ネットに関するあらゆるデータを分析した「インターネットトレンド」2014年度版でわかること
By AK Rockefeller
ベンチャーキャピタル「クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ」のアナリスト、Mary Meekerさんが毎年公開している、インターネットに関するありとあらゆるデータを分析した「インターネットトレンド」の2014年度版が発表されました。2014年でインターネットのトレンドはどのように変化したのか、その詳細が分かる内容になっています。
2014 Internet Trends — Kleiner Perkins Caufield Byers
http://www.kpcb.com/internet-trends
Meekerさんの分析によると、インターネットの成長速度は去年に引き続いて減速しており、成長率は10%を切ってしまったとのこと。一方スマートフォンの成長率は20%で、インターネットを上回っていますが、こちらも成長速度は減速。対照的にすさまじい成長率をみせたのがモバイルデータトラフィックで、成長率は80%となっており、その中核を担ったのがムービーコンテンツとなっています。まずは、成長速度が減速しつつも、データトラフィックの成長率においておおきな発展を遂げたモバイル関連のデータを中心に見ていきます。
2009年から2013年までの、スマートフォンの出荷台数および、全携帯電話ユーザーのうちスマートフォンユーザーが占める割合をグラフ化したものが下記になります。オレンジ色の線がスマートフォンの出荷台数、棒グラフがスマートフォンユーザーの占める割合を示しており、出荷台数とスマートフォンユーザーの割合がぐんぐん伸びていることがわかります。2013年第4四半期には全携帯電話ユーザーの約30%がスマートフォンを使用しているという結果になりました。
こちらは、デスクトップPC・ノートPC・タブレット端末の出荷台数をグラフ化したもので、デスクトップPCが緑色、ノートPCが青色、タブレット端末がオレンジ色になっています。2010年ごろに登場したタブレット端末は急成長をみせ、2012年にはデスクトップおよびノートPCを抜き去り、2013年には圧倒的な差をつけてトップに君臨しました。
一方、世界におけるテレビ・携帯電話・スマートフォン・ノートPC・デスクトップPC・タブレット端末のユーザー数を比べてみると、出荷台数でノートPC・デスクトップPCを上回ったタブレット端末が最も少ないことがわかります。トップはテレビで、それに迫っているのが携帯電話。携帯電話のユーザー数にスマートフォンを加えると、テレビのユーザー数を上回ることに。
トラフィックの成長率が大きかったモバイル関連のデータ使用はどうなっているのか、下記のグラフはウェブにアクセスしたデバイスのうちモバイル端末の占める割合がどれくらいか、というのを地域別にグラフ化したもの。緑色が2013年5月、青色が2014年5月のデータです。どの地域においても、モバイル端末からウェブにアクセスする人が増えていて、特に顕著なのがアジアとアフリカ。
モバイル端末からウェブにアクセスするユーザーの増加により、インターネット上での広告にも変化が訪れました。デスクトップPC向けの広告収入が青、モバイル向けの広告収入がオレンジの棒グラフで表わされている下記のグラフでは、徐々にですが、モバイル向け広告の占める割合が増加しています。
下記のグラフは、紙媒体・ラジオ・テレビ・インターネット・モバイル端末のユーザーによる消費時間の割合を示したもの。黄色が消費時間、青色が広告閲覧に割いた時間の割合を示しています。消費時間・広告閲覧時間ともに圧倒的トップなのがテレビ、次にインターネットが続きました。しかしながら、インターネットおよびモバイル端末は消費時間の割合が広告閲覧時間の割合を上回っており、その差を埋められれば、まだまだ大きな成長を遂げられそうです。
2014年はユーザーが利用するアプリにも変化が訪れました。以前は多目的アプリ、つまり、「友人との連絡」「写真の共有」「コンテンツの共有」などが1つに詰まったアプリが主流でしたが、2013年から2014年にかけて「友人との連絡ならLINE」「写真の共有ならInstagram」といった風に、ユーザーのアプリの使い方が「1つのアプリで1つの目的を楽しむ」という方向にシフト。
