サイエンス

人間はなぜ殺し合うのかという謎の解明へ一歩前進、チンパンジーの事例が適応戦略で説明できることを京大が発表

By Tambako The Jaguar

ヒトはヒトを殺す生き物ですが、同じくチンパンジーも同種間で殺し合うことがある生き物として知られています。この「同種間の殺し」が進化の過程で生まれたものなのか、後天的な環境の変化によって生まれたものなのかについて大きな論争があったところ、京都大学の研究チームは進化の過程であると結論づけました。

Lethal aggression in Pan is better explained by adaptive strategies than human impacts : Nature : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nature/journal/v513/n7518/full/nature13727.html

チンパンジーに見られる同種間の殺しが適応戦略で説明がつくことを証明-ヒト科における同種間の殺戮行動の進化の解明に期待-
(PDFファイル)http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2014/documents/140919_3/01.pdf

チンパンジーに見られる同種間の殺しが適応戦略で説明がつくことを証明 -ヒト科における同種間の殺戮行動の進化の解明に期待- — 京都大学
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2014/140919_3.html

チンパンジーは集団内や集団間で同種を殺したり共食いしたりすることがしばしば報告されていました。チンバンジーが共食いをする様子は以下のムービーで確認可能。ショッキングな内容なので再生には注意です。

The cannibalism of the chimpanzee - YouTube


「同種殺し」の理由について、チンパンジーのオスが食物や交尾するメスという「資源」を獲得しやすくするための「適応戦略」であるという見解と、人間による開発によって生息環境が変化したり、人間に餌付けされたりしたことに起因する「人為的影響」であるという見解に二分されていました。

しかし、京都大学・霊長類研究所の松沢哲郎教授らとミネソタ大学のマイケル・L・ウィルソン准教授らの研究グループが、チンパンジー18集団、ボノボ4集団をなんと50年間という長期間にわたって研究し、チンパンジー15集団で152件の殺し(観察例58件、推定例41件、疑い例53件)、ボノボで1件の疑い例を観察した末に、「同種間の殺しの発生率の変異に人為的影響は無関係である」と結論づけました。この研究成果は2014年9月17日付で科学誌Natureに掲載されています。

公開された「隣の集団の声を聞きつけ、徒党を組んで戦いに向かうチンパンジーの雄たち」の写真


今回の研究成果によってチンパンジーの同種殺しが、主としてオスによる配偶相手や資源をめぐる適応戦略であるということで論争は一件落着しました。しかし、このような同種間の殺しをするのは霊長類ではヒトとチンパンジーだけであり、チンパンジーと共通の祖先から進化したボノボでは同種殺しが見られないことから、チンパンジーとヒトの強い共通性が疑われるところです。

なお、今回の研究からは同種殺しがチンパンジーとヒトの共通祖先から受け継いだ行動特性なのか、種が分かれてからそれぞれ個別に進化させた行動特性なのかについては依然として明らかでないため、今後はこのチンパンジーとヒトの同種殺しに関する研究が進めば、「なぜ人間は人間を殺すのか?」「なぜ戦争をするのか?」という謎とその抑制のメカニズムが解明されると期待されています。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by darkhorse_log

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