サイエンス

画期的な新型抗生物質「Teixobactin」の有効性をマウスで実証、25年以上の戦いに終止符か

By NIAID

生命に危険をもたらす感染症を引き起こすメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、多くの抗生物質に耐性を示す多剤耐性菌です。25年以上にわたって毎年数十万人の命を奪っている多剤耐性菌に有効な抗生物質は見つかっていませんでしたが、MRSAを含む薬物耐性菌に対処できうる新型抗生物質「Teixobactin(テキソバクチン/テイクソバクチン)」の研究結果がネイチャー誌に発表されました。

Antibiotic breakthrough could turn the tables in battle against superbugs | Science | The Guardian
http://www.theguardian.com/science/2015/jan/07/antibiotic-drug-resistance-teixobactin


Antibiotic Pulled From Dirt Ends 25-Year Drug Drought - Bloomberg
http://www.bloomberg.com/news/2015-01-07/antibiotic-breakthrough-ends-25-year-discovery-drought.html


ボン大学とノースイースタン大学の共同研究チームは、新型抗生物質「Teixobactin」の有効性を実証する研究結果を発表しました。研究リーダーでAntimicrobial Discovery Center(抗生剤発見センター)のキム・ルイス教授は、「Teixobactinは並外れた殺菌能力を持っており、速やかに感染を抑えることができます」と話しています。薬物抵抗性に関しても、細菌がTeixobactinに対して耐性を持つまでには30年以上はかかるとのこと。

マウスを使った実験では、生命を脅かす血液病や肺感染症の原因となる黄色ブドウ球菌肺炎レンサ球菌を除去することに成功。さらに心臓・前立腺・尿路・腹部に感染する腸球菌にも有効であることがわかりました。

Teixobactinの欠点はMRSA・レンサ球菌・結核菌のような外側に細胞壁を持たないグラム陽性菌のみに有効である点です。抗生物質に耐性を持つ病原体のクレブシエラ(肺炎桿菌)・大腸菌・シュードモナス属のようなグラム陰性菌に対して有効ではないとのことですが、研究者たちはTeixobactinをグラム陰性菌に対しても有効化できるよう研究に取り組んでいます。


WHOは2014年の報告書の中で薬物耐性菌の危険性を強調しており、世界は「抗生物質に取り組む時代に突入している」と述べています。イギリス政府の調査報告書によると、薬物耐性菌は年間70万人の命を奪っており、新型の抗生物質がなければ2050年までにさらに1000万人が死亡することが予測されています。Teixobactinの効果はマウスの実験で証明されたばかりで、人体への安全性を確認する臨床試験は2015年から2年以内に行われる予定です。薬剤としての実用化までは5~6年がかかる見通しです。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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