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伝説の刺青師が職人気質・プロであること・仕事観について語る貴重な映像「The Sacred Art of the Japanese Tattoo」


「伝説の彫師」と呼ばれる69歳の刺青師・参代目彫よし氏のドキュメンタリー映像がYouTubeで公開されました。入れ墨から人生を学んだという参代目彫よし氏が説く「守破離」という考え方、日本特有の刺青の美しさや、「コピーはあくまでもコピー。職人の目で見ると、本物のよさには勝てない。『うまい・へた』ではなくて『良さ・悪さ』の問題」という言葉など、物を作る人や働く人、今を生きている人にとって非常に興味深いインタビューになっています。

The Sacred Art of the Japanese Tattoo - YouTube


「LIFE with SHISEI」ということで、「アート、アート、アート、っていう入れ墨は欲しくない」という言葉と共に参代目彫よし氏のドキュメンタリーが開始。


参代目彫よし氏の仕事場は神奈川県・横浜。


「最初はそんな高尚な、生意気な考え方ではなくて。ただ入れ墨が好きで、この仕事で飯が食いたいって。飯食うためにはうまくなりたい、うまくなるためには努力するしかない、そうしていく間に、逆に入れ墨から人生を学ぶんですよ」と参代目彫よし氏。


「入れ墨をきれいに仕上げるには、まずデッサンでしょ。デッサンができないと、次のアウトラインという仕事ができない。アウトラインができないと次の『ぼかし』……シェーディングができない」


「これを人生に置き換えると、まずアウトライン……人生設計みたいなものがあって、考えをしっかりさせないといけないでしょ。一針一針を彫っていくということは、一分一秒を大事にしなければならない」


「それを粗末にすると、きれいなラインができない。そういうことを考えていくと、まず『今』を大事にすればいい、という考えにたどり着く。その積み重ねで一分、一時間、一日、一週間、一年になるわけだから」


「積み重ねていくことで自然と技術も向上するし、知識も増えるし。デザインをいいものにするためには勉強する必要がありますが、知識がつくから知恵がつく、そうするとなおいいものができる」


「これが要するに、自然に身につく『守破離』です」


「師匠から学ぶのが『守』。ただ、学んだものを守っていくだけでは生きていけない。進歩しないから」


「それを伸ばしていくためには、教えてもらったことを破らなければならない」


「これは裏切りではなくて……。『師匠を越えろ』という言葉があるけれど、それが『破』なんだよね」


「『守』『破』ができたら、今度は自分を乗り越えて行かなければならない。それが『離』。そこまでいけるのかどうか、そこまでいけた人がいるのかどうか、それは俺も分からない。まだ俺も破の途中だと思っているから」


参代目彫よし氏がデザインをファイルから取り出し……


お客さんの足にかざします。


コピーを取りながら「今は便利だよ。昔はコピーがなかったからさ」と、参代目彫よし氏。


「無駄なことって大事なんですよ。何事でもね。近道して彫れるようになりました、うまいですね、だけでは半分しか覚えていない。遠回りしないで直線コースで行っちゃうから、半分しか知識がつかないんですよ」


「昔は大回りしたから、余分なことを覚えてくるんですよ。その余分なことがものすごい重要」


実際に入れ墨を入れていっている様子はこんな感じ。


「技術さえあれば彫れますよ。でも、本物の職人と同じようにできない。味が落ちるんです。プロの目で見ると誰が見てもわかるんだけど、なんて言ったらいいのかな……。コピーの方がオリジナルよりも上手な場合もあるんですよ。だけど、味としてはどこまでいってもコピーの方が悪い。コピーはあくまでもコピー。職人の目で見ると、本物のよさには勝てない。『うまい・へた』ではなくて『良さ・悪さ』の問題」


肌をスプレーでぬらして……


下絵を写していきます。


「直接の師は初代?」と尋ねられ、「そうです、そうです」と参代目彫よし氏。


「質問しても答えてくれない。『どうですか?』って言ったら『う~ん』ってだけで。その『う~ん』の中から自分で師匠の答えを探すんですよ。トーンの違いで(笑)それで、自分の足で修行していくんですよ。で、ある日『お前やれよ』って言葉が出る」


「一番面白いのが伝説・奇談・空想。孫悟空や龍もいないけれど、いるものとして描かなければいけない」


「実際にいた人物は、いた人物そのままに彫ったらだめなんですよ。やっぱり、伝説風に彫らないと。ウソを本当らしく、本当をウソらしくして、始めて入れ墨ができる」


「『どういう風に仕上がりますか?』って聞かれても、答えは『分かりません』。当日来て、立ってもらうまでは分からない。その時その時が大事だから、その時のインスピレーションだけしか。あらかじめ下絵を決めて作って、ってやると、『その時』がなくなっちゃうから」


