インタビュー

新アニメ「DRAMAtical Murder [ドラマティカルマーダー]」を支える二人のプロデューサーに突撃インタビュー


DRAMAtical Murder [ドラマティカルマーダー]」は「俺がお前を『壊して』やる。」という強烈なキャッチコピーと「脳内クラッシュADV」というこれまた強烈なゲームジャンルを冠するPCゲームで、ニトロプラスのボーイズラブ(BL)ゲームブランドであるNitro+CHiRAL(ニトロプラスキラル)が2012年に制作したものです。このPCゲームを原作とした新アニメが2014年夏から放送開始するわけですが、原作を作ったニトロプラスの小坂崇氣(でじたろう)プロデューサーとエイベックスの田中宏幸プロデューサーというこのアニメを支える二人のプロデューサーにお話を伺う機会があったので、いろいろと聞いてきました。

TVアニメ「DRAMAtical Murder [ドラマティカルマーダー]」
http://dmmd-anime.com/


GIGAZINE(以下、G):
まずはニトロプラスキラルというブランドについてお伺いしてよろしいでしょうか?

小坂 崇氣プロデューサー(以下、小):
ニトロプラスというのは1999年の8月にブランドが誕生して、それから15年間やってきました。1作目が「Phantom PHANTOM OF INFERNO」、2作目に「吸血殲鬼ヴェドゴニア」というPCゲームを作成し、両方ともに虚淵玄が脚本を担当し、主に男性ユーザー向けにゲームを作っていました。

吸血殲鬼ヴェドゴニアは、吸血鬼をモチーフとするバイオレンスアクションアドベンチャーゲーム。


小:
しかし、ヴェドゴニアは意外と一部の女性にもウケていたようで、ヴェドゴニアをプレイして「こういうテイストのBLがほしい!」と思った現キラルスタッフたちが新作BLゲームの企画を立てていたんです。そして制作が行き詰まったところでウチに制作中のものを持ち込んできて、これを虚淵が見たところ「光るものがある」と。そして虚淵が彼女たちの面倒を見るということで話が進み、2005年に「咎狗の血」という作品が完成したわけです。その際、ニトロプラスは美少女ゲームブランドだったので、新しく名前を変えてBLゲームブランドを作ろうということでニトロプラスキラルが誕生したわけですね。

ニトロプラスキラルの記念すべき第1作目となった咎狗の血。


G:
なるほど、ニトロプラスキラルにはそんな生い立ちがあったんですね。

小:
BLブランドというのはそもそも数が少ないんですよ。でも、コミケなんかに行ってみるとBL的な二次創作は多くて、潜在的なニーズが高いというのは分かります。そして、自分自身も少女漫画が好きで、BL的な部分を理解できるプロデューサーでもあったので、BLゲームのブランドを立ち上げるに至った、という感じですね。

キラル自体は2、3年おきにゲームをリリースしていて、2作目の「Lamento -BEYOND THE VOID-」、3作目の「sweet pool」ときて、4作目に今回アニメ化が決定したドラマティカルマーダーをリリースしたわけです。ニトロプラスの美少女ゲームもそれなりのこだわりをもってやってきていますが、キラルもそれに勝るとも劣らない情熱で継続的に作品をリリースしてこれた感じで、ユーザーの方々の熱量もどんどん上がってきています。


ニトロプラスもキラルもそんなに続編を作るということはしないんですけど、ドラマティカルマーダーは発売から一年後にファンディスクを作ってみたりして1つのコンテンツを育てるようなことをしている最中でした。そこにエイベックスさんからドラマティカルマーダーのアニメ化のお話がきたので「やってみよう」となったわけです。

G:
アニメ化のお話はエイベックスさんの方から出たものだったんですか?

