メモ

新設計の光ファイバーを用いて通信速度最大1.6Tbpsの実証実験に成功

by Roshan Nikam

2012年6月に「螺旋状ビーム通信技術により通信速度は2.5Tbpsに達し、将来は帯域問題に悩む必要がゼロに」というニュースがありましたが、この通信技術を研究しているAlan E.Willner氏らのチームが、今度は光ファイバーを用いた有線接続にも同様の技術を導入して1.6Tbpsでデータ転送が可能であるという実証実験を成功させました。

Terabit-Scale Orbital Angular Momentum Mode Division Multiplexing in Fibers
http://www.sciencemag.org/content/340/6140/1545.abstract



BBC News - 'Twisted light' idea makes for terabit rates in fibre
http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-23096320



Alan Willner氏らが研究しているのは、現在スピン角運動量(SAM)の情報しか持たせていない電波に、新たに軌道角運動量(OAM)の情報を持たせることで、同じ無線周波数で複数の通信が可能になるというもの。データストリームにひねりを加えて螺旋状ビームを形成して送受信を行う実証実験に成功していて、その通信速度は2.5Tbps(テラビット毎秒)というとてつもないものになりました。

しかし、この技術は無線通信のためのもので、光ファイバーにそのまま持ってくることはできません。これは、光ファイバーには、入射する信号光が大きくなりすぎると入力が飽和したり波形が劣化したりして信号光減少や光スペクトル変化が起きる非線形効果があるため。この問題を乗り越えるためには新しい発想が必要でした。

そこで出てくるのが、今回の論文の共同執筆者である、ボストン大学のSddharth Ramachandran氏。Ramachandran氏は光ファイバーなどの製造・販売を行っているOFS Fitel(古河電工の関係会社)と共同で、ファイバー内にファイバーが入っているという新設計を生み出しました。この新しいファイバーは、同心円状になっているファイバーにそれぞれ異なる素材を使うことで、ファイバーごとの光速度を変化させることができ、異なるビームツイストごとに異なる経路を与えることが可能になります。

新しいファイバーを試すために、Ramachandran氏はWiller氏のチームと合流。ファイバーは長さが1.1km以上の特注品で、接続部を最小限にしてあるというもの。個々のファイバーでデータ多重化を行った上で、それを立体的に組み合わせることで高速なデータ通信を実現。実験では、単一波長・OAMモードを4つ使用する状態で400Gbpsでのデータ転送に成功。また、10の波長とOAMモード2つを使用する場合には1.6Tbpsでのデータ転送に成功しました。


現在、チームでは波長を増やしたりツイストレベルを上げる(OMAモードを増やす)ことで、さらに転送速度を上げられないかと研究を進めています。

ただ、この新技術を実際に使うときに問題になってくるのは、光ファイバーを実験で用いたものに変える必要があるということ。すでに世界中の海底や地中には総延長40億kmといわれる光ファイバーが埋設されており、これらをすべて取り替えるというのはとても現実的ではありません。


しかし、「帯域幅が必要な、ちょっとした閉鎖系のシステムの中であれば現実味があるかも」とWillner氏。たとえば、Googleのデータセンター内のように、テラビット通信が求められるような場所でのみ使うという用法を提案しています。

ちなみに、NTT・フジクラ・北海道大学・デンマーク工科大学は2012年9月に12コアの光ファイバ1本で1Pbps(毎秒1ペタビット)の伝送実験に成功しています。

シスコシステムズはネット全体の通信量が2012年から2016年で4倍になって、年間1.3ゼタバイトになるという予測を立てていますが、この技術はこういった状況の一助になり得るのでしょうか。

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in メモ, Posted by logc_nt

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