まだ言葉もわからない赤ちゃんが大声で笑うのはなぜ？

By Andrew Vargas

まだ言葉を覚えておらずジョークを聞いても理解できないはずの赤ちゃんが、なぜキャッキャッと声を上げて笑うのかは詳しく分かっておらず、現在解明されているところです。そんな赤ちゃんが何に反応して笑いを得ているのか、ということを調査した研究結果が発表されています。

The Baby Laughter project | The science of laughing babies. Dr Caspar Addyman, Goldsmiths Infantlab
http://babylaughter.net/

BBC - Future - Why do babies laugh out loud?
http://www.bbc.com/future/story/20150728-why-do-babies-laugh-out-loud

進化論を提唱したチャールズ・ダーウィンや、精神分析の創始者ジークムント・フロイトなどが、赤ん坊が笑う理由について研究を行ったことが知られていますが、歴史的な学者たちが「赤ん坊の笑い」について興味を示したものの、言葉を覚えていない赤ん坊がなぜ笑いを得るのかはいまだわかっていない状態です。

人間は他人が起こした滑稽な失態やアクシデントを見ることで、笑ったり、満足感を得たりすることがあることから、フロイトは「人間は優越感を得た時に笑う」という理論を展開していました。また、人間発達の研究において大きな功績を残した心理学者ジャン・ピアジェは、赤ん坊がなぜ笑うのかを研究することは、赤ん坊が世界をどのように理解しているのかを知るための重要な指標になると考えていたそうです。

一方で、近代心理学において「赤ん坊の笑い」という研究課題は人気がなく、なかば無視された形になっているとのこと。ロンドン大学のCaspar Addyman氏は、そんな幼児研究に関する世界的な調査を行っている数少ない研究者です。ウェブサイト経由で世界中の1000人以上の赤ちゃんを持つ親から「いつ、どこで、なぜ赤ん坊が笑ったか」というアンケートを集めて分析するという研究を行っています。

集まった調査結果によると、赤ん坊が初めて「笑顔」を作るのは生後6週間ごろで、初めて「笑い」を始めるのは生後3ヶ月半～1年ごろ。声を上げて笑うようになるのは、歩いたり話したりする以前からです。世界的にも「いないいないばあ」は赤ん坊を笑わせる必勝法であり、「くすぐり」によって赤ん坊が笑うことも多くの親から報告されています。

ただし、赤ん坊が笑うのは「他の誰かと一緒にいる時」「他の誰かが笑っている時」が多いということが重要とのこと。オモチャなどが見え隠れするだけでは笑いにくく、大人が見え隠れすると笑うようになるため、身の回りの人が何かをすると「おもしろい」と感じるのだと見られています。このことから、くすぐられて笑っている赤ん坊は、「くすぐったい」という肉体的反応だけで笑っているのではなく、「大人が自分をくすぐっている」ということで笑いを得ていると考えられます。

By Donnie Ray Jones

赤ん坊は誰かが転ぶところを見るよりも、自分が転んだ時の方が笑いやすい傾向にあることや、周りの人が悲しい・不愉快・びっくりしている時よりも、周りの人が幸せな時の方が笑いやすいという傾向にあることがわかっています。また、女の子より男の子の方がわずかに笑いやすい、という結果も出ていますが、性別にかかわらず、母親と父親を見つけた時はどちらも同じくらい笑うそうです。これらの傾向はフロイトの「優越感による笑い」とは異なるため、赤ん坊の笑いは、異なる要因から起きているということになります。

話すことのできない赤ん坊が笑う理由ははっきりとわかっていないものの、Addyman氏は今後も世界中からアンケートの募集を続けることで、発展途上の赤ん坊がどのように世界を理解しているのかを明らかにしていく予定。Addyman氏によると、「赤ん坊の笑い」という研究テーマが取り上げづらいのは、研究所環境で赤ん坊を確実に笑わせるのが難しいという問題があり、次のプロジェクトでクリアできるよう取り組んでいくとのことです。