空から街を監視カメラで撮影し警察の捜査に役立てる計画が本当に実行されていた
防犯の用途で使用される監視カメラは世界中で設置されていますが、プライバシーの観点から監視カメラの設置に対して異論が挙げられるのも事実です。そんな監視カメラを飛行機に搭載して、空からの監視を行う計画がアメリカで実行されていました。
Secret Cameras Record Baltimore’s Every Move From Above
https://www.bloomberg.com/features/2016-baltimore-secret-surveillance/
アメリカのメリーランド州にあるボルチモアでは、警察と黒人住民の対立が続いています。対立の契機となったのが、警察の護送中に黒人の容疑者が死亡した事件です。この事件は、不法に銃器を所持していた疑いで連行されたフレディー・グレイ氏が護送中に死亡したというもので、護送車を運転していたシーザー・グッドソン元巡査が安全上の義務を怠ったとして逮捕されました。
そのグッドソン元巡査の裁判が行われ、裁判では検察の訴えが退けられ無罪となり、地元住民から大きな反発が出ています。地元住民の中には「グッドソン氏が容疑者を逮捕するところまでを見ていた証人はいるが、それから後に何が起こったかは記録に残されていません。ボルチモアでは空からの監視システムを採用しているのに、証拠が提出されませんでした。監視カメラが本当に正義のために使われているのか疑問です」と話す人がいます。
ボルチモアの警察は、2016年1月からアメリカ軍によりイラクで使われた空中からの監視システムををテストしていますが、何をどんな目的で撮影しているのか、その詳細について公に説明をしていません。
空中からの監視システムを警察に提供しているのはPersistent Surveillance Systems(PSS)という企業です。PSSは過去にアメリカ海軍に監視システムを提供しイラクのファルージャで使用されたり、麻薬カルテルと警察の争いが続くメキシコで採用されたりなど、軍や警察の捜査で実績を残してきました。
PSSがボルチモアで導入しているのは飛行するセスナ機に4~6台の監視カメラを搭載し街の様子を撮影するというもの。搭載されているカメラは7.7平方メートルごとに撮影を行い、リアルタイムで画像を分析官に送信しているとのこと。撮影された写真は高画質ではないものの、1台の自動車がどのストリートを走行しているかくらいのレベルなら確認可能ですが、人レベルの大きさになると、ドット1つ分くらいしかないため男性か女性かなどの特徴を判別することは難しいそうです。
時にはリアルタイムで捜査に協力し、例えばひき逃げで逃走して一度は見失った自動車の行方を発見し、犯人逮捕に大きく貢献したこともあります。PSSに勤務するテレンス・ライス氏によれば、勤務中はひたすら撮影された画像を確認し、画面から目を離すことはほとんどありません。目標物をフレームごとに追いかける作業はゲームをプレイする感覚に似ているそうです。
PSSを設立したロス・マクナット氏は「PSSの監視カメラは解像度が低いため人の顔を認識することまではできず、プライバシーを考慮したものである」と主張していて、同社で働く社員が監視カメラで人々の行動を見ているわけではなく、警察からの指示があった場合にだけ監視を行うものとしています。警察の指示で画像を拡大するときは、私有地ではなく公有地や公道にターゲットがいる場合に限り実行しており、プライバシーの侵害には当たらないとのこと。
マクナット氏は「私たちの監視システムが何を撮影しているのか、警察がきちんと説明すれば住民は導入に納得してくれると思います。私たちのカメラで何ができて、何ができないのか、これを説明すれば監視カメラについて不安を唱える人の不安を取り除けるはずです」と話しています。しかし、ボルティモアの警察は空からの監視カメラに関する詳細の説明を行わないという姿勢を崩しておらず、地元住民の間では警察に対する不信感が強まっているようです。
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