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USB端子とLightning端子を搭載しiPhoneの容量を最大64GB追加する「iXpand フラッシュドライブ」開発の裏側について聞いてきました


iPhoneやiPadなどのiOS端末を使っていると「外部とデータをローカルでやりとりできる方法はないものか」と思うことがありますが、2015年1月28日にサンディスクからUSB端子とLightning端子を搭載したフラッシュドライブ「iXpand フラッシュドライブ」が発売されました。容量は16GB・32GB・64GBの3種類で、「なぜ今まで出なかったのか?」というようなアイテムになっていたので、開発の裏側についてアレコレ聞いてみました。

SanDisk iXpand Flash Drive for iPhone and iPad
http://www.sandisk.com/products/mobile/ixpand/

サンディスクのオフィスに到着。


写真の男性がサンディスクコーポレーションリテール製品マーケティング担当バイスプレジデントのディネッシュ・バハールさんです。


まずはiXpand フラッシュドライブが開発された経緯から。現在、毎日SNSには14億枚の写真がアップロードされており、撮影されるデジタル画像のうち、スマートフォンやタブレットによるものが全体の4分の3近くを占めています。さらに2020年にはモバイル機器の数が750億台にまで増加し、デジタルデータの規模は4万エクサバイト(400億テラバイト)にまでなると考えられています。


2018年までのスマートフォン全体の平均容量増加率は200%になるものと見られており、プレミアムスマートフォンの平均容量は50GB、microSDスロットを搭載したスマートフォンの割合は78%にまで増加するとのこと。つまり、今後モバイル機器によって作られるコンテンツの量はどんどん増えていくわけです。


また「コンテンツを安全または適切にバックアップしたい」「メモリ不足を解消したい」ということで、82%のユーザーが「コンテンツの転送」を重要視しています。これらの理由から、まずAndroid向けのウルトラ デュアル USB ドライブを開発・販売したところ、iPhoneユーザーから「iPhone用にも作って欲しい」という声が上がったため、iXpand フラッシュドライブが開発されるに至ったそうです。


iXpandはiPhone・iPad・Mac・PC間のデータ転送を容易にするアイテム。デバイス本体の容量不足を解決し、iOSではネイティブで再生できない形式の動画でも再生することができるようになります。


iXpand フラッシュドライブや専用アプリの詳しい使い方は以下の記事から確認可能です。

iPhoneやPCに挿せば最大64GBの容量を追加できるサンディスク「iXpand フラッシュドライブ」を実際に使ってみたよレビュー - GIGAZINE



iXpand フラッシュドライブのスペックはこんな感じ。容量は16GB・32GB・64GBの3種類で、LightningコネクタおよびiOS 7.1以降を搭載したiPhoneおよびiPod、Mac OS Xバージョン10.5以降・Windows XP/7/8以降の各デバイスに互換性があります。市場想定価格は16GBが1万円前後、32GBが1万4000円前後、64GBが2万円前後を想定しており、2年間の保証付き。もちろんAppleのMFiライセンスを受けています。なお、アメリカ販売時点でiXpandは16GB・59.99ドル(約7000円)、Android端末向けの「ウルトラ デュアル USB ドライブ 3.0」が16GB・22.99ドル(約2700円)でiXpandの方が高めになっていますが、これはAppleに対してライセンス料が発生しているため。


なぜ容量がこの3種類なのか、というと、ユーザーには大きく分けて2種類の人がいるため。16GB・32GBのメモリを使用するユーザーは主要なストレージとしてMacやPCを持っており、iXpandを「データ転送目的で使う」という人です。いったん転送してしまうと、iXpand内に映像などを残す必要がないのでそこまで大容量でなくてもいいわけです。一方で64GBのメモリが必要なユーザーは主要なマシンがなくバックアップを取る必要のある人。128GBなど、それ以上の容量のものは作らないのですか?と尋ねたところ、市場にニーズを理解した上で実現したいと考えているとのこと。


実際にデモンストレーションをしてくれるバハールさん。壁に映っているのがアプリの画面で、開発には1年の月日を費やしてきたそうです。クラウドファンディングプラットフォームのKickstarterでは既に類似の製品「iStick」が製品化されていますが、なぜ今この時期にiXpandが発売されたのかというと、「マーケットの成熟」という問題と、「技術的にもiOSデバイス用のメモリ開発が非常に困難だった」という問題があったとのこと。最終的に多くの開発者が睡眠不足に陥りつつ何とか開発されたのがiXpandだったというわけです。


