8万円のドラムと60万円のドラムはどのぐらい音が違うのか?
By Leigh Righton
外観はほとんど違わないにもかかわらず、値段が1ケタどころか2ケタも変わってしまうことは楽器の世界ではよくあること。しかし、「本当に高くなるといい音がするの?」という疑問に対する明快な答えを目の当たりにすることは、あまり多くありません。YouTuberのJared Dinesさんは価格が700ドル(約8万円)と5000ドル(約60万円)の2台のドラムセットを使い、同じ曲を演奏してその音の違いを確かめています。
$700 Drums VS $5,000 Drums - YouTube
「値段が高くなると、本当に音が良くなるのか確かめてみるぜ」と語るDinesさん。フルセットで10万円を切るという安物ドラムと、60万円もする高級セットの違いはたしかに気になるところ。むしろ「安物でもいい音してない?」とサプライズを期待したくなってしまう気持ちも湧いてきます。
比較の際にはイコールコンディションを保つために、ドラムのヘッド(打面)には同じ製品を使用し、チューニングの際にはメーターを使って管理。この他にも、録音に使用したマイクやプリアンプ、録音レベルは全て同一の状態にしてあるそうです。唯一調整したのが、ミックスダウンの時に全体に軽くコンプレッサーをかけて音量を調整したぐらいとのこと。比較は「1.曲に合わせて演奏」「2.ベースとドラムだけの演奏」「3.ドラムソロ」の3パターンで行われています。
最初に聴けるのは、総額60万円の高いほうのドラムセット。「Truth」ブランドのドラムセット(3500ドル:約40万円)にZildjianのシンバル「K Custom」と「A Custom」(合計1635ドル:約19万円)を合わせ、スネアヘッドにはEvansの「HD Dry」(15ドル:約1800円)、タムにはEvans「EC2S Clear」のセット(50ドル:約5700円)、バスドラムのヘッドにはEvans「EMAD Clear」(45ドル:約5000円)を使い、合計金額は5245ドル(約59万6000円)。ヘッドホンやイヤホンで聴き比べると非常によくわかるのですが、全体的に音の太さが感じられ、重い音色であることがわかります。
そしてこっちが安いほうのドラム。名門ドラムメーカー「DW」の弟分となる「PDP」ブランドのドラムセット(400ドル:約4万5000円)にZildjianブランドでも廉価版となる「ZBT」のスターターキット(200ドル:約2万3000円)を合わせ、これに高い方のドラムと同じヘッドを張っています。音の方はというと、まずわかってしまうのがスネアの音の軽さ、というより「ショボさ」。よく見れば、60万円のドラムに比べてスネアの胴が薄いので音が高くなってしまうのですが、それを加味してもペラペラの音に聞こえてしまいます。しかし一方で、バスドラムとタムは意外なほどローがしっかり出て「いい音かも」と思ってしまえます。
YouTubeのコメント欄では、「バスドラムは安物のほうの音が好き」というコメントも。しかし、シンバルは明確に高い方が「シャーン」といい音をしています。
安いほうのZBTのシンバルは、どうしても「クシャーン」というヌケの悪い音で、いわゆる「オモチャのドラム」の音に。こうやって聴き比べると、高い方のシンバルの音はドラムサウンド全体の中にうまくなじんでいることも感じられるようになってきます。
こんな感じで、安いほうのドラムも一部善戦はしたものの、トータルのサウンドクオリティという観点では明確に高い方のドラムが締まった深みのある音になっていることがわかりました。はたして52万円もの価格差に納得できるかどうかは人ぞれぞれですが、「楽器の音は価格次第」という評価軸も決して無視できないものではあることを痛感させられる内容でした。
ムービーの最後にはフロアタムがコケてしまう様子が映っているのですが、よく見ると3本脚ではなくスネアスタンドの上に置かれており、しかもアームの1つがボトムヘッドにあたる状態になっていたことが判明。ひょっとしたら、安いほうのドラムのタムがそこそこいい音をしていたのは、このあたりにも秘密があるのかもしれません。
なお、Dinesさんはメタル系ギターもなかなかの腕前という芸達者。以下の「10のクールなドラムのオカズ(初心者向け)」というムービーでは、ドラムのフレーズを「バブラブララ バブラブララ バブラブララ ラ」や「ディギダディギダディギダディギダダダダ」というふうに言うだけでロクに叩き方も説明せずに、ドヤ顔で叩くという笑える内容になっています。
10 REALLY COOL drum fills (for beginners) - YouTube
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