女性著名ソフトウェアエンジニアに殺害やレイプ予告が相次ぎ私立探偵を雇う事態に
by Antonio Marín Segovia
Dockerはコンテナ型仮想化ソフトウェアの名前であり、そのソフトウェアを開発した会社の名前でもあります。そのコミュニティで多くの実績を重ねていたスターエンジニアであるジェシー・フラゼールさんが2016年3月にDockerを離れ、別のスタートアップ・Mesosphereへ転職しました。この移籍自体は円満だったとのことですが、フラゼールさんはDockerコミュニティにおいてレイプ予告・殺害予告などをたびたび受けており、そのために会社が対策を講じなければならないほどの状況にあったそうです。
One of Docker's star engineers got so many death and rape threats, the company hired private detectives to protect her - Business Insider
http://www.businessinsider.com/death-rape-threats-for-docker-engineer-2016-4
フラゼールさんはDockerにおいてスターエンジニアであり、メインビルダーの1人と目されていました。しかし、女性が目立つことで、業界にはびこる性差別の被害をもろに受けることにもなりました。このことはフラゼールさん自身が2015年7月、自らのブログで明らかにしています。
Jessie Frazelle's Blog: This Industry is Fucked
https://blog.jessfraz.com/post/this-industry-is-fucked/
「This Industry is Fucked(この業界はクソだ)」という強烈なタイトルをつけたフラゼールさん。ブログによると、カンファレンスで話をしたり、オープンソースコミュニティに寄与するようになってから果てしない「ハラスメント(嫌がらせ)」を受けるようになったとのこと。たとえばIRCのプライベートチャンネルやメールでの何百件もの性的な誘いに始まり、レイプ予告、殺害予告などです。こうした連絡を送ってきた人々の中には「君のカンファレンス映像で自慰した」と告白してくる人もいたのですが、それは穏やかな方で、フラゼールさんの顔写真を血まみれに加工して送りつけてくる人もいたとのこと。
しかし、仕事をやめるつもりがなく、やめようとも思っていなかったフラゼールさんは、「言いたいことは『ファック・ユー』」というメッセージを、ブログを通じて発表するに至ったわけです。
ところが前述のように、2016年3月にフラゼールさんはDockerから転職。これについて、同じ女性エンジニアであるCharity Majorsさんからは「フラゼールさんは社内でのハラスメントに悩まされていたけれど、Dockerは加害者側に立つことを決めたのですよね?」と、Dockerの対応に問題があったことを示唆する声が上がりました。
y'all know that @frazelledazzell was harassed out of @docker, and the company stood by the harassers instead of her, right? fuck docker.
— Charity Majors (@mipsytipsy) 2016年4月22日
Majorsさんのツイートを受けて、Dockersは「我々はハラスメントを許しませんし、内外部問わずハラスメントの申し立てには積極的に応じています」と反論。CEOであるベン・ゴラブCEOからのメールの内容も公開しました。
We do not and never have tolerated harassment. @Docker actively pursues all internal & external claims of harassment pic.twitter.com/OtyKXmHJhU
— Docker (@docker) 2016年4月22日
ゴラブCEOは、フラゼールさんがコミュニティ内の匿名の何者かに脅され続けていたことを認めました。その上で、この事態を会社としても深刻に受け止め、私立探偵を雇ったり、警察に連絡を取ったり、内部体制を変更するなどの対策もとったとのこと。転職については、フラゼールさんが好機に乗っただけで円満退社であり、退職時には話し合いをしたものの、Docker社内からのハラスメントについての話はなかったということを明かしています。
なお、Business Insiderは、Dockerによる私立探偵雇用や警察への連絡で何らかの成果があったのかコメントを求めたものの、返答はなかったとのこと。当事者であるフラゼールさんとも連絡は取れなかったそうです。
この種のハラスメントは、たとえ有名な女性エンジニアでも避けられるものではなく、2014年には「GitHub初の女性エンジニア」だったジュリー・アン・ホーヴァスさんが転職後、GitHub時代にハラスメントがあったことを公表して話題になりました。
・関連記事
GitHubを退社した女性エンジニアが社内でのハラスメントを明らかにして改善を訴える - GIGAZINE
大学教授によるセクハラへの抗議活動として、どんな行為が行われたのか教育科学省前で再現 - GIGAZINE
「より良いネット」を作るためにヘイトと嫌がらせ表現の検閲の必要性をGoogle会長エリック・シュミットが主張 - GIGAZINE
・関連コンテンツ