エイベックス・田中宏幸プロデューサー(以下、田):
魔法少女まどか☆マギカが放送されるよりもずっと前の作品からニトロプラスさんのことは知っていて、設定がすごく面白いので売り込み的な感じで一度会いに行ったんです。そこから少しずつお話しさせていただくようになって、何か仕事するわけでもなく、ただお話しするだけの関係が2、3年程続いて、そんな時に「こんなのがあるんだよー」とドラマティカルマーダーを紹介してもらったんですね。

僕自身はBL作品をやったことはなかったし、BLに関する理解もそれほど高いわけではなかったんですけど、キャラクター性だけでなくシナリオ展開などもすごく面白いと思ったんです。確かにアニメ化するのは難しい作品ではあったんですけれども、作品として仕上げた時に凄く良い景色が広がるんじゃないかなってことで一緒にアニメ化させていただくことになったんです。


G:
それだけ原作の魅力が大きかったというわけですね。BLゲームを作ることに対する戸惑いみたいなものはなかったのでしょうか?

小:
原作のシナリオを担当した淵井鏑(キラルのシナリオライター)はニトロプラスに入社してからもいろいろと勉強して、脚本がどんどん面白くなっていったんですよ。そして話が面白くなれば、制作スタッフもどんどん興味を持つようになりますから。

G:
話が少し変わりますが、お二人は「プロデューサー」という立場ですが、具体的にはどういった仕事をこなしているのでしょうか?

小:
ゲームプロデューサーイコール、コンテンツを作るクリエイターたちの思いを具現化するために必要な人と予算を用意して完成したコンテンツをお金にする、という感じですね。細かく言うと、最適な人材をスタッフィングしたり、制作環境を整えたり、そして予算の管理と回収を行うんです。アニメにおいては、基本的には田中さんのような幹事会社のプロデューサーに大変な部分をほとんどお任せして、原作側のプロデューサーとして原作スタッフが分担するアニメ制作業務の調整や、原作ファンの方が気になると思われる部分の修正を依頼したり、プロモーションのアイデアや実行をお手伝いしたりしています。


田:
僕はどちらかというと、原作をおあずかりしてアニメ化する側の人間。今回みたいなアドベンチャーゲームのようにシナリオの多いものだと、アニメは12話しかないのでシナリオを削りながら再構成していき、ファンの方の好きなシーンを残しつつも、アニメとしてのお話が成り立つようにみんなで検討する必要があります。また、アニメとしての面白さをプラスするにはどうすればいいかなども議論しながら、原作のお客さまと新しいお客さまの両方に楽しんでもらえるように、アニメの監督や脚本担当の方々が話し合う場を設け、その場の取りまとめ役みたいなことをやっています。

アニメの場合は大人数で連携しながら作らなければいけない部分が多々あるので、どれだけ大人数でもみんなが同じ意志で制作を進めていけるような環境を作ったり、原作側の思いが制作側にしっかりと伝わるような環境作りやモチベーション作りをすることも多いかなと思います。

G:
同じ役職名でも、仕事の内容は全然違うものなんですね。


G:
2014年夏から放送開始予定のドラマティカルマーダーの見所はどういった部分でしょうか?

小:
(インタビューが行われた時点では)まだ完成したものを見ていないので僕自身も楽しみにしているんですけれども、まず作品の根幹部分であるシリーズ構成と脚本の部分は見所の1つです。原作ユーザーが何を求め、原作側が何を考えてドラマティカルマーダーという作品を世に出しているのか、といった部分をアニメ制作側にしっかりと伝えながら、シリーズ構成の1人である待田堂子さんと監督の三浦和也さん、さらにエイベックスさんも交えてがっつりと打ち合わせさせてもらいました。長いストーリーで、しかもマルチエンディングというゲームを1クールのシナリオにまとめるのは難しい作業なので、お互い侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論を繰り広げましたが、最後は良い落としどころに落ち着いたのではと思ってるので、そこは見所のひとつかと思います。


画作りに関しては、NAZさんという新進気鋭のスタジオがアニメーション制作を担当されています。ゲームの原画を担当したほにゃららさんの絵はとても独特で真似するのがとても難しいと思いますが、版権絵やキャラクターデザインなど、ウチのスタッフからかなり細かいところまで修正をお願いしました。なので、映像についてはこちらは祈るように見守るのみですね。

田:
原作側と制作側の打ち合わせはかなり時間を取って行ってきたので、うまく意思の疎通を取りながらお互いにストレスを感じずに制作できていると思います。そういった部分も画面を通して伝わるのでは、と思いますね。さらに付け足して言うなら、GOATBEDさんのオープニングテーマがかっこいいんです。

