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生誕60周年を迎えた「ライカMシステム」の歴代モデルがわかるタイムライン


コンパクトなボディに高性能な機構を内蔵し、独特の空気感を持つ作風や存在感などからプロカメラマンの使用者も多く、アマチュア垂涎のブランドでもある「ライカMシステム」は、1954年のM3型機の誕生から60周年を迎えています。そんなMシステムの歴史をわかりやすく振り返ったタイムラインが公開されています。

Leica M Timeline ・ I shoot film.
http://www.ishootfilm.org/timelines/leica-m


◆Leica M3(1954年~1966年)
35mmフィルムを使用するレンジファインダー型カメラの名器の一つと呼ばれるM3は1954年(昭和29年)に発表されたモデルで、当時の日本国内での販売価格は29万円という超がつく高級機。レンズマウントがそれまでのねじ込み式にかわってバヨネットマウント(ライカMマウント)が採用されたモデルで、レンジファインダー型の宿命ともいえる視差(パララックス)が非常に少ないなどの特徴を備えるなどで人気を博し、約13年間のモデルライフで22万台以上が生産されました。


◆Leica M2(1957年~1967年)
M3のデビューからおよそ3年後に登場したM2は、位置づけとしてはM3の簡素版として企画されたモデル。その特性から、M3の広角版として使用されることも多かったとのこと。また、オリジナルのM3では装着できなかった引き金式迅速フィルム巻き上げ装置の「ライカビットMP」を装着できるもの特徴。M3のヒットに比べ、こちらのモデルは約11年で8万5000台余りの生産にとどまっています。


ちなみに、写真家のアルベルト・コルダがアルゼンチンの革命家、チェ・ゲバラの有名な肖像写真「英雄的ゲリラ」を撮影したのもこのモデル。

By Wikipedia

◆Leica M4(1967年~1975年)
M3・M2の直系の後継機となるM4は、装着されたレンズに応じて自動で35mm、50mm、90mm、135mmのファインダー枠を切り替える仕様を踏襲。フィルム交換時に裏ぶたを開くと自動でフィルムカウンターがリセットされてゼロに戻る機構が搭載されています。また、写真では見えにくいのですが、本体を構えた際の左手部分にあるフィルム巻き戻しクランクは利便性のために水平から斜めに変更されています。モデルの生産は1972年にいったん終了するものの、後継となったM5が人気を博さなかったこともあり、ライカ創立50周年となる1975年に再生産されています。また、1977年には改良版となる新モデル「M4-2」がデビューすることになります。


◆Leica M5(1971年~1975年)
1971年に登場したM5はそれまでの端正なテイストとは異なるデザインを採用し、ボディは先代よりも大きく・重く変化。そのためか、日本では「弁当箱」などと称されて不人気モデルとなりました。このモデルでは、レンズを通った後の光を測定するTTL露出計が採用されているほか、露出メーターがファインダーごしに確認できる機構を備えていました。


◆Leica M4-2(1977年~1980年)
前述のように肥大化したM5の人気は芳しくなく、同社が想定していた実績にはおよばない状況が発生。そのためライカは1975年に50周年アニバーサリーモデルとしてM4を一時的に復活させた後、1977年には改良版となるM4-2を発表しました。モデル名とボディは踏襲するものの、各部は見直しが行われ、生産工程もアップデートされてコストダウンが行われています。このモデルからアクセサリーシューにホットシューが採用され、フィルム巻き上げ機構にモーター式のライカワインダーM4-2が使えるようになっている一方で、セルフタイマー機能が廃止されています。


◆Leica M4-P(1981年~1987年)
M4、M4-2に続き、M4シリーズとしては3代目のメジャーアップデートとなる「M4-P」が1981年にデビュー。従来の35mm、50mm、90mm、135mmに加えて28mm、75mmレンズ用のファインダー枠が追加されていますが、「メガネをかけた場合に見にくい」という批判的な意見も出ました。


◆Leica M6(1984年~1998年)
不調だったM5にかわってM4シリーズが復活という流れを受け継いでデビューしたM6は、不評だったM5のデザインテイストを捨てて新型モデルにもかかわらずM4シリーズのデザインを踏襲。しかし中身は最新の技術が搭載されているという、いわば「M4の正統進化版」とも呼べるモデル。従来の真ちゅう製ボディにかわってマグネシウム合金のダイキャストボディを採用して軽量化が行われましたが、その軽い使用感に否定的なユーザーも存在していました。なお、次期モデルとなる「M7」からは露出調整を自動で行うAE機能が搭載されており、M6シリーズは最後のマニュアル露出モデルとなっています。

By Andrea Caligaris

◆Leica M6 TTL(1998年~2002年)
M6 TTLは前M6のマイナーモデル版と位置づけられるモデルで、これと区別するために初期のM6は「M6クラッシック」と呼ばれることもあります。測光した結果に応じて自動でストロボ光量を調整するTTLフラッシュに対応したモデル。また、これと前後してメーカー名が変更されたため、ロゴの表記が「Leitz(ライツ)」から「Leica」に変更されており、前後期モデルを見分ける上で参考にするポイントの一つとなっています。


