10年後を作るILMの極秘施設「スターウォーズ・バーチャルリアリティラボ」
1977年に公開された映画「スター・ウォーズ」から約40年にわたって特撮(SFX)や特殊効果(VFX)の世界を引っ張ってきた「インダストリアル・ライト&マジック」と「ルーカス・フィルム」、そして音の面で作品を支えてきた「スカイウォーカー・サウンド」が一つになったラボ「ILM×LAB」では、10年後のバーチャルリアリティ(VR)と拡張現実(AR)が研究されています。The Vergeがそんなラボに潜入し、最先端のVR/ARの世界を体験取材しています。
Inside ILM's secret Star Wars virtual reality lab - YouTube
SF映画の金字塔である「スター・ウォーズ」シリーズは、SFX・VFXで世界をリードしてきた作品群であると同時に、多くの人を引きつけるコンテンツとして不動の存在でもあります。
このマスクだけを見せられたとしても、キャラクターの名前は何なのか、どういうしゃべり方をするのかがすぐ頭に浮かぶ人も多いはず。多くの人にとって、スター・ウォーズは1度は通ったことのある道と言っても過言ではない存在。
そしてその土台には、常に「インダストリアル・ライト&マジック(ILM)」の名前がありました。
そんなILMとコンテンツ制作をおこなうルーカス・フィルム、そして音の面で世界観を表現してきたスカイウォーカー・サウンドの3社が10年後の表現を見据えて開発を行うのが「ILM×LAB」です。
なにやら小さな棒と玉が付いたグラスをかけるThe Vergeの記者。何をしているのかというと……
立体映像を映し出すスクリーンでリアルタイムなVR映像を体験。「Wow, Wow!」となんども口にするぐらい映像の世界に没入している様子。
スクリーンから飛び出して食らいついてきそうな距離に恐竜が映し出されています。画面に映し出される3D映像に加え、グラスに取り付けられていた玉の動きは部屋の壁に取り付けられたカメラが顔の動きを捉えることで映像を変化させることで、さらにリアルな体験ができるようになっている模様。
そして恐竜の動きは、同じスタジオの中で動きを演じる「俳優」の動きをモーションキャプチャすることで、リアルタイムに生みだされているそうです。これにより、参加者の動きに合わせたインタラクティブな体験が可能になるということです。
そしてILM×LABの大きな魅力の一つが、世界最大のコンテンツである「スター・ウォーズ」を持っていること。
作品のキャラクターが登場する世界に自らも入り込むような体験型コンテンツが、将来的に生み出されることが期待されています。
プロジェクトを率いているRob Bredow氏は、かつてソニー・ピクチャーズで「インデペンデンス・デイ」などの作品に関わってきた人物。
そして、クリエイティブ・ディレクターを務めるJohn Gaeta氏も映画の世界では大物中の大物。これまでに携わってきた作品には……
2008年に公開された「スピード・レーサー」。この作品ではアニメと実写を組み合わせたような世界観を表現。
そしてGeata氏の代表作と呼べるのが「マトリックス」シリーズ。
誰もがまねした「バレットタイム」もGeata氏の手による表現手法でした。
ILM×LABでは、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)の可能性を追求する研究が行われています。ムービーで公開されているコンテンツはすべて「1年以上も前の技術」とBredow氏は語っていますが、以下のように現実の部屋の中にラジコンブルドーザーが登場し、操作できる様子は一つのヒントにもなりそう。
Geata氏は自身の仕事について「マトリックスの世界につながるプラットフォームをデザインして実現させたい(ただしマシーンによる統治は除く)」とLinkedInで語っています。
単なる3D映像だけではなく、実際にその世界に入って体験できるための技術が開発されているようです。
また、iPadなどを用いたインタラクティブな体験も研究されている模様。
画面を操作することで、ストーム・トルーパーなどのキャラクターの動きを自由に調節したり……
ストーム・トルーパーの一人になって、実際の世界を体験することもできる様子。
しかしこれは単なる映像コンテンツではなく、iPadの背面に取り付けられた対象物との距離を測定できるセンサー「デプス・センサー」によって、自分の動きを反映させた仮想現実の空間がディスプレイ上に再現されるようにもなっているようです。
仮想現実といえば、もちろん「Oculus Rift」を忘れるわけにはいきません。ILM×LABでも当然取り入れられている技術です。
Oculus RiftをつけてX-ウィングを操る体験が可能になるというわけです。
これまで、映画の技術は「仮想の世界を人々に体験させるものだった」と表現することができます。
最初に汽車が走ってくる映像を大きなスクリーンで見た人は、驚きのあまりイスから逃げ出してしまったそうです。
そして2000年に入り、人々はOculus Riftでジェットコースターの映像を見たとき、同じ反応を見せるのでした。このように、映像には普段体験できない世界を目の当たりにできるという力があるといえます。
意外にも思えるかもしれないのが、Geata氏がウォルト・ディズニーのことを「ユーザーエクスペリエンスのゴッドファーザー」と呼んでいるところ。ディズニーランドでは、日常から離れたディズニー映画の世界に飛び込んで体験するという世界観が表現されているわけですが、実はILM×LABが目指す先には同じ目標が存在しているようです。その世界観についてGeata氏は「ディズニー体験のバージョン2.0のようなもの」と表現しています。
そのコンセプトは、ひょっとしたらILMがディズニーによって買収されたという経緯も影響を与えているのかもしれません。ここで研究されている技術は5年後、10年後に世の中に出てくるもので、ひょっとしたら形にならないものもあるかもしれないとのことですが、「新しい体験」の実現に向けた試みは水面下で進められているようです。
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