉の「材料」にもなるプロテイン(タンパク質)は、健康的な体を作り上げる上で欠かせない栄養素の1つとして認識されています。古くは、ボディビルダーやアスリートが筋力をアップするためにプロテインを摂取するというのが典型的なパターンでしたが、近年のプロテインは「健康志向」を掲げる消費者や、女性をターゲットにした製品作りが行われるようになっています。

How Protein Conquered America - Eater
https://www.eater.com/2018/2/12/16991634/muscle-milk-protein-culture

かつて「プロテイン」と言えば、高さ20cmほどの大きな缶や、大きな袋に入った重さ1kgほどの商品がスポーツ専門店などで売られていることがほとんどでした。これは、主にプロテインが「筋肉を大きく・強くするためのもの」として用いられていたためであり、必ずしも広く一般的に消費されていたものではありませんでした。


また、プロテインはそれほどおいしい食べ物というわけでもありません。プロテインの代表的な成分の1つである「ホエイ」は、基本的にチーズやヨーグルトなどの乳製品を作った際に生じる残りカスを再活用したものであり、それ単体ではそれほどおいしいものではありません。そのため、プロテインはあくまで「トレーニングのためのもの」という認識が一般的であり、筋肉ムキムキのボディビルダーがトレーニング後にミルクに混ぜ、さほどおいしくもないものを無理に喉に流し込んでいた、というイメージを持っている人も多いはず。

しかしその傾向は、2000年代に入ってからアメリカのCytosport(サイトスポーツ)社がプロテイン食品ブランド「Muscle Milk」を登場させてから一変したとのこと。Muscle Milkは、それまで「マズいもの」と認識されていたプロテインを初めて「おいしく味わえるもの」として生まれ変わらせたものとして知られており、バニラ味やチョコレート味、ブルーベリー味バナナクリーム味など、20種類ほどにも及ぶフレーバーをラインナップしています。

Products | Muscle Milk™
http://www.musclemilk.com/products/


Cytosportはグレッグ・ピケット氏と息子のマイク・ピケット氏、娘のニッキー・ピケット氏ら親子によって1998年に誕生した企業で、グレッグ氏がかつて勤めていたChampion Nutrition社からスポーツドリンクパウダーのブランドを買い取る形で設立されました。同社を代表する製品「Muscle Milk」の名称は、自然の栄養源としてはベストと考えられていた母乳(mother's milk)と、1960年代に流行したプロテインブランド「Mother’s Milk」の両方からイメージをもらう形で命名されているとのことです。

かつてCytosportが製造していたプロテイン商品は、32グラムのプロテインと18グラムの炭水化物、そして12グラムの脂肪分が一食分のタブレットになったもので、利用者はこのタブレットを水に溶かして飲むようになっていたとのこと。しかし、その後の2004年に初となるドリンクタイプの「Muscle Milk」を発表したことが、Cytosportにとって大きなターニングポイントになりました。


飲みやすい味で手軽に飲めるMuscle Milkは飛ぶように売れ、「年間で1800万ドル(約20億円)ほど売上があれば大成功」と思っていたピケット家の狙いを大きく上回る規模の企業に成長。Cytosportにはアメリカ中の小売店から引き合いが舞い込んだほか、コカ・コーラ社やペプシコ社などからの商品展開を提案するものもあったとのこと。ペプシコは持株比率50%での合併をも持ちかけてきたとのことですが、Cytosportはそれら全てを断り続けてきました。

その後、世界最大の小売チェーンであるウォルマートやコストコとの取引が始まり、2014年時点では年間の出荷実績が22トンの規模にも達したとのこと。同年、Cytosportは缶詰め商品「スパム」が看板商品であるアメリカの食品会社「Hormel Foods」におよそ5億ドル(当時のレートで約550億円)で買収されるに至っています。

ピケット家の長女で創業者の一人であるニッキー氏によると、Muscle Milkはかつてのような「体作りのためのもの」という位置付けから、現在では「健康でアクティブなライフスタイルのため」のものとして社会に受け入れられるようになっているとのこと。プロテインは熱効果が高い栄養素で、体がプロテイン、つまりタンパク質を取り込む際に、脂肪や炭水化物などよりも多くのエネルギー(=カロリー)を消費すると考えられています。また、プロテインは満腹感を引き起こすホルモンの分泌を促す作用があるほか、高タンパクな食事をとることで体脂肪率の減少や除脂肪筋肉量を長く保つ影響があることが確認されています。

2018年現在のCytosportは、SNSを通じて女性をターゲットにしたマーケティングに注力しているとのこと。2016年にCytosport はスムージーのプロテイン飲料を登場させており、その中でも「ギリシャスタイルヨーグルト」のラインナップは特に女性をターゲットにしたもの。企業イメージも従来に比べてより「柔らかめ」になっており、以前は男性だけが担当していた広報業務にも女性アスリートが登用されて女性向けキャンペーンが実施されています。


コマーシャルにはプロサッカーのJulie Johnston Ertz選手がフィットネスを行っている女性と一緒に登場し、最後にはキーフレーズとなる「Stronger Everyday」というコピーが表示されます。

Muscle Milk | For Women With Muscles feat. Julie Johnston - YouTube


一方で、以下のように少しコミカルな感じのCMがあるのも、Muscle Milkブランドの面白いところとなっている模様。

Muscle Milk | For Women With Muscles - Yoga - YouTube


国際的な民族誌学者であるイヴェット・キアソン氏は、「これらの飲料商品は、以前のような機能に関するものではなく、よりライフスタイルに沿ったものになってきています」と語っています。今やSNSでもプロテインに関する投稿が多くアップロードされており、Instagramではハッシュタグ「#protein」で検索するとおよそ2000万件もの投稿がヒットする状況となっています。

#protein • Instagram写真と動画
https://www.instagram.com/explore/tags/protein/


ピケット一家は、CytosportのMuscle Milkが市場を席巻した理由について「フレーバー」が大きな役割を果たしたと考えているとのこと。父親のグレッグ氏はMuscle Milkをプロテイン飲料というよりも、「デザートの1つ」と捉えて開発を行ったといいます。Muscle Milkがまだ開発段階にあった時、グレッグ氏は工場のミキサーを管理するスタッフにチョコレート味の試作品を飲ませ、味の評価を尋ねてみたところ、そのスタッフは下を向いてしまい黙ってしまったとのこと。味には少し自信があったというグレッグ氏でしたが、スタッフのその様子を見てさらなる改良に着手し、それまでの「ダークチョコレート味」から、よりミルク成分が強く感じられる「ミルクチョコレート味」を作り出しました。その後、最初の試食を担当したスタッフがグレッグ氏のもとに訪れて、「このプロテイン商品は、自分が管理する機械が作り出した中で一番おいしいと思います」と感想を述べたとのこと。

このように、プロテインはかつての「筋力アップ」としての機能性食品から、「健康でアクティブなライフスタイル」を実現するための食品へと認識が変化したことから、より多くの人に受け入れられるようになってきたというわけです。しかし、プロテインは必ずしも「飲めば健康になる万能薬」というわけではなく、摂取量に応じた適切な運動があって初めて十分な効果が得られるものなので、雰囲気重視で摂取していると効果がないばかりか、プロテインのとり過ぎによって腎臓結石が引き起こされたり、腎機能障害が生じる影響もあるなど、思わぬ健康面での不具合を引き起こすこともあるので、正しい認識をもって摂取することが大切です。

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in メモ,   , Posted by darkhorse_log

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