Android向けのウルトラ デュアル USB ドライブとは全くデザインが異なるのですが、これはまず、iXpandはウルトラ デュアル USB ドライブと違ってバッテリーを搭載しているため。なので、iPad・iPhoneで使用中にデバイスの電力が消費されないようになっています。


Lightningケーブルはラバー製で柔軟性があるので、メモリ本体の幅はあるのですが、こんな感じでiPhoneにケースをつけたままでも使用可能になっています。


そのほか、見栄えのよさ、さわり心地のよさを追求したデザインになっており、既に販売されている「iStick」が「いずれかの端子が必ず外に出てしまう設計で使いにくい」という問題があったのに対して、iXpandはキャップがついていることなど、何よりも使い勝手のよさに注目したデザインになっているとのこと。アプリもiPhoneユーザーに特化したUIで簡単に使えるようになっており、アプリのユーザーエクスペリエンスのよさには特に誇りを持っているそうです。


続いて、ウルトラ デュアル USB ドライブ 3.0の話に。これは既に販売されているウルトラ デュアル USB ドライブを改良し、マイクロUSBと高速USB3.0コネクターを搭載したもので、OTG対応AndroidデバイスPC間での超高速ファイル転送を可能にします。


実物はこんな感じ。バッテリーを搭載しておらずiXpandに比べるとかなり小さいのですが……


USB端子の長さが7mmと長めに調整してあり、ケースをつけたままのAndroid端末でも無理なく使用できるようになっています。なお、iXpandは専用のアプリがありますが、これはiOSユーザーがAndroidユーザーとは別のニーズや使い方を持っているからで、Android端末の場合は専用アプリではなくSanDisk Memory Zoneという既存のアプリから操作を行えます。


ウルトラ デュアル USB ドライブ 3.0の使用感などは以下のレビュー記事から確認可能です。

PCやスマホに直接挿して使える最大64GBのサンディスク「ウルトラ デュアル USB ドライブ 3.0」レビュー - GIGAZINE



スペックなどはこんな感じ。容量は16GB・32GB・64GBの3種類で、USB 3.0を採用しているため速度は最大130MB/秒。主要なAndroidデバイスとの互換性があり、2015年の4月に発売予定。保証は5年間で、価格は未定です。


これによってAndroidデバイスからPC・Mac・テレビなどへのデータ転送が可能になるわけです。


なお、速度が130MB/秒となっているのは価格面を検討した結果だそうで、速度を速くすれば価格がつり上がってしまうため、今回は130MB/秒という速度に設定しているとのこと。Sandisk USBメモリ 64GB Extreme USB3.0と同じぐらいの速さにするとどのくらいのコストがかかるのですか?と尋ねてみたところ、笑いながら「ちょっと答えられませんね」とのこと。しかしiXpandはUSB 2.0となっているので、ウルトラ デュアル USB ドライブ 3.0はiXpandより高速で転送できるそうです。


開発について伺ってみたところ、「2つの製品どちらについても開発はエキサイティングなものでしたが、ウルトラ デュアル USB ドライブ 3.0に関しては前のバージョンが存在しました。既にベストセラー製品だったため、製品の改良には速度の向上・コネクタの長さの調整・見栄えの追求を行えばよかったのですが、iXpandの場合は一からの開発なので、より困難で長く複雑だった」とのこと。ユーザーのニーズを理解し、自動同期の機能など、ユーザーの問題を解決するためにどういう機能を搭載すればいいのか、どうやればユーザーが使いやすくなるのかを考える必要があった、とディネッシュさん。


実際にiXpand専用のアプリを使ってみたところ、アプリ内で画像の拡大縮小ができない点が気になっていたのですが、それらの点は今後フィードバックを受けて改良されることによって変わっていく可能性があるとのこと。サンディスクは世界のメモリ市場のリーダーとして「開発する製品がブランドの名前にふさわしいか」を常に意識しているため、今後もユーザーのニーズに沿った開発・改良が続けられていくと、ディネッシュさんは語りました。

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in 取材,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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