「AKIRA」の影響を受けたザック・スナイダー監督に「マン・オブ・スティール」についてインタビュー
「300」「ウォッチメン」などコミック原作の映画化を手がけてヒットさせ、今回、スーパーマンを新時代に甦らせることになる「マン・オブ・スティール」の監督を務めたザック・スナイダー氏にインタビューを行いました。監督は日本のアニメなどに造詣が深く、その作品作りにおいては大友克洋監督の「AKIRA」に影響された部分が多くあって、今も影響を受け続けていると語ってくれました。インタビューの他に、六本木ヒルズアリーナで行われたジャパンプレミアの様子も掲載しています。
映画『マン・オブ・スティール』公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/manofsteel/index.html
Q:
監督は、1978年に公開されたリチャード・ドナー監督の「スーパーマン」がお好きだそうですが、特に気に入っているというシーンはありますか?そして、それは本作にも反映されていますか?
ザック・スナイダー監督(以下、ザック):
若き日のクラークが父・ジョナサンに対して「僕はこんなにもタッチダウンができるのに、どうしてアメフトをやってはいけないの?」とお願いするところで、フラストレーションがほとばしっていますよね。オリジナルの「スーパーマン」の要素は、マン・オブ・スティールでもあちこちに感じてもらえると思います。
Q:
今回の撮影で今までにないぐらいに工夫したシーン、新しい撮影手法を取り入れたシーンはありますか?また、そこにはどのようなものを取り入れましたか?
ザック:
「環境カメラ(Enviro-Cam)」というものを使っています。これは、ビジュアルエフェクトスーパーバイザーで、エンジェル・ウォーズの時にも手伝ってもらったD.J.ことジョン・デジャルダンが使っているテクニックです。
たとえば、キャラクターたちが戦いの中で殴り合ったり、取っ組み合いをしたり、あるいは飛び去ったりするシーンがありますよね。作中に出てくるシーンでいえば、目の前に倒れ込んだキャラクターがそこから飛び去っていくというスモールヴィルでの戦いのシーン。このとき、カメラマンはキャラクターが倒れた場所から飛び去る先へとカメラワークをパンします。それと同時に、このカメラの位置にスチールカメラを設置して、カメラの周囲360度の環境を撮影しておくんです。こうすることで物理的なカメラワーク素材が用意でき、VFXのスタッフが合成作業をするときにカメラワークの自然な模倣ができるようになっています。
Q:
今回の作品で製作を担当したクリストファー・ノーラン氏も映画監督です。監督同士が仕事で組むということで、難しいところがあったのではないでしょうか。
ザック:
そこがクリストファー・ノーランのすごいところで、「自分が監督ならプロデューサーにこのように扱われたい」と思っている通りに僕のことを扱ってくれたんです。「製作委員会の作った映画が観たいのではなく、ザックのビジョンで作られた映画が観たいんだ。君がやりたいと思うことができるように僕が守るよ」と最初に言ってくれて、僕らしい作品が作れるように「ザックがやりたいことをやらせろ!」とスタジオに言ってくれたんですよ。
Q:
監督はコミック原作の作品でこれまでに「300」「ウォッチメン」を作って成功を収められています。しかし、日本でもコミック原作の実写作品は多く作られていますが、必ずしも全てが成功しているわけではありません。成功経験のある人間として、コミック映画を成功させるために大切に考えているポイントがあれば教えて下さい。
ザック:
日本で原作のある作品を手がけている人も情熱を持ってやっていると思いますが、映像化するということは簡単なことではありません。コミックスと映画は似たものなのではないかと思われているかもしれませんが、フォーマットはかなり異なるものであり、自分も映像化にあたってはいろいろと苦労をしています。たとえば、大友克洋監督の「AKIRA」が実写映画化される話では、僕も声をかけてもらいました。そのときに「舞台は日本で、日本の俳優たちを使って撮らなければダメなんじゃない?」と聞いてみたら「いや、ニューヨークで撮ろうと思っているんだ」と言われて、「それが意味がないだろう」と断りました。やはり、愛されている素材だけに、変えてはいけないところがあるんです。僕は少なくとも「原作に忠実であろう」と考えてやっているけれど、ポイントはそこになるかな?
Q:
大都市でビルを壊しながらのバトルは迫力のあるものでこれまでの実写映画では見られないぐらいのものでしたが、デジャヴを感じました、それは、日本人であれば「ドラゴンボール」でこういったバトルを見たことがあるからだと思います。決してこのことは作品の質を下げるものではありませんが、「ドラゴンボール」を知っていて、インスピレーションを受けたりしたのでしょうか?
