Amazonの「顧客至上主義」の考えを身をもって体験した元スタッフの経験談
By Luke Dorny
1994年にアメリカで創業したAmazonは、いまや時価総額16兆円超の規模を持つ企業へと成長しています。Eコマースならではのビジネスモデルであるロングテールと並び、Amazonのサービスの特徴となっているのが「顧客至上主義」であると言われていますが、デザイナーのアダム・キダーさんはAmazonに一時在籍していたことがあり、その企業体質を身をもって体験したことがあるそうです。
The Day I Met Jeff Bezos
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キダーさんは、デザインを学んでいた学校を卒業した直後、Amazonで働くというチャンスに巡り会いました。働きだして数か月がたったとき、キダーさんのデザインチームとエンジニアにあるチャンスが訪れます。AmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏から、同社のトップシークレットに属する新商品のデザインプランをプレゼンテーションするというタスクを与えられたのです。
その時のことをキダーさんは「それが一生に一度モノのチャンスだと言うことはすぐにわかりました。なぜなら、Kindleやアマゾン ウェブ サービスなどといった素晴らしい商品やサービスは、このようなベゾス氏のイニシアチブで進められたプロジェクトから生まれたものだからです」と語ります。同時に、ある種の不安な気持ちにも襲われたというキダーさん。その理由は、Amazonでの経験がある先輩からは、ベゾス氏に対するプレゼンへの注意点と「ありとあらゆることを想定しておくこと」というアドバイスを受けたからだと言います。
By Heidi Blanton
プレゼン当日、アマゾン本社キャンパスにあるDAY 1 NORTHビルに到着したキダーさん。エレベーターを降り、会場となる重役室に入るとそこにはベゾス氏が立っていました。「ジェフです」と礼儀正しくあいさつするベゾス氏に対して簡単な自己紹介を行うと、すぐにプレゼンに突入。
製品プロトタイプを前にプレゼンを行い、まずはベゾス氏からの反応を待ちます。長い沈黙のあとベゾス氏が見せた反応は「笑い」でした。しかし、その笑いは「プレゼンが終わった後に耳にしたいタイプのものではなかった」と語るキダーさん。部屋中の全員が静まりかえり、じっとベゾス氏が次に何を語るか固唾をのんで見守っていると、ベゾス氏からは「これは君が自分で考えたプランではないね。実現不可能だから。本当の君のプランはなんだい?」という言葉が投げかけられたそうです。
By DonkeyHotey
キダーさんはベゾス氏から新しいバージョンのデモを翌日持ってくるように指示を受けました。実際、キダーさんはこの日のプレゼンに向けてチームのメンバーとともに他の仕事を放り出してまで作業してきましたが、具体的に製品がどのように利用されるものなのかということを把握できていなかったそうです。
当然、翌日行った新しいプレゼンでもベゾス氏の反応は明らかに不満を含むもので、キダーさんは酷評を受けることになりました。このときベゾス氏は、その製品を自分自身ですでに作り上げていたかのように話をしていたそうです。
その後もAmazon在籍中にプレゼンの機会を何回か得ることになったキダーさん。そのたびにベゾス氏からは厳しい評価を下され続けたそうですが、今ではその理由が「ベゾス氏が常に顧客の目線から製品を判断していたから」だったと理解しているそうです。経験を積んだ現在、キダーさんは「ベゾス氏の頭に存在していたのは、製品は機能優先ではなく、ユーザーエクスペリエンスの観点で判断するということ」だったと確信。「ユーザーがAmazonのウェブサイトを訪問する時点から、支払い、商品を入手して使うまでの全ての段階において、提案された機能がどのように影響を与えるのかということが考え抜かれていました。そしてもしベゾス氏の求める基準にサービスの内容が少しでも届いていないと判断されると、改善を要求してくるのです」とキダーさんは語ります。
By JD Lasica
ベゾス氏が持っていた細部へのこだわりとユーザーエクスペリエンスをとことん重視する姿勢について、キダーさんは「フラストレーションのたまるものでした」と語るほどなので、いかに要求が厳しいものであったかと言うことが伝わってきます。しかし、そのこだわりこそが、Amazonの成功の理由だということを今では認識しているといいます。
Amazonでの経験をもとに、キダーさんは「それまで持っていた『エンジニアリング』というのは何かを組み立てる方法だと思っていましたが、今では考え方が変わりました。ユーザーエクスペリエンスを厳しく追及するという方法論は、私のDNAに組み込まれているほどです。ユーザー視点に立った製品作りというのは、ときには大きく回り道をすることもありますが、それでも最も満足度を提供できるものであると確信しています」と語っています。
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