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チャリティーで寄せられた古着にまつわる「国際的ビジネス」の実態とは?

By epSos .de

恵まれない人のために、もう着なくなった古着を寄付するという活動が世界中で行われています。集められた古着は、必要な人たちの元へと届けられたり、慈善団体が運営する店舗で販売され、運営資金に充てられる……ということが主な目的だったはずが、実際には別の思わぬ行く末をたどるケースも多いとのこと。それはいったいどのようなものなのでしょうか。

BBC News - Where do your old clothes go?
http://www.bbc.com/news/magazine-30227025

人々による寄付で集められた古着の一部がどのような行く末をたどるのか、BBCがショートムービーを制作しています。


世界中で行われるチャリティーのための古着の寄付。主に、恵まれない人に提供したり、慈善団体が販売することで運営資金に充てられることになります。


古着の回収は、チャリティーショップに持ち込まれたり……


街角に設置された、再利用のための衣類回収箱(textile bank)に持ち込まれることもあります。


さらには、一軒ずつ家を回って不要な衣類を集めることも。しかし、集められた古着は数が多すぎるなどの理由で貰い手がなく、使われないまま残されてしまうケースがあるといいます


そんな古着を集めて買い取る、専門の業者が存在しています。業者は重量に応じた代金を支払って、古着を買い付け。


古着をあちこちで買い付けた業者は……


集めた古着を、仕分け工場へと運び込みます。


工場では古着を種類やデザインなどで仕分け。


そして、種類ごとにひとかたまりに束ねます。こうすることで、最初はただの古着の山だったものが、商品価値を持つ衣服の束へと変貌を遂げるわけです。


そんな束を輸出用のコンテナに詰めて……


コンテナ船に乗せて、海外へと輸出。自国の恵まれない人のために提供された古着が、多くの人が知らないうちに海外に出荷される瞬間です。


港に到着した荷物はバラされ、あちこちの街へと運び込まれます。


そして、マーケットで「商品」として販売され、新たな持ち主のもとで役立つことになるのです。


このように、寄付した古着が提供者の意図しない形で海外のマーケットで販売される、という実態が存在しています。とはいえ、これは必ずしも悪い出来事というわけではなく、むしろ廃棄され、埋め立てられる運命にあった不要な古着が別の人の役に立つという、良いエピソードといえる側面も。ここで考えるべきは、その規模にあるといえます。

イギリス政府機関などの援助により設立された非営利団体のWRAP(Waste and Resources Action Programme:廃棄物資源行動計画)がまとめた資料(PDFファイル)によると、不要になった衣類のうち50%はリサイクルされて新しいオーナーのもとで使われるようになるとのこと。その多くは寄付によって提供されたものだそうですが、キングス・カレッジ・ロンドンのAndrew Brooks博士は、「多くの人は、自分が提供した古着はチャリティーショップの店先で売られていると信じています」と語り、実際には提供された古着が第三者の利益のために海外へと輸出されていることに気付いていないことを指摘しています。


イギリスでは毎年、440億ポンド(約7兆8000億円)が衣類の購入に支出されており、平均して全国の1世帯あたり4000ポンド(約71万円)相当の衣類を保有している計算になります。そのうち、30%は全く着られることなく「タンスの肥やし」となっており、毎年1億4000万ポンド(約250億円)相当の衣類が廃棄されているとみられます。


WRAPは、リサイクルに回された衣類のうちじつに70%が輸出され、世界じゅうに広がる「古着ネットワーク」の中で売買されているとみています。国連が統計をとった「UN Comtrade(国連コムトレード)」のデータベースによると、世界で最も多く古着を輸出しているのはアメリカで、その額は6億8700万ドル(約832億円)とのこと。アメリカの輸出した古着を最も多く輸入しているのはカナダで、次いでチリ、グアテマラ、インドなどとなっています。


イギリスはアメリカに次ぐ輸出量をほこり、その額は6億1200万ドル(約741億円)。ポーランドやガーナ、パキスタンへの輸出が多くを占めています。


トップ3の最後を占めたのはドイツ。ポーランドやオランダ、カメルーンへと古着を輸出しており、その総額は5億400万ドル(約610億円)。


4位には韓国がランクイン。3億6400億ドル(約441億円)相当の衣類をカンボジア、マレーシア、ベトナムなど、アジアとアフリカ中心の各国へと輸出。


以下、ランキングは以下のようになっています。

◆5位:オランダ・2億3600万ドル(約285億円)
主な輸出先:ロシア、ウクライナ、カメルーン


◆6位:ベルギー・1億8900万ドル(約229億円)
主な輸出先:カメルーン、ガボン、ロシア


◆7位:カナダ・1億8500万ドル(約224億円)
主な輸出先:ケニア、アンゴラ、タンザニア


◆8位:ポーランド・1億4100万ドル(約170億円)
主な輸出先:ウクライナ、ウガンダ、ケニア


◆8位:イタリア・1億4100万ドル(約170億円)
主な輸出先:チュニジア、ギニア、ニジェール


そして、10位には日本がランクイン。輸出額は120億ドル(約145億円)で、マレーシアへの輸出が最大。これに韓国、フィリピン、カンボジア、パキスタンといった国が続いていました。