小:
caligariというビジュアル系ロックバンドのボーカルである石井秀仁さんを中心としたGOATBEDというユニットにドラマティカルマーダーの音楽を作ってもらったんですが、アニメ版でもオープニングテーマをお願いして快く承諾してもらいました。

田:
作品のサイバー感というか世界観を音楽で引き込むような魔法がかった曲を作られているのでね。すごいかっこいいですよね。

小:
本当にかっこいいですよね。石井さんご本人もとってもかっこいいです。

ドラマティカルマーダーの世界では、電脳空間で行うゲーム「ライム」が流行


G:
ニトロプラスっぽい部分も楽しめるのでしょうか?

小:
「ニトロっぽさ」というのは人によって感じるところが違うと思うんですが、「燃え」というかバトルアクションのような戦う描写を指しているケースが多いですね。そういったところの見せ所はキラル作品にも多いんです。ドラマティカルマーダーは「ライム」という電脳ゲーム内でバトルを繰り広げるのですが、普通の肉弾戦とは違った魅力のバトルを見せられるはずです。アニメではゲームで見せられなかったスピード感が描けますので、より迫力あるものを見せられればと思います。最終的に仕上がったものをまだ見てないのでなんとも言えないんですけども、かっこいいものになっているはずです。

G:
バトルシーンは男性の心もグッとつかめるポイントになりそうですね。

田:
最近の作品ってキャラクター同士の会話劇みたいなものが多いなと思うんです。でもニトロプラスさんの作品はそうじゃなくて、先に物語として完璧にできあがっている中に、それぞれの役割のキャラクターがいる感じ。キャラクターありきというよりは、伝えたいメッセージやそれに向けての構成みたいな部分があって、その上にキャラクターがいる感じ。だからすごく骨太なんです。それが僕の思うニトロっぽさ。


小:
なるほど。

田:
その部分をアニメで見ていただいて、気に入ってもらえればゲームの方も、っていう風にできればなって思いますよね。

小:
そうですね~。

エンターテイメントってもともと架空の世界だから、見たときに納得感や伏線が張ってあって「そうだったのか」って思えるものが楽しいし、よりリアリティを感じられたりすると思うんです。そういった部分を割とうまく仕込めているのが虚淵玄の作品だと思うんですね。うちのライターは虚淵玄を筆頭に皆、本質的なテーマを軸にしながら伏線の張り方や物語の盛り上げ方などの構成をすごく大事にしています。淵井鏑はその遺伝子を受け継いでいますし、さらにキャラクターをブレなく魅力的に描く筆力はすごいと思います。

G:
脚本がしっかりしているとなると男性でも楽しめそうですね。続いてキャストについてもお伺いしてよろしいですか?

小:
コンシューマー版とアニメのキャストは同じですね。

田:
キャストさんたちもアニメ化をすごい喜んでくれていて、とてもテンションが高いです。

小:
ゲームシナリオを読んでくださっていて、ドラマティカルマーダーの世界を全て把握してくれていらっしゃるので、ものすごい理解力が高いんですよね。

田:
アニメ化を喜んでくれていて、その上で仕事に取り組んでくれているのでその勢いみたいなところも感じてもらえればと思います。

G:
最後に意気込みをお願いします。

田:
まずはあくまで原作の良い部分をキッチリとアニメで吸収して表現して、その結果がドラマティカルマーダーという作品を知るきっかけになるといいなと思っています。その上でゲームやグッズを買ったりしてより深くドラマティカルマーダーのファンになってもらえるような、そんな一歩目になれればという感じです。なので、きっちり原作の良いところをたくさんの人に伝えられる作品になれれば、という感じですね。

G:
本日はお時間ありがとうございました。

アニメ「DRAMAtical Murder [ドラマティカルマーダー]」のPV第1弾は以下から見ることができます。

TVアニメ「DRAMAtical Murder [ドラマティカルマーダー]」PV第1弾 - YouTube

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in インタビュー,   アニメ,   ゲーム, Posted by logu_ii

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