「考えない、だから面白いものができあがる。逆に言うとその分だけ知識がないと進んでいかない。絵はバカでも描いてれば描けるようになる。ただ知識っていうのは本を読まなきゃ覚えられない。本も、間違ったことを書いている本がたくさんあるんですよ。その間違いが分かるようになるまで読まなきゃいけない」


「お客さん個人ではなくて、入れ墨そのもののキャラクターにならなければいけない。相手のことを考えていたら筆が進まないじゃないですか」


「もちろん相手の希望には添ってやっていきますよ、それを越えたらお客さんと私の間のコミュニケーションがゼロになっちゃうからね。守るべきことは守っている中で、相手も無視、自分そのものも無視、手先だけが勝手に動いてくれる」


「下書きすると、下書きに手先が取られていくんですよ。そうすると、自由な線が引けなくなって、彫るだけになる。捕らわれない心っていうのが、私には大事なんです。だから一瞬一瞬が大事なんです」


「入れ墨の道義って人によってさまざまです。ただ、本当の魅力っていうのは男らしさ、男としての誇り。それを誇示したいため。維持したいため。そこにある」


「女の人はきれいだから、好きだから、かっこいいから、という理由で彫るんだと思うんですけど、男の場合は『痛みに耐えられないっていうのは、男じゃない』ってことじゃないですか。やり始めて途中で根を上げられないでしょう。物理的な痛みは精神面で補っていくしかない」


「単純なことです。自分に勝てるか負けるかです」


「最初は『アメリカンタトゥー』として若い子たちがワンポイントで彫っていたのが、次第にアメリカンタトゥーに飽きがきて、日本の刺青(しせい)に目が向けられるようになった」


「背景が欲しくなって、ワンポイントをつなげて背景のように見せたり。今は外国人の中でも日本の刺青が主流になってきつつあるんですよ」


「日本の刺青の魅力っていうのは、日本の歴史の長さと美意識だと思うんですけどね。人間の体を知り尽くした上で、どういう形で彫ったら一番美しいか、という様式美」


「入れ墨の様式美を発見したのが日本人と、あとポリネシア人だと思うんです。南洋の人たち。彼らの入れ墨も人間の体にあったきれいな形です」


「トライバルはあれなんです。今のは単なるコピーのコピーのコピーのコピーで、なんだか分からない、意味がない、ただ模様だけ。本来はみんな呪術的な意味があって、そうものが顔や腕や胴に、体にすごくマッチした形でデザインされていた」


「日本のものも同じなんですよ。片腕なら片腕、両腕なら両腕、背中なら背中、1つの形があって、それが人間の体にぴたっとはまっていたんですよ。それが西洋にはないから、彼らは入れ墨の様式美を求めた。そして、最終的に行き着いたところが日本の入れ墨なんです」


「法政大学に松田修先生という、日本の入れ墨研究の第一人者がいたんですよ。松田修先生は入れ墨が大好きで、ここにも何度も来てくれたんだけどね、『入れ墨を茶の間に持ち込んではいけない』って言っていて」


「要するに一般化してはいけない、ということ。特殊な世界の人たちの中にあってこそね、いいものであって、入れ墨が茶の間に進出することは入れ墨に対する侮辱であるって。入れ墨に対する『美がなくなる』と。その考えには感動します」


「誰でも彼でも彫って、電車の中で入れ墨がある人が乗っている、芸能人がテレビのコマーシャルで入れ墨を出している、それは確かに松田修先生の言う『入れ墨に対する冒涜』だと思う。本来の持つ美学が失われた証拠」


「要するに、さっき言った、精神が遠回りしていない分だけ美学がなくなってきている。精神的なものの裏付けがあって、初めて入れ墨も光るわけですよ。入れ墨はやっぱり、影の部分がないと、本当の光がなくなってしまう」


「明るい中で入れ墨を出して歩いても本当の入れ墨の魅力は感じられない。ちょっとアンダーグラウンド的な匂いがあってこそ、始めて入れ墨としての魅力も、重みも、歴史も、文化も、ぷんぷん匂ってくる。それこそが、俺が残していきたいもの。今のアート、アート、アート、っていう入れ墨は欲しくない。日本刺青の伝統の美の中には『アート』と『精神』の美が両方欲しい」


「自分の求めた到達点なんて絶対に見つからないと思う。全てのものが欲求不満に終わるからいいんですよ。死に際に満足して死んだ人なんて一人もいないと思う」


「俺の最終目標は死ぬことだから」


「いかにうまく死ねるかということだから。うまく死ねるかということは、いかに人から『ああ、惜しい人を亡くしたな』って言われるかでしょう。ということは、いかにうまく生きていかなきゃいけないか、ということなんです」

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in 動画,   Posted by darkhorse_log

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