「Firefox Quantum」は本当に優れたウェブブラウザなのか?

ウェブブラウザのFirefoxを開発するMozillaが「過去13年間の歴史の中で最も大きなアップデートである」と述べる「Firefox Quantum」がついにリリースされました。Firefoxのコードの実に75%がFirefox Quantumのために書き直され、合計50万行にも及ぶコードが完成し、まったく新しいブラウザとして生まれ変わったわけですがこれが本当に優れたウェブブラウザになっているのかをウェブデザイン関連のニュースメディアであるWebdesigner Depotが解説しています。
Is Firefox Quantum Really Any Good? | Webdesigner Depot
https://www.webdesignerdepot.com/2017/11/is-firefox-quantum-really-any-good/
◆ページ表示速度
既存のウェブブラウザはどれもレンダリング速度が向上しており、大抵の場合は素早くウェブページを表示することが可能です。新しく登場したFirefox Quantumも、約1年前に登場したFirefox 52より「約2倍高速なブラウザに仕上がっている」と豪語しているのですが、これについてWebdesigner Depotは「かなり控えめ」と述べています。Webdesigner Depotのライターであるパディ・マクドネルさんの体感では「他のブラウザよりもかなり速く、Chromeと比べてもかなり高速」であり「Firefox Quantumはあらかじめあらゆるウェブページのキャッシュを取得しているかのよう」と、その爆速なページ表示を言い表しています。
以下のムービーは、Firefox Quantumのベータ版とChromeのページ表示速度を比べた様子を収めたもの。Firefox Quantumを開発したMozillaが公開したムービーですが、このムービーを見る限り「Firefox QuantumがChromeよりも劇的に速い」とは思えません。
Firefox Quantum (Beta) vs Chrome - YouTube

マクドネルさんいわくこの結果も「かなり控えめ」とのこと。実際に数日間Firefox Quantumの正式版を使ったマクドネルさんは、「正式版はベータ版からかなり高速化している」と感じているそうです。ただし、Firefox Quantumが爆速でページを表示できるようなサイトばかりをブラウズしている可能性もある、と述べています。
◆効率化
高度な処理を必要とするソフトウェアは、処理を高速化するためにマシンの心臓部であるCPUのコアに異なる命令を割り当てることで、マルチコアプロセッサを有効活用します。そのための開発は複雑で、なぜなら2つのコアが関連する作業を行っている場合、簡単に別のコアの更新内容を上書きしてしまう可能性があるからです。これが起きてしまうと、システム上でバグが発生します。この複雑さは、単一のコアにCSSエンジンを割り当てるなど、コアごとに完全に異なるタスクを割り当てることで解決されることがしばしばですが、その場合はマルチコアを効率的に使えているとは言いがたいそうです。その代わり動作は安定するので、これまでFirefoxはこの方法でマルチコアにタスクを割り振っていました。
しかし、 Firefox Quantumは単一のタスクに複数のコアを活用するという、より効率重視のタスク割り当て方法を採用しています。
そのために用いられた技術のひとつが新しいCSSレンダリングエンジンの「Stylo」です。StyloではCSSスタイルの処理がすべてCPUコアで並列化されています。ワークスティールと呼ばれる手法を用いることで、コア間の作業を効率的に分割し、すべてのコアがビジー状態になるようにタスクを割り振っており、これにより大幅なスピードアップが見込まれるわけです。
MozillaによるとFirefox QuantumはChromeよりも30%もメモリの使用量が少なくて済むそうですが、2015年発売のMacBook Airを用いてGmail、YouTube、Reddit、Mashable、the Verge、Digg、Chartbeat、ESPN、Google Docsという9つのサイトを別タブで開くというテストをDigg.comが行ったところ、Firefox QuantumはChromeよりも使用メモリが40%少なく、プロセスは3倍速かったそうです。
You Should Really Try The New Version Of Firefox - Digg

さらに注目すべきなのが、「Firefox Quantumはマルチコア数が増えるほど処理速度が高速になる」という点です。Firefox Quantumを効率的に動作させるため、Mozillaは人々がどのようにウェブブラウザを使っているのかを研究しました。その研究結果から、MozillaはFirefox Quantumにタスクの優先順位付けを実行させるという手法を採用しています。例えば、ボタンのやりとりがキャッシュやガベージコレクションよりも優先されるわけです。
タスクの優先順位付けの最も明白な利点は、タブ間の移動です。Firefox Quantumは複数のタブを開いても、Chromeよりも少ないメモリ使用量で済みます。Firefox Quantumはアクティブタブを他のどのタブよりも優先して処理するように設計されており、最大のリソースを与えているとのこと。これにより、複数のタブをより高速に開けるようになり、フリーズしてしまうことも ないというわけです。
◆Photon
Firefox QuantumのUIはこれまでのバージョンとは少し異なります。MozillaはGoogleの「マテリアルデザイン」のような独自のデザイン体系として「Photon」を生み出し、Firefox QuantumのUIデザインはこれをベースに作成されています。
MozillaいわくPhotonは「適応性があり、迅速で、意識でき、親しみやすく、支援しやすく、風変わり」なものになることを目指しているとのこと。実際、Firefox QuantumはこれまでのFirefoxよりも細部に注意が払われたデザインとなっており、例えば非アクティブなタブ上にマウスを移動させると線がアニメーションで表示されるようになっており、これまでよりもユーザーエクスペリエンスを意識したデザインに進化しているとのこと。
Welcome | Photon Design System

◆まとめ
Firefox Quantumがある程度の市場シェアを獲得することは間違いありません。来年にはChromeのシェアの3分の1にも満たないものの、ウェブブラウザシェアの15%を占めるにまで成長すると思われます。マクドネルさんは初めは好奇心からFirefox Quantumを使ってみたそうで、「2、3日後にはChromeに戻るだろう」と思っていたそうですが、結局Chromeを使わなくなり、Firefox Quantumがデフォルトのブラウザとなってしまったそうです。
確かにFirefox Quantumではいくつかのアドオンが使用できませんが、妥当な基準で考えて「Firefox Quantumは現在利用可な最高のブラウザ」であるとのこと。また、リソースにやさしくインテリジェントに設計されたブラウザであり、Firefox Quantumでのブラウジングはより楽しい経験になるとのことなので、気になる人はインストールして使ってみるのもアリです。
爆速進化したブラウザ「Firefox Quantum」の正式版がついに登場 - GIGAZINE

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