下記のグラフが示すとおり、ユーザーはメッセージを多数の人と共有する時にFacebook、友人や知り合いと頻繁に連絡を取る際にはメッセンジャーアプリを使用する傾向があります。
台頭が顕著なのが、メッセンジャーアプリです。例えば「WhatsApp」は月間アクティブユーザーが4億人で成長率が100%、1日に送信されるメッセージは500億件です。日本で人気の高いLineは、月間アクティブユーザーが2億8000万人で1日に送信されるメッセージが100億件となっています。
下記のグラフは1日にアップロードされる写真の件数をFlickr・Snapchat・Instagram・Facebook・WhatsAppという5つのプラットホーム別にグラフ化したもの。2011年まではFacebookの独壇場でしたが、2012年にSnapchatとWhatsAppがじわじわと伸びてきて、2014年にはFacebookを上回りました。
モバイル端末でのムービーコンテンツは大きな成長を遂げました。オンラインのムービーコンテンツにおけるモバイル端末のシェアを表わしたグラフを見れば一目瞭然。青色がオンラインでのムービー再生におけるモバイル端末のシェア、緑色がオンラインでのムービー再生時間におけるモバイル端末のシェアを表わしており、双方ともじわじわと上昇して2013年11月には20%前後に到達しました。
「テレビの視聴者数が減少している」と話題になることがありますが、Meekerさんはさまざまなデータを分析して「PCやモバイル端末とテレビの関係はどうなっているのか」を調査しました。下記のグラフはテレビ・PC・スマートフォンとタブレット端末・スマートフォン・タブレット端末の出荷台数をグラフにしたもの。赤色の線がテレビで、1999年から一貫して一定台数を保っているものの、ほとんど上昇していません。一方で、スマートフォンとタブレット端末は2009年頃から一気に上昇しました。
こちらは各国におけるテレビ・デスクトップおよびノートPC・スマートフォン・タブレット端末の使用時間を表わしたグラフです。スマートフォンの使用時間がテレビを上回っている国が多く、PCの使用時間がテレビを上回っているのは半分くらい。
ユーザーは、テレビを視聴中に他のデバイスで何をしているか、調べたのが以下のグラフ。使用しているデバイスは緑色がスマートフォン、青色がタブレット端末で、上から順番にネットサーフィン・ショッピング・スポーツのスコアをチェック・俳優や作品、スポーツ選手の情報をチェック・テレビ番組について友達とEメールやショートメールで会話・SMSでテレビ番組に関する議論を読む・テレビCMで宣伝された製品やサービスの購入・生放送番組にコメントを投稿、となっています。
ここまでのデータを見ると、「テレビは以前のような強さがなくなったのか」という印象を受けますが、オリンピックといったスポーツイベントをテレビで視聴するユーザーはまだまだ多いようです。下記のグラフは、ユーザーが2012年に開催されたロンドンオリンピックを視聴したデバイスごとの平均時間を表わしたもの。青色がテレビで、他のデバイスを圧倒しています。ただし、テレビを見ながらスマートフォンやタブレット端末でもオリンピックをチェックするユーザーも多く見受けられます。
Meekerさんによると、以前までは、テレビ視聴時間が5時間あったとしたら、実際にコンテンツを見ているのが4時間で、コマーシャルをみているのが1時間でしたが、2014年にはさまざまなデバイスでコンテンツを5時間視聴していて、広告を見る時間がなくなってしまったのではないか、とのこと。今後は広告戦略に大きな変化が訪れる可能性があります。
最後にインターネット市場を牽引している企業の市場価値と総収入別ランキングをピックアップしてみました。1位はAppleで市場価値が5290億ドル(約54兆円)・総収入が1739億9200万ドル(約17兆7500億円)、2位はGoogleで市場価値が3770億ドル(約38兆円)・総収入が598億2500万ドル(約6兆1000億円)、3位がFacebookで市場価値が1570億ドル(約16兆円)・総収入が78億7200万ドル(約8000億円)となっています。日本のYahoo!Japanは市場価値が250億ドル(約2兆5000億円)・総収入が36億4100万ドル(約3680億円)で12位、楽天は市場価値が160億ドル(約1兆6000億円)・総収入が49億3200万ドル(約5000億円)で17位です。
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