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取材

インターネットを支える光ファイバーケーブルを海岸から陸揚げする現場潜入レポート、これが日本と東南アジアを結ぶ巨大海底光ファイバー網「SJC」だ!


約360億円(4億ドル)の建設費をかけて日本と東南アジアを結ぶ総延長約9000kmの海底ケーブル網を作り上げる巨大プロジェクト「SJC(Southe-East Asia Japan Cable)」は、2013年中の運用開始を目指して作業が進められています。今回は北九州で製造されたケーブルを敷設場所である千葉県房総半島沖から陸上の中継所に接続される様子を取材することができたので、その一部始終を写真に納めてきました。

日本~シンガポール間光海底ケーブル「SOUTH-EAST ASIA JAPAN CABLE SYSTEM」の建設保守協定締結について
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2009/1210/index.html

※2012年11月時点では、2009年の発表時と内容が一部異なっています

ケーブルの陸揚げ作業が行われたのは千葉県南房総市の海岸。なお、ケーブルの敷設地点がこの場所に選ばれた理由はシンガポール、日本、アメリカ西海岸を直線でつなぐ最短距離にあり、東京などの大都市圏に隣接した場所でもあるためです。

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早朝の陸揚げ作業に合わせてにある千倉海底線中継所に到着。


正面ゲートにあるプレート。


建物の前を海に向かって歩いて行くと「50m先工事中」の看板を発見。


周囲はほとんど何もないただの海岸。


陸揚げが行われる海岸には出資を行うKDDIやケーブルを製造したNEC、工事を行うKCS(国際ケーブル・シップ株式会社)などの関係者が集まっています。


「通信ケーブルの敷設を行っています」と書かれた看板。


海側から見るとテントの中に関係者やマスコミが集まっている様子が見えます。なお、後方に見える建物が千倉海底線中継所で、海からこの建物の中にケーブルを引き込むことが今回の作業の目標です。


まずはプレス用の受付に向かいます。


受付けでヘルメットとホッカイロをゲット。


というわけで、ヘルメットをかぶって海底ケーブルの陸揚げ作業が行われている現場へ行ってみる事にしましょう。


◆海底ケーブルの陸揚げ

陸揚げの現場の周囲は立ち入り禁止のロープが張られており、作業中は付近の沖合への船舶の侵入も制限されているとのこと。


陸揚げが終わったケーブルは砂浜の下深くに埋設するので、作業用の重機が用意されています。


海底ケーブルの陸揚げを行っている現場を遠くから見るとこんな感じ。


沖合にはこれから海に敷設されて行くケーブルを積んだ敷設船KDDI パシフィックリンク」が停泊しています。


ちなみに、なぜ敷設地点の千葉でケーブルを製造せずにわざわざ北九州で作って運んできたのか?という理由は、ケーブルの製造工場には広大な敷地や大型船を接岸できる港、安定した地盤などが必須で、そのための場所が千葉県周辺には確保できなかったためだそうです。

陸揚場所付近の海底は敷設船が入るには浅すぎるので、沖合からフロートを取り付けたケーブルを流し、そこに結びつけたロープを引いて浜辺に陸揚げをします。


作業の様子を取材する報道陣。


牽引用のロープに結びつけられたフロート(タイヤチューブ)が浜に揚がると、波打ち際の作業員が切り離し作業を行います。


ロープに巻き付いた結び目も切断。


黄色いフロートが付いている部分が牽引用ロープと光海底ケーブル本体がつながる部分。


ケーブル本体が陸揚げされてきました。


ケーブルは容易に切れてしまわないように幾重にも金属線などで巻かれており重量があるため、砂浜に滑車を置いてその上を通させます。


ターンシーブと呼ばれる装置を経由して浜の奥へと運ばれるケーブル。


牽引を行っているのはこんな感じのマシン。


船まで一直線につながったケーブル。


ケーブルにはホースで水がかけられており、陸揚げしつつ砂や海水を洗い流せるようになっています。


陸揚げの様子を少し離れた場所から見るとこんな感じ。


牽引機を通過したケーブルの先端は人の手で引っ張っぱられて