ザック:
「マン・オブ・スティール」が他のスーパーヒーロー映画、たとえば「アベンジャーズ」などと違う点は、ファイティングスタイルが1対1の肉弾戦でアニメに近いというのがあるのかもしれないですね。
「ドラゴンボール」についてはエピソードを何本か見たことがあります。あれぐらいのスケールの作品になるとバトルも大規模で、しかも美しいですよね。今、ちょっとタイトルが出てこないんだけれど、大都市でのバトルでビルが破壊されるシーンのある日本の作品を思い出しました。だから、日本のアニメだとこういうシーンは結構出てくるものなのかもしれないね(と言いつつ、手元のiPhoneで何の作品だったか調べてくれている)……テレビだったか映画だったかもちょっと思い出せないな、たぶんテレビだったと思うんだけれど……。
Q:
「エンジェル・ウォーズ」の時には日本のイラストレーターである寺田克也さんを起用されたが、今注目している日本の作品やクリエイターは?
ザック:
寺田克也は天才です。一緒に仕事ができて光栄でした。注目の作品ということですが、日本の作品というと、自分は今も「AKIRA」から影響を受けています。これは昔からそうだし、今も受け続けています。キャラクターの内臓がグチャッと出てしまうシーンはすごいなと思っていて、何度も自分の作品の中でマネできないかと挑戦していますよ。AKIRAとマン・オブ・スティールには、数名のキャラクターが親密に会話をしているようなシーンから、突然町が破壊されるような大規模なシーンに広がり、それが並行で見せられるようなところなど、スケールの変化で似ているところがあって、影響されている部分は多々あります。
Q:
これだけすごい映画を作ってしまうと、次の作品が大変ではないですか?
ザック:
「マン・オブ・スティール」の製作にあたってはDCコミックスの世界を追求しようと頑張ったけれど、次は発表されている限りでもバットマンが出てくることが決まっていて、スケールアップするのは間違いないですからね。ただ、作中のアクションシーンをどう作っていくかは、まだこれから考えるところです。
Q:
めちゃくちゃに壊して欲しいですね。
ザック:
僕もぜひそうしたいと思っているよ(笑)
「マン・オブ・スティール」のポスターを横に置いての撮影
上記のポスターは第3弾、スーパーマンが飛んでいくところが描かれていますが、ポスター第1弾はこんな感じで胸のSマークを強調
ポスター第2弾ではスーパーマンが捕まっているという衝撃のビジュアルを使用していました
インタビュー終了後、わざわざ電話をして上述の「タイトルが出てこなかった日本の作品」を調べてくれたザック・スナイダー監督。「アメリカは夜8時なのに誰も反応がないなんて、おかしい!」
その後、知り合いの絵コンテアーティストに確認を取り、「Birdy the Mighty(鉄腕バーディー)」であることが判明しました。
「鉄腕バーディー」も「マン・オブ・スティール」と同様に主人公は宇宙から地球にやってきていて、ボディラインがわかるような体に密着するスーツを身につけており、敵と戦い、場合によってはビルを破壊することもある……ということで、わりと共通点が多め。ただ、監督が見たのがアメリカで1996年にリリースされたOVA版なのか、2008年以降に放送されたテレビシリーズ「鉄腕バーディー:DECODE」なのかまではわかりませんでした。
ここでビルをぶっ壊して戦う日本のアニメが「鉄腕バーディー」だと思い出せたのが嬉しかったのか、ジャパンプレミアでのメッセージでも「鉄腕バーディー」の名前を口にしていたザック・スナイダー監督。バーディーの実写映画化とかはアリなのでしょうか。
ジャパンプレミアにはスナイダー監督のほか、製作のデボラ・スナイダーさん、主演のヘンリー・カビルさん、製作のチャールズ・ローブンさんが出席。
カビルさんにはファンが黄色い声を張り上げていました。
4人揃ってのショット
スーパーマン(クラーク・ケント/カル・エル)には故郷クリプトン星に実の親が、地球に育ての親がいるわけですが、予告編ではそれぞれの父親が語りかけてくるようなものが用意されています。
まず、実の父であるジョー・エル(ラッセル・クロウ)がナレーションを担当しているのがこの予告編
「マン・オブ・スティール」予告編(ラッセル・クロウ) - YouTube
そして養父ジョナサン・ケント(ケビン・コスナー)がナレーションを担当したのがこちら。
「マン・オブ・スティール」予告編(ケビン・コスナー) - YouTube
2分25秒ある長尺の予告編がこちら。
「マン・オブ・スティール」予告編第2弾(長尺) - YouTube
そして最新予告編である第5弾がコレ
「マン・オブ・スティール」予告編第5弾 - YouTube
映画「マン・オブ・スティール」は8月30日公開。ザック・スナイダー監督がクリストファー・ノーランの助けを得て、自らのビジョンを貫き通して作った映像はどのようなものになったのか、上記予告編だけではなく、映画館で確認してみて下さい。
◆「マン・オブ・スティール」
8月30日(金) 新宿ピカデリー他にて全国ロードショー
3D/2D 字幕/吹替え 同時公開
オフィシャルサイト:http://www.manofsteel.jp
Facebook:https://www.facebook.com/manofsteeljp
配給:ワーナー・ブラザース映画
TM & © 2013 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
TM & © DC COMICS
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