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メモリ価格が約8倍に高騰したのはなぜなのか?Samsung・SK hynix・Micronの価格操作疑惑を巡る訴訟が始まる


Samsung Electronics・SK hynix・Micron Technologyの3社が従来型DRAMの供給を協調して制限し、価格を人為的につり上げたとする反トラスト訴訟がアメリカで始まりました。原告側は「AI需要の急増だけではこれだけの価格上昇を説明できない」と主張しており、その鍵となる3社のこれまでの動向をPCハードウェア系メディアのGamers Nexusが解説しています。

The DRAM Crisis: 600% Price Increases by Micron, SK Hynix, & Samsung - YouTube


DRAMは、スマートフォンやPC、サーバーなどが動作中のデータを一時的に保持するためのメモリです。中でも今回の訴訟が対象とする「従来型DRAM」は、DDR4・DDR5・LPDDR・GDDRなどの業界規格に沿って作られた製品を指し、AIアクセラレーター向けの高帯域幅メモリ(HBM)は除かれます。

以下は1994~2022年におけるメーカー別のDRAM市場シェアの推移を示したグラフ。Samsung・SK hynix・Micronの3社で世界のDRAM売上高の90%以上を占めています。


2026年6月25日、14人の消費者とPC関連事業を営む3社が、Samsung・SK hynix・Micronによる供給制限はシャーマン反トラスト法第1条などに違反するとして、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所に訴状(PDFファイル)を提出しました。

従来型DRAMの契約価格は2025年第3四半期に前年同期比で171.8%上昇し、2025年第4四半期に前四半期比でさらに50%、2026年第1四半期に前四半期比でさらに93~98%上昇しました。訴状では各期間の契約価格の上昇率を順に反映すると2024年第3四半期からの上昇率は約697%、価格は約7.97倍に達したとされており、一般消費者向けDRAMの小売価格についても100~500%上昇したと原告側は主張しています。なお、訴状では約697%の価格上昇が「供給拡大を促す最も強力なシグナル」と表現されています。


原告側が「共謀の始まり」だと位置づけているのは、DRAMが供給過剰となって価格が下落していた2022年後半です。SK hynixは2022年10月に2023年の設備投資を前年比で50%以上減らす方針を発表し、Micronも同年11月にDRAMとNANDのウエハー投入量を約20%削減。Samsungは当初減産を見送っていましたが、2023年4月にメモリ生産を大幅に減らすと発表しました。

訴状が特に問題視しているのはSamsungの動きです。Samsungは過去の市況悪化時に生産と投資を維持し、競合他社から市場シェアを奪う戦略を取っていました。2019年の不況時にも減産を拒んでいたため、今回はSK hynixやMicronの減産を利用して攻勢に出るのではなく、自らも減産に加わった点が従来と異なると原告側は指摘しています。

Samsung Electronics to cut chip production in effort to support prices


2023~2024年になると、Samsung・SK hynix・Micronの3社は従来型DRAMからHBMへ生産能力と設備投資を移しました。HBMは複数のDRAMダイを積み重ねてデータ転送速度を高めたメモリで、大量のデータを処理するAIアクセラレーターに用いられます。


HBMと従来型DRAMは同じ工場の生産能力を使います。Micronの説明では、1ビット分のHBMを作るために従来型DRAMなら3ビット分を作れる生産能力が必要とのこと。そのため、急増するAI需要に応じてHBMを増産すればそれだけで従来型DRAMの供給量は大きく減ります。Gamers Nexusは、AI需要の急増と限られた生産能力を、3社がそれぞれ独立して同じ判断を下した可能性を示す要因として挙げています。

一方、2025年4~6月には3社が約3カ月以内に主流のDDR4製品を段階的に終了する方針を相次いで発表しました。Samsungは2025年12月中旬、Micronは2026年第1四半期、SK hynixは2026年4月までに主な出荷を終える計画で、原告側は製品構成や顧客が異なる3社の終了時期が近すぎると主張しています。


