Surface Pro 3がどれほどこだわり抜いてデザインされているのかを開発責任者が解説
2015年5月4日から8日にアメリカ・シカゴで開催されたイベント「Microsoft Ignite」で、「Surface Pro 3がどのようにして誕生したのか?」についてSurfaceのプロダクトマネージャーがプレゼンテーションを行っています。プレゼンテーションからはSurface Pro 3がこだわりまくって設計されている様子がよく分かります。
Building Microsoft Surface Pro 3 | Microsoft Ignite 2015 | Channel 9
Surface Pro 3のハードウェアデザインについて話すのは、Surfaceチーム・プロジェクトマネージャーのビニート・スバーラ氏。
Surface Pro 3のハードウェアに関するデザインコンセプトでは、「より薄く、より軽く」という点が重視されています。なお、右の写真はスバーラ氏のデスクで、普段の仕事でもSurface Pro 3を使っているそうです。
ユーザーに最高の体験をしてもらうために、Surface Pro 3は細部のデザインまでこだわり抜いたとのこと。
前作のSurface Pro 2をベンチマークにしてさらなる改善が加えられたSurface Pro 3は、Surface Pro 2に比べて33%薄く、12%軽く、1.5倍のディスプレイ解像度を持ち、バッテリー駆動時間は72%アップで15%も高速なCPUを採用と、カタログスペックではSurface Pro 2を圧倒しています。
Surface Pro 3はSurface Pro 2よりもフットプリントが大きくなったにもかかわらず、軽量化されています。
Surface Pro 3を作り出す上で、クリエーターが重視したポイントは「Performance(性能)」「Schedule(発売時期)」「Cost effectiveness(製造コスト)」「Manufacturability(技術的に製造可能なサプライヤ)」という4つ。
具体的な製品のデザインの話に移ります。「より薄く、より軽く」を追求するために、マグネシウム合金を筐体に使用しています。
特別なCNCマシンで削り出されたマグネシウム合金の工作精度は見事なレベル。
Surface Pro 2(左)とSurface Pro 3(右)の部品レイアウトを比較するとこんな感じ。Surface Pro 2が本体上部にマザーボードと熱源、下部にバッテリーが配置されているのに対して、Surface Pro 3はそれぞれを左右に配置。特に、CPUを冷却するファンが1つになり、ファンをぐるっと取り囲むようなヒートパイプの長さも短くなっているのが特徴的です。このようなレイアウトによって9.1mmという劇的な薄さが実現できたとのこと。
画面左の白い部品がバッテリー。極薄のバッテリーはもちろん専用設計。また、画面右側のマザーボードもSurface Pro 2比で60%も小さくなっています。
CPUには第4世代Intel Core i7-4650Uを搭載。
省スペースに収まるように設計されたマザーボードは驚異的な高密度です。
ファンの回りには特徴的な金色のヒートシンク。このファン構造がSurface Pro 3の冷却性能を大幅に向上させている秘訣です。
Surface Pro 2では左右から空気を取り込んで、ヒンジ部分から廃熱するというエアフロー(空気の流れ)を採用していました。
これに対してSurface Pro 3では、ヒンジの左から大量の空気を取り込み、ファンによって各所に空気を送り込むことで四方のスリットから排出して冷却するという特殊な構造になっています。
空気を分散させるために特殊なデザインのファン。円形のヒートシンクも細部まで冷却効率を高めるようなデザイン。
エアフローを可視化することで、最適な状態が探り出されています。
Surface Pro 3が極薄の筐体に高性能CPUを閉じ込めてもフリーズすることなく安定稼働できるのは新開発の冷却システムにあるというわけです。
続いてはSurface Pro 3の大きな特長である、無段階に角度調整できるキックスタンドの話。
モバイル性能を重視するSurface Pro 3では、さまざまな場所に持ち出して使用感を調査。なんと飛行機のエコノミーシートを再現して使い心地を調べたとのこと。
リニアに角度調整できるのは、新設計のヒンジのおかげ。
巨大なサイズのヒンジ模型を作って可動域や耐久性を試験。
この模型の黒い部分が耐久性にとって極めて重要なパーツとのこと。
ヒンジはキックスタンドを動かすときにどの部分にどれだけの圧力がかかるのかを調べて、それにあわせてグリスが塗られています。スムーズさや適度な手応えなど最高の使用感を追求して、部材の調達や製造工場などを探し求めた結果、中国で期待通りの部品を製造できる工場を見つけ出したそうです。
Surface Pro 3は、この新設計のヒンジを採用することで……
最大150度まで、自由な角度に固定できるようになりました。なお、ヒンジの開発にかかった費用は700万ドル(約8億6000万円)とのことです。
途中でクイズが出されました。「Surface Pro 3を作るために『マクラーレン』『ポルシェ』『ランボルギーニ』のいずれのスポーツカーメーカーと提携したでしょうか?」
会場の観客はさまざまな答えを口にしていましたが、正解はポルシェ。塗装の工程をポルシェと共同研究したそうです。
研究に研究を重ねることでできあがったヒンジや……
高品質な塗装によって……
ユーザー体験が向上しているというわけです。
なお、Surface Pro 3は耐衝撃性についても試験済み。落下させたりねじ曲げたり、高温多湿やカバンの中などさまざまな悪条件下でも正常に機能するよう設計されているとのこと。
Surface Pro 3では専用キーボード・タイプカバーも新設計。マグネット部分を折り曲げるようにすることで安定性を上げ、キーボードに角度が付きタイプしやすくしています。
Surfaceシリーズを通じて重要なのがペンツール。
新しいSurfaceペンは筆圧感知こそ256段階に減りましたが、書き心地やバッテリー寿命などを向上させています。
特に、レイテンシーを減らして遅延を防ぎ、視差を極限まで減らしてタッチした部分に正確にペン描写できるようにアルゴリズムが見直されたとのこと。PC本体だけでなくSurfaceペンにも目に見えない細かな改良が加えられているそうです。
・おまけ
Microsoftが細部までこだわり抜いて作られたSurface Pro 3ですが、日本マイクロソフトは2015年6月1日(月)からSurface Pro 3本体とアクセサリーの価格を改定します。Core i7/512GBモデルは3万6000円アップなど、すべてのモデルが値上がりするので欲しい人はそれまでにゲットしておいたほうが良さそうです。
Surface Pro 3 およびアクセサリの価格改定 | News Center Japan
http://news.microsoft.com/ja-jp/2015/05/11/150511-surfacepro3/
・関連記事
「Surface Pro 3」速攻レビュー、世界一薄いIntel Core搭載PCの実力は? - GIGAZINE
Surface Pro 3を生み出すMicrosoftの知られざる研究所「Surface Lab」が公開される - GIGAZINE
「Surface Pro 3」は分解・修理が困難な端末であることがiFixitのレポートで判明 - GIGAZINE
歴代最薄・最軽量の廉価版「Surface 3」が登場、フルバージョンのWindows採用で強力なモバイル性能を発揮 - GIGAZINE
「Surface 3について質問ある?」ということでMicrosoftの開発チームが降臨して質問を受け付け - GIGAZINE
・関連コンテンツ