人間に第3・第4の腕を作りだすロボット・アームの開発が進行中
炭素繊維製のターミネーターっぽい義手や3Dプリンター製の義手など、失った腕を補うロボットアームが考案されていますが、「腕が足りない時用の腕」として作られたのが、人間に3番目と4番目の腕を追加する「Supernumerary Robotic Limbs(SRL)」です。
SRL Concept and Design | d'Arbeloff Laboratory
http://darbelofflab.mit.edu/?q=node/22
Here's That Extra Pair of Robot Arms You've Always Wanted - IEEE Spectrum
http://spectrum.ieee.org/automaton/robotics/industrial-robots/heres-that-extra-pair-of-robot-arms-youve-always-wanted
動くロボットアームの様子は以下のムービーから確認可能。
MIT Robot on the Shoulder Demo - YouTube
画面上には1人の男性の姿。
かがんで、何かを取り出します。
どうやらプレートを張り付けていく様子。黒いプレートを頭上に掲げると……
後ろからロボットアームがにゅっと伸びてきました。
プレートを支えるお手伝い。
男性がドライバーでネジを締めている間、ロボットアームがしっかりとプレートの真ん中を支えています。
完了したらロボットアームがプレートから離れました。
これはマサチューセッツ工科大学(MIT)のアルベロフ研究室のFederico PariettiさんやHarry Asadaさんらが開発したもの。正式名称はSupernumerary Robotic Limbs(SRL)と言い、研究初期段階で描かれたコンセプトデザインはこんな感じでした。
SRLはいくつかプロトタイプが作られており、上記のムービーに登場するのは香港で行われているICRA2014で公開された最新のもので、腕が肩から伸びるタイプ。頭上で行う作業を手伝ってくれたり、両手で荷物を持ち「手が足りない!」という時に扉を開けてくれたりします。
アームは付け替え可能で重さは4.5kg。3軸のジャイロと加速度計によって3次元の角速度と加速度を検出する慣性計測装置をユーザーが腕につけることで、SRLはユーザーの動きを予測し、アームの動きを決定します。そのため現在のプロトタイプではユーザーの動きに合わせてアームが動くようになっていますが、研究チームはアームを自由に動かせるようにするため現在プログラミング中とのこと。
ユーザーの腕の動きに合わせてアームが動く様子は以下のムービーから確認できます。
MIT Robot on the Shoulder Control - YouTube
両手を横に伸ばすと、アームも横に伸びます。
腕を曲げたり……
少し上げてから再び広げる、という動作もトラッキング。
一方、腰から腕が伸びるタイプもあり、これは比較的低い位置で行う作業で使えそう。このロボットアームはベルトを使ってユーザーの背後に取り付ける仕組みで、本体はバックパックユニットとロボットアームから構成されており、ユニットはアクチュエータと共にユーザーの腰で固定されます。
この研究は航空宇宙機器を開発するボーイングがスポンサーについたもの。というのも、航空機の製造では重い物を扱う作業が多く、技術者たちがケガを負うということが多発しているためです。腰に設置するタイプのSRLは3番目・4番目の腕として使用できるだけではなく、足場が悪い時の3番目・4番目の足としても使用可能。例えば以下の写真では男性がSRLを使って機体を支えながらドリルで穴を開けています。
以下はSRLが3番目・4番目の足として、ユーザーの体重を支えている図。
なぜ外骨格ではなくアームなのか?というと、体全体を包む外骨格よりもアームだけの方が自由度が高いため。研究が進めば航空機製作の効率性があがることに加え、スキーをしながら拳で戦う「スキー・ボクシング」といった新しい分野の扉を開くこともできそうです。
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