サイエンス

がんの主原因が「不運」とする研究に対して環境の影響もあるとの反論

by Christopher Craig

「がんの原因の大半は遺伝や環境要因ではなく、腫瘍の成長を促進する遺伝子に変異が起きる“不運”による」という論文が2015年1月に科学誌・Scienceに掲載されましたが、これに対して環境要因が多いとする反論が科学誌・Natureで発表されました。

Substantial contribution of extrinsic risk factors to cancer development : Nature : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature16166.html


Cancer studies clash over mechanisms of malignancy : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/cancer-studies-clash-over-mechanisms-of-malignancy-1.19026


Cancer is not just 'bad luck' but down to environment, study suggests - BBC News
http://www.bbc.com/news/health-35111449

2015年1月にScienceに掲載された研究論文では「腫瘍の成長を促す遺伝子で起きるランダムな変異で原因を説明できる一方、残りの3分の1は、環境的要因や親から受け継いだ遺伝子に起因するものだった」と、がんの大半は“運”によるものであり、喫煙習慣があったり、日光を大量に浴びてたりしても、がんになることなく長生きしている人は、「遺伝子が優れている」というわけではなく、「運がいいから」と説明しています。


しかし、今回Natureに掲載された論文によると、先の論文で「運が悪い」と表現された「腫瘍の成長を促す遺伝子でのランダムな変異」のような内因性の危険因子ががんの発生に寄与するのは10~30%ほどであって、大きいのは環境などの外的要因であるとのこと。

論文筆者の1人であるユスフ・ハヌン博士は、リボルバー式拳銃を用いたたとえで、内的要因は弾丸を1つ込めたような状態であり、喫煙者は弾を2~3発入れたようなものだと説明。ロシアンルーレットをしたとき、必ずしも弾丸が発射されるとは限らないため、運の要素は確かにあると認めています。しかし、外的要因のすべてが認識されているとは限らず、それが化学物質や放射線のように避ける手段があるとは限らないため、問題は残っていると語っています。

ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院でがん予防を学ぶエドワード・ジョバヌッチ氏は、Science掲載の論文では「がんは主に不運によるもので、予防するための努力は有益なものではない」と受け取られてしまうおそれがあることから、Nature掲載の論文を歓迎するがん予防専門家がいる、と語りました。

C型肝炎感染によって引き起こされる肝臓がんや、喫煙に起因する肺がんのように、環境要因と強く結びついたがんがあるということは明らかですが、そうではないがんは「不運」の要素が大きいのかどうか、研究が進めばもっとはっきりとわかってくるのかもしれません。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ガン細胞を元の良性細胞に戻すことが可能である研究結果が明らかに - GIGAZINE

がん治療のためのデータをリアルタイムで取得できる小型の生化学センサー - GIGAZINE

がん・脳梗塞・糖尿病など150の病気の発症リスク&長生きや肥満など130の体質の遺伝的傾向を自宅で簡単に分析可能な遺伝子検査キット「MYCODE」 - GIGAZINE

病院がApple Watchをがん患者の治療に役立てている方法とは? - GIGAZINE

将来のがん治療を変えるIBMの人工知能システム「Watson」の運用が開始される - GIGAZINE

ガンを早期発見できる「ナノダイヤモンド」でガン治療が飛躍的に進む可能性 - GIGAZINE

飼い主の前立腺ガンを察知して知らせたネコ - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.