訴状によると、従来型DRAMの価格が急上昇した後、台湾のWinbondやNanya Technology、中国のCXMTといった大手3社以外のメーカーは生産を拡大しました。それにもかかわらず、より大きな生産能力を持つSamsung・SK hynix・Micronが従来型DRAMを増産しなかったことも、原告側が「単独では利益にならない行動」の根拠として挙げています。

2025年12月3日、Micronは一般消費者向けにメモリやSSDを販売していた「Crucial」ブランドの終了を発表。Micronは消費者向けブランドの終了を「AIによるデータセンター需要の急増を受け、大規模な戦略的顧客への供給を強化するため」と説明しており、これに対して原告側は「消費者向けメモリが記録的な高値で売れる状況なら、競争する企業は販売網を廃止するのではなく拡大するはずだ」と主張しています。

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2026年1月、Nikkei AsiaはSamsung・SK hynix・Micronの3社が取引先への審査を同時期に厳格化したと報じました。Nikkei Asiaの取材に応じたGPU・サーバー関連企業の幹部によると、3社から「製品を最終的に誰へ供給するのか」「必要な数量はいくつか」「顧客の需要は実在するのか」といった同じ質問を尋ねられたとのこと。この幹部は、一部の購入者による過剰発注や在庫の積み増しを防ぐためだと説明していますが、原告側は競合する3社が同じ時期に同じ審査を導入した点を共謀の兆候だと位置づけています。

Gamers Nexusによると、Samsung・SK hynix・Micronの3社が従来型DRAMの供給を増やさない理由としては、HBMの方が高い利益を得られることも挙げられてきました。しかし、2026年初頭には従来型DRAMの価格上昇によって収益性が逆転し、SamsungとMicronは従来型DRAMの利益率がHBMを上回っていると説明。それでも3社が従来型DRAMを増産しなかったことについて、訴状は「通常の競争行動では説明しにくい」と主張しています。

ただし、コーネル大学ロースクールのLegal Information Instituteによると、競合企業の行動を見ながら各社が独立して同じ方針を選ぶ「意識的並行行動」は、それだけでは違法ではありません。Gamers Nexusは、AI向けメモリの需要が同時に急増したこと、半導体工場の新設に数年かかること、HBMの供給が長期契約で埋まっていることを考えれば、3社が連絡や合意なしに似た判断へ到達した可能性もあると指摘した上で、「共謀を明示する証拠は現時点で確認できない」と認めています。

Samsung・SK hynix・Micronは2016~2017年のDRAM価格上昇の際も、価格操作を行ったとして2021年に集団訴訟を起こされています。また、この訴えと同じ主張をしていた2018年の訴訟では、「3社による同時期の減産だけでは共謀を推認するための証拠が足りない」として訴えを退けた地方裁判所の判断を、2022年に第9巡回区控訴裁判所が支持しました(PDFファイル)。

Samsung・Micron・SK Hynixが「DRAMの価格操作を行った」として集団訴訟を起こされる - GIGAZINE


今回の訴状は2016~2018年の訴訟とは異なり、Samsungの従来と異なる方針転換や、収益性が高まった後も増産しなかったことなども3社の合意があったことをうかがわせる追加要素として挙げています。

MicronはInvestor's Business Dailyに対し「訴状の主張には同意できず、自社は適用される法律を守りながら公正に競争しており、裁判で争う」とコメントしています。

裁判所の公開記録によると、記事作成時点ではまだ企業情報開示書などが提出された段階で、集団訴訟として認証されるかや、請求が却下されずに証拠開示へ進むかは未定です。2002年に提起された過去のDRAM反トラスト訴訟では最終的な和解承認まで約12年かかったため、Gamers Nexusは「結末が判明するまで時間がかかりますが、たとえ12年後でも追い続けます。できればもっと早い方がいいですが」と締めくくっています。

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