このような衣類リサイクル・輸出を行う企業は多く存在していますが、その中でも規模の大きいものがロンドンを拠点にする「LMB Textile Recycling」です。同社では、回収した衣類を手作業で分類し、品質をそろえた上で梱包し、東ヨーロッパやアフリカの各国へと輸出しており、同社を設立したRoss Barry氏は「彼らは安くて手に入れやすい衣類を手にすることができます。ファッション性が高く、しかも長持ちする服を買うことができるのです」と語っています。

LMB Textile Recycling
http://www.lmb.co.uk/


このように、一つのシステムとして成り立っている古着リサイクルの仕組みですが、果たして問題はないのでしょうか?前出のBrooks博士はこの状況に疑問を投げかけています。博士によると、こういったチャリティ目的で集められた古着が安く流通してしまうことで地元の繊維産業がダメージを受け、経済に悪影響が及んでいるとのこと。1980年代から90年代にかけ、アフリカのケニア、マラウィ、モザンビーク、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、スワジランドなど多くの国でこのような問題が起こっています。特にガーナでの影響は顕著で、1975年から2000年の間にかけて繊維産業の雇用が80%も減少したとのこと。

ウガンダのマーケットに持ち込まれた古着の束。仕入れた女性が束をバラしていきます。


所狭しとつり下げられた古着の壁。大量に安く入ってきた古着の影響で地元経済はダメージを負いました。


一方で古着ビジネスにより生活の糧を得ている人々が存在していることも事実で、国際的古着ビジネスの現状にはメリットとデメリットが共存している状況。貧困と不正を根絶するための活動を行っているオックスファムにかつて所属し、現在はセネガルでチャリティ活動に携わるIan Falkingham氏は「衣料業者とチャリティ活動の間の透明性が重要です」と語っています。

オックスファムをはじめとする団体は、古着ビジネスを行っている業者への依存を避けるために、独自のリサイクルビジネスの構築を進めており、Falkingham氏は「古着ビジネスのモデルから脱却するために非常に努力しています」と語ります。オックスファムには毎年1万1000トンにも及ぶ衣類が寄付されており、その27%にあたる3000トンがオックスファムの店舗で販売され、残りの約8000トンのうち1000トンは廃棄、そして5600トンが東ヨーロッパや西アフリカへと送られているとのこと。


Falkingham氏は、寄付で集まった古着をオックスファムの店舗で販売することに最も重点を置いて活動を行っています。その結果、提供者とのつながりを築き上げることができ、より良い寄付活動へとつながることになるのですが、一方では売れずに残った衣類をお金に換えることの重要さも語っています。オックスファムでは、セネガル国内にFrip Ethiqueという社会事業を立ち上げ、古着を適正な価格で流通させる取り組みを進めています。

地域に雇用を生みだし、地元にメリットを与えるといえるオックスファムの活動ですが、Brooks博士はこれを短期的には「実利的な解決策」と評価しながらも、巨大な古着ビジネスの前ではささいな取り組みにとどまっており、人々が貧困からはい上がるための手段を否定するものだ、とする考えを示しています。


このように、寄付で集められた古着をめぐってはさまざまな思惑が渦巻いているというのが世界の現状といえます。善意で集まった古着は、提供者が意図する形で恵まれない人々に提供され、団体の活動資金に形を変える一方で、別の第三者によって買い付けられ、輸出されることでビジネスに生まれかわっているという実態が存在。しかし、そんなビジネスですら、貧困にあえぐ国にとっては手頃な衣類供給の手段の一つであり、一定の仕事を生みだす原動力になっているのも一方では事実といえます。

善意としてのチャリティ活動や寄付は疑いの余地なく素晴らしいものであり、取り組みは続けるべきものといえますが、一方ではこのような現実が横たわっているということを知るということも、チャリティ活動の意味を深めるうえで重要なことと言えるのかもしれません。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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