外国人が見た「ヤクザ」の世界
指定暴力団の山口組が年間収入8兆円で世界最大の犯罪組織としてFortuneに取り上げられるなど、日本の暴力団、いわゆる「ヤクザ」は海外からも大きな注目を集めています。そんなヤクザの知られざる組織実態を明らかにした密着ドキュメントムービー「Japan's Yakuza: Inside the syndicate」をThe Economistが公開しています。
Japan's Yakuza: Inside the syndicate - YouTube
ヤクザに密着取材をしたのは写真家のアントン・カスターさん。
「映画キル・ビルのような刀で首が飛されるような世界を予想していたが、実際のヤクザの世界は違っていた」とカスターさんは述べています。
日本には少なくとも5万人のヤクザがおり、世界で最も巨大な犯罪組織の一つに数えられています。2009年初頭にベルギー人写真家のアントン・カスターは知られざるヤクザ組織の中に入ることを許され、彼は2年間にわたってヤクザに同行しました。
10カ月の交渉の末に、カスターさんはヤクザに密着取材することを許されたとのこと。写真の中央にいる人物が、カスターさんの密着した組のトップである組長で、ヤクザの世界では「親分」と呼ばれ、「子分」と呼ばれる部下を従えています。めったに表舞台に姿を現さない親分が外出するときはボディーガードとして子分が付き添います。なお、この親分は「自由に写真を撮って良い」と許可してくれたそうです。
ヤクザとは、ブラックジャックに似たカードゲーム(カブのこと)の最悪な手を意味する「8-9-3」から来た言葉です。ヤクザの起源については明らかではありませんが、17世紀の主人のいないサムライ(浪人)の流れをくんでいます。18世紀には貧乏で根無し草の無法者たちが徒党を組みだして、ファミリー(一家)を構えるようになりました。
ヤクザの世界は厳格な階級社会です。ヤクザはみな擬似的な血縁関係を結びます。
血縁関係を結んだ親分と子分との結束は非常に強く、親分の命令は絶対です。
若い子分はストリートでスカウトされます。より良い暮らしを求めて、擬似的な血縁関係を結び、ヤクザ組織に忠誠を誓います。
アントンが密着した組は東京の歌舞伎町を縄張りにしており、主なビジネスは売春の斡旋です。他にも薬物売買、マネーロンダリング、賭博、贈賄などを稼ぎにしています。
日本のヤクザは会社を運営することを許されています。
そのため、日本では「フロント企業」と呼ばれるヤクザが背後にいる会社がビジネスを行っています。
ヤクザを見た目で見分けるのにタトゥー(刺青)は最も重要なポイントです。
刺青には人生に起こった出来事や……
古い日本の神話の生き物などが描かれます。
一般人がヤクザの刺青に出会える場所は、銭湯や温泉です。しかし、公衆浴場で拳銃などの違法な武器をヤクザが持ち歩く姿を見ることはまずありません。
また、欠落した指もヤクザの大きな特徴です。何か失敗をしたときに、指を切り落とすことで謝罪するのがヤクザ世界の習わしで、切り落とした指は、白いナプキンにつつんで親分に差し出します。
「しかし、欠落した指では刀やゴルフのクラブを握りにくそうだ」、とカスターさん。
2011年2月、ヨーロッパにいたアントンはヤクザの組から連絡を受け、ミヤモトさんという幹部が死んだことを知らされて、日本に戻って葬式に出ることになりました。
血縁関係で結束するヤクザにとって葬式は重要な儀式です。
参列者はみな喪服をまとい、哀悼の意を表します。
葬式には他の組のヤクザも参列します。
ミヤモトさんの弟分であるヤクザが、カスターさんにミヤモトさんと別れの挨拶を交わすことを許してくれたとのこと。
心の準備ができていなかったカスターさんは、この瞬間に、長い間ずっと取材したいと望んでいた「聖域」に自分がいることを実感したそうです。
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