先のとがった鉛筆をうまく自立させる方法は?

By David
退屈な授業中などに、ついついペンを手や指の先に立ててバランスを取る遊びをしてしまうことがあります。中でも難しいのは、接する面積が小さい、先のとがった鉛筆。どうやればうまく自立させられるのか、YouTubeで物理関連のムービーを多数公開しているMinutePhysicsチャンネルが考察しています。
How Long Can You Balance a Pencil? - YouTube
先のとがった鉛筆を人差し指に乗せて何秒バランスを取れるか。誰もが子どものころに挑み、一番長くバランスを取れた人は、仲間うちのヒーローだったはずです。

柔らかい指先なら何秒かバランスを取ることはできますが、机の上に立てるとなると至難の業です。鉛筆の重心から真下にかかる重力と、机と鉛筆の接点からの反発力がつり合えば自立しそうなものですが……

実際は鉛筆を鉛直に立てることができず力のバランスが偏ってしまい、鉛筆はほんの一瞬も静止することなく倒れてしまいます。

重力と反発力は理論上つり合うはずなので、慎重にバランスをとれば自立するはず。しかしナノ単位・ピコ単位のズレでも、鉛筆は倒れてしまいます。MinutePhysicsの計算では「原子の1万分の1」、つまり0.01ピコメートル(10フェムトメートル)のズレもアウトだとのこと。

とはいえ、世の中には驚くほど繊細なバランスを取っているものもあるように見えます。たとえば、サーカスの曲芸師や……

細い棒を投げてキャッチし、そのままバランスをとるドローン。

一度崩れたら二度と戻せなくなりそうな岩石の組み合わせなど、これらも0.01ピコメートル単位の話なのでしょうか。

これらの事例と鉛筆を机の上に立てるのとでは事情が異なるとMinutePhysicsは説明しています。曲芸師やドローンの場合は、積極的に「バランスをとり続ける」ことが可能です。岩石の場合、とがった鉛筆とは異なり、接地しているのが1点ではないため、うまくバランスが取れています。

では、ほんの1点で鉛筆を自立させるためには何が必要なのでしょうか。

仮に0.01ピコメートルのズレすらなく完璧な鉛直に立てられたとしても、大気が我々を阻害します。風が吹いたら倒れてしまうのは当然ですが、そうでなくとも空気は常に振動しており、ピコメートル単位のズレを引き起こしてしまうことは間違いありません。そのため、とがった鉛筆を自立させるなら「真空であること」は必須条件です。

また、鉛筆自身の分子の微震動によるズレを防ぐためには、キンキンに冷却して分子の活動を極限まで抑え込む必要があります。

それに加えて種々の不確定要素がすべてクリアされたとき、鉛筆は自立することになります。つまり……

真空で、鉛筆が十分に冷却された状態で、鉛筆を鉛直に立ててバランスを取ることでようやく静止できる……ということは、先のとがった鉛筆を自立させることは「物理的に不可能」といえます。

「無理!」

とはいえ、積極的にバランスを取れば曲芸師が棒の上に立てるように、鉛筆も立て続けることができるはず。ちなみに、MinutePhysicsが指先でチャレンジしたところ、記録は1.3秒でした……。

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