6年間無人の家でロボットがTVを見たり冷蔵庫を開けたり人間のように行動する「ロボハウスプロジェクト」
By Photo Editing Services Tucia.com
人間が家の中で暮らすことで、冷蔵庫やシャワーの使用による電力・水道などの消費はもちろんのこと、人間から発せられる汗や、濡れた洗濯物によって目に見えない湿度の変動など、さまざまな変化が起こります。そんな居住空間における変化を計測するため、ロボットがまるで人間が住んでいるかのようなプログラムで動き続けて、人間が生活した時と同様のデータを得ることができる「ロボハウスプロジェクト(キャンベル・クリーク・プロジェクト)」が6年間にわたって行われました。
Robohouse Project Pumped Simulated Sweat And Breath Into Empty Homes
http://www.popsci.com/robohouse-project-pumped-simulated-sweat-and-breath-empty-homes
2009年から2014年にかけて、アメリカ・テネシー州のキャンベル・クリークの町で3軒の2階建て家屋にロボットを住まわせるというプロジェクトが行われました。テネシー川流域開発公社(TVA)、電力研究学会(EPRI)、オークリッジ国立研究所(ORNL)の3つの組織による共同プロジェクトとなっており、エネルギー効率に優れた冷蔵庫・湯沸し器・洗濯機・断熱材などの新建築および新設備の現実的なデータ分析が目的。
当初は実際にテスターとして3世帯の家族に居住してもらい、6年間の計測データを比較することで光熱費や資源配分状況の平均を出す予定でしたが、「子どもが進学のため家を出る」「両親と同居を始める」といった、6年間の間に生じる人為的要因によって室内温度などのデータが左右されてしまうため、ロボハウスプロジェクトを始めるに至ったとのこと。ORNLの建築技術研究所のパトリック・ヒューズ所長は「ロボットを選んだ理由は3軒の家屋から同一条件での比較が可能になり、テストに効果的なエネルギー使用量を設定できるからです」と話しています。
3軒のロボハウスの中のロボットたちは、「冷蔵庫のドアを開ける時間」「シャワーの時間」「TVをつけている時間」など、平均的なアメリカ人のプロフィールデータに基づいた行動をインプットされます。無人の家でロボットたちは、朝になると洗面所の電気を点灯し、空のバスタブにシャワーを流し、定期的に冷蔵庫を開け閉めしたり、食器洗い機や洗濯機やTVを使用したり、就寝時間には消灯を行います。ロボットと言っても人間のように行動する二足歩行型ロボットではなく、使用されたのは以下のようなバケツ型のロボット。
バケツの中には1日に放出する分量の水分が貯水されており、冷蔵庫の開け閉めなどはロボットアームで行っています。移動機能はなく、洗い終わった洗濯物を乾燥機に運ぶことができないため、洗濯機と乾燥機の中にあらかじめ必要量のタオルを仕込んでおり、乾燥機の中には霧吹き機を内蔵することで日常的な洗濯の状況を作り出して正確なデータを計測可能にしています。冷蔵庫の中に食料品は入っていませんが、水を入れたコンテナを温度調節することで実際的な使用状況を作り出しているわけです。
これらの執念とも呼べる徹底されたエミュレーション・システムによって、人間にとって最も快適な建築設備を分析することができるわけで、3軒の家屋で行ったプロジェクトでは正確なデータを計測することに成功。ORNLの研究者兼ロボハウスプロジェクトのプログラムマネージャーのロデリック・ジャクソン氏は「家の中に人間を入れないことが、より優れた人間の生活を表現できるのです」と話しています。プロジェクトは2014年の10月で終了しており、テストに使われた3軒の家は売りに出され、現在はロボットではなく人間の家族が住んでいるとのことです。
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