◆Leica M7(2002年)
M7では中身が大きく変化し、Mシステムで初の電子シャッターが採用され、絞り優先の自動露出が搭載されたモデル。にもかかわらず、シャッターには従来からの布製シャッターを持つという特徴的な機構を備えています。シャッターボタンは2段階式となっており、軽く押した1段階目で露出を固定し、さらに押し込むことでシャッターが下りる仕組みになっています。


◆Leica MP(2003年3月)
1世代前のM6をベースに、本体ノブのデザインをM3仕立てにしたモデル。フィルム送りレバーやファインダー周りの形状が変更されています。モデル名の「MP」は「Mechanical Perfection」の頭文字をとったもので、機構的に完成したM3を意味しているようです。


◆Leica M8(2006年9月~2009年9月)
M7で電子技術が本格的に採用されたMシステムのカメラですが、M8になりついにデジタルカメラの世界へ足を踏み入れることになりました。イメージセンサーには18ミリ×27ミリ(2:3 2624×3936ピクセル)の1030万画素CCD「Kodak KAF10500」が採用されています。デジタルカメラでありながら、レンジファインダー式が継続されているのが特徴といえそう。ボディは高力マグネシウム合金が用いられ、トップとベース部分は真ちゅう削り出しとなっています。初のデジタルモデルということもあってか、画質に課題が存在していたのが残念なモデルで、特に赤外光に対する感度が高すぎるために黒色の対象物が紫色に写ってしまう特性を持っていました。また、このモデルからはシャッターが布製から金属製に変更されています。


◆Leica M8.2 (2008年9月~2009年9月)
M8のバージョンアップともいえるモデルで、シャッター音の静粛化対策が取られたモデル。その影響を受け、最高シャッタースピードは8000分の1から4000分の1へと低下しています。また、ボディ色が黒色のモデルは従来のメッキ仕上げから黒色塗装へと変更されていました。


◆Leica M9(2009年9月~2013年3月)
イメージセンサーに1850万画素・35mmフルサイズCCDを採用したM9では、従来のMマウントレンズが再び使用できるようになり、過去のレンズ資産を流用できるようになりました。当時としては世界最小のフルサイズCCD搭載モデルとなっていました。


◆Leica M9-P(2011年6月~2013年3月)
M9の高耐久性バージョンとなるM9-Pでは、液晶カバーガラスがサファイアガラスに変更されているほか、赤いロゴマークとボディ前面の「M9」のロゴが省略され、カバー上部に「Leica」のロゴが配置されるなどのデザイン変更が行われています。


◆Leica M Monochrom(2012年5月)
35mmフルサイズセンサーを搭載するモノクローム撮影専用デジタルカメラであるMモノクロームは、センサー部にカラーフィルターを持たないモデル。そのためISOの最低値が320と、M9の160よりも1ステップ高く設定されています。また、よりダイレクトに光を取り込むことで、シャープな撮像を実現しているのも特徴となっています。


◆Leica M-E(2012年9月)
M9をベースにUSB端子とファインダーのフレームセレクタレバーを省略し、よりシンプルさを強調したモデル。Mシステムでは最も安価なラインナップとなっているとはいえ、その価格はゆうに60万円を超える高級機であることに変わりはありません。


◆Leica M(2012年9月)
M9の後継機となる「M」は2400万画素の35mmフルサイズCCDを搭載したモデルで、同シリーズで初のムービー撮影対応モデルとなっています。


◆Leica M-P(2014年8月)
「M」に比べて2倍となる2GBのRAM容量を備えたモデルで、連続撮影能力が向上したモデル。高い耐久性やディティールにこだわった品質は従来と変わりありません。


◆Leica M-A(2014年9月)
デジタルカメラ全盛の時代に投入されたM-Aは、フィルムを使って撮影する機械式レンジファインダーカメラの最高峰と呼べるモデル。液晶モニターはもちろん露出計すら搭載しておらず、バッテリーなしでも撮影が可能というカメラの原点ともいえる構造ですが、そこには100年にわたって培われてきたライカの技術が投入され尽くしているとのこと。


◆Leica M Edition 60(2014年9月)
ライカMシステム60周年を記念して発表された「M Edition 60」は、デジタルカメラでありながら液晶モニタを搭載せず、シャッタースピード、絞り、フォーカシング、ISO感度など写真撮影に必要な最低限の機能だけに集中することを意図した世界初のデジタルカメラとなっています。まるでフィルム時代のカメラのように撮影にのみ集中できるモデルで、撮影画像はRAW画像データとしてDNG形式でのみ保存されるという完全に振り切ったモデル。


背面の液晶パネルが廃された代わりに、回転式のISO設定ダイヤルが配置されています。


60年の歴史を通して変わらない哲学と、時代に合わせて変化する姿が共存するライカMシステムの世界観となっていました。「なぜライカはこんなに高いのか?」という質問に対しては「それはライカだから」という答えが返ってくるほど神格化されたこのブランドから、今後もどのようなアイデアの詰まったモデルが出るのか興味がそそられそうです。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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