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なぜ警察は同僚の不正行為を容認する傾向にあるのか?

by Lorie Shaull

警察による不適切な拘束により死亡させられたジョージ・フロイド氏の死に関しては、その首を膝で押し付けた白人警官デレク・ショーヴァンのほか、関係者として3名の警察官が解雇されています。このような警察による不正行為は数十年前から行われてきたものの、警察は同僚の不正行為を隠す傾向があり、多くは明るみに出ないとのこと。一方で、「同じ市民の平和を守る」という職務を持つ軍隊にこのような傾向はないとして、弁護士であり従軍経験を持つDwight Stirling氏が、その背景にある組織文化について解説しています。

Why the US military usually punishes misconduct but police often close ranks
https://theconversation.com/why-the-us-military-usually-punishes-misconduct-but-police-often-close-ranks-127898

Stirling氏によると、アメリカの警察官は不正を起こした警察官を擁護する傾向があり、不正行為を報告した警察官は「ラット」と呼ばれ昇進の道を閉ざされるとのこと。研究者はこの現象を「沈黙の青い壁」と呼び、アメリカ警察の特徴と捉えています。

一方で、アメリカの軍隊は、これとは違った性質を持ちます。シールズ特殊部隊のエドワード・ギャラガーは少年兵捕虜殺害やイラク市民への殺人未遂など複数の戦争犯罪で軍法会議にかけられましたが、告発を行ったのはギャラガーの同僚でした。

日常的に自分の命をもって市民を守る立場にある2つの集団が、まったく異なる性質を持つのは、職業文化の違いにあるとStirling氏は指摘します。アメリカ軍隊は個人的な忠誠ではなく組織的な忠誠を強調しており、「個人的な善行」ではなく「組織としての善行」を行うように教えられます。海兵隊員たちの誇りは「尊敬される組織の一員であること」の誇りであり、他の隊員との個人的関係は二の次だとStirling氏は述べています。また、アメリカ軍法では、たとえ上司の命令であっても犯罪行為を犯した人は罪を免れません。このため上司ではなく法律が自分を裁くことになり、全て上司のいいなりとなるわけではないそうです。

by USCG Press

もちろん、全ての兵士が法律にのっとるわけではなく、ソンミ村虐殺事件アブグレイブ刑務所における捕虜虐待のような、兵士による残虐な事件も起こっています。しかし、全体的には、軍における「組織思考」が警察のような「沈黙の青い壁」の抑止力になっているとのこと。

警察における「沈黙の青い壁」の存在は1960年代に既に報告されていました。刑事のフランク・セルピコ氏はニューヨーク警察に勤務している時に同僚が不正を行い、楽しみ目的で容疑者に暴力を振るっている様子を目撃し、不正を告発。その結果、同僚の警官に銃撃されることとなりました。このような警察の性質は現代にも受け継がれており、2011年にも警察官のジョー・クリスタル氏が同僚による容疑者への暴力を告発後、辞任に至るまで、降格・脅迫・いやがらせといった仕打ちを受けています。

一方で、2014年の研究からは、多くの警察官が「警察以外の誰もが、警察を危険な職業だと認識していない」と考えることから、仲間を告発することに抵抗を感じていること示されています。警察官は、命を危険にさらしていない公的機関や一般市民に裁かれることに対していらだちを感じているため、不正行為を発見しても、それを隠す傾向があるとも考えられています。


また、軍は、軍に対する政治的干渉を強く警戒していることからも、組織内部の正義が真剣に受け取られる傾向にあるとStirling氏。ただし、戦争犯罪で告発されたギャラガーは一度は有罪判決を受けて降格処分とされましたが、その後、トランプ大統領が処分を取り消しました。加えてトランプ大統領はギャラガーの一件を扱った検察官が有していた従軍記章を剥奪しています。

軍に対する政治的干渉が大きくなり、「独立したエージェント」としての軍人の立ち位置が危うくなる中で、ギャラガー事件後の軍で「沈黙の迷彩壁」ができる危険性をStirling氏は示唆しています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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