「添い寝」や「キス」など、ペットとのスキンシップが死を招くこともある
ペットを飼うことにより孤独感が解消されたり外に出て運動する機会が増えたりするといった間接的な健康効果にくわえ、ペットとのスキンシップは血圧やコレステロールを下げる効果があると言われ、心臓病患者や高齢者などに対するペットの医療価値は30年以上前から研究されてきました。
しかし、ペットが飼い主の健康を害する場合もあります。寄生虫からペストまで、ペットとのスキンシップにより飼い主が人獣共通感染症に感染することもあり、中には死亡例もあるそうです。特に、ペットとの添い寝やキス、顔や体をペロリとなめられたことによる感染が多く、「飼い主は少なくともベッドからはペットを閉め出すべきだ」と専門家は警告しています。
詳細は以下から。Letting Sleeping Dogs Lie in Your Bed Can Kill You
「ペットは家族の一員」という考えの普及とともにペットと一緒のベッドで寝る習慣のある飼い主も増えていて、これは飼い主の健康にとって深刻なリスクとなることもあるそうです。人獣共通感染症を専門とするカリフォルニア大学デービス校獣医学部のBruno Chomel教授らは、アメリカ疾病予防管理センター発行のEmerging Infectious Diseases誌の来月号に掲載予定の論文で警告しています。
「ペットと一緒に寝るのはごく一般的なことになりつつありますが、それに伴うリスクもあります。頻繁に起きることではありませんが、特に幼い子どもや免疫不全の人にとっては深刻な事態ともなり得るのです。わたしたちは人々に注意を喚起したいと考えました」とChomel教授は語っています。
調査によると、アメリカでは犬の飼い主の53%は犬を「家族の一員」と考えていて、そのうち56%は犬と添い寝をする習慣があるそうです。「添い寝」する犬のは小型犬だけでなく、41%は中型犬、約30%は大型犬とのこと。また、ネコは飼い主の数、添い寝をする飼い主の割合ともに犬を上回っているとのことで、犬が媒介した病気よりネコが媒介したものの方が症例は多いそうです。
ネコによる人獣共通感染症の代表的なものとして、Bartonella henselaeという菌による猫ひっかき病があります。アメリカでは年に2万人以上が感染すると言われ、感染者の多くはネコにひっかかれたりかまれたりなめられたりした子どもですが、ネコが調理台や食卓の上を歩いたあと消毒せずに調理や食事をしたというだけで感染することもあるそうです。リンパ節が腫れて痛むほか、発熱を伴ったり、時には肝臓・腎臓・脾臓(ひぞう)に致命的な傷害をもたらす場合もあります。
ペットと添い寝することは飼い主に精神的な安らぎをもたらす反面、感染症のリスクも伴います。近年ではアリゾナ州の9歳の少年がノミに寄生されたネコと添い寝したことによりペストに感染したという例が報告されているほか、犬との添い寝により何度も繰り返しMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に感染したカリフォルニア州の40代の夫婦など、事例はつきません。この夫婦の飼い犬は夜夫婦のベッドにもぐり込んで寝る習慣があり、飼い主の顔を頻繁になめていたそうです。
ペットと一緒に眠ることは、ペットになめられる回数を増やすことにつながります。ケガをしている時などは特に、ペットとの添い寝を避けたほうがよさそうです。起きている間にペットに傷口をなめられたらすぐに洗って消毒するという人でも、寝ている間気付かないうちに傷口をなめられるというのは非常に危険なことかもしれません。一緒に寝ているネコに足の裏と足指の傷口をなめられたのち敗血性ショックと腎不全で死亡した女性や、手のひらの擦り傷をジャーマンシェパードの子犬になめられたのち感染症により死亡した44歳の男性の例なども報告されています。
ペットとの直接の接触のほか、ペットフードが人間の病気の原因となることもあるようです。子どもたちが汚染された肉を含むドライペットフードを触ったあと手を口に入れたり、ペットフードそのものを自分で食べたりしたことにより、サルモネラ感染症が大量発生したというケースも報告されています。
by Len not Lenny
ペットとの親密な関係により病気にかかるリスクは、現実に存在します。しかし、ペットから人間に感染する病気のほとんどは、獣医師による定期的な検診により発見し除去することができます。ペットを健康に保つことにより、飼い主の健康も守られるというわけです。Chomel教授らは、ペットから飼い主への感染を防ぐためにできることとして、以下のような対策を挙げています。
◆飼い主、特に幼い子どもや免疫不全者は、ペットと一緒に寝たり習慣的にキスをすることは控えるべきです。
◆ペットになめられた部位はすぐに水と石けんで洗うようにしましょう。傷口がある場合は特に即刻洗うべきです。
◆定期的に駆虫し、獣医師の検診を受け、ペットに寄生虫がいない状態を保ちましょう。特にノミには注意を払うべきです。
◆子猫や子犬には、生後数週間以内にサナダムシや吸虫などの寄生虫の駆虫薬を投与しましょう。可能なら猫や犬が生まれる前、妊娠後期の母親に投与するのが理想的です。これにより、人間に感染し幼い子どもでは視覚障害の原因ともなるトキソカラ症を防ぐことができます。
時に死に至る場合もあるペットからの感染症ですが、飼い主なら誰でも経験するというわけではなく、ペットオーナー全体から見ると重篤な例はごくわずかなものです。上に挙げられたアドバイスを参考に予防策をとり、ペットの健康と衛生を心がければ、ペットと暮らすことによる健康上の便益の方が感染症のリスクをはるかに上回ると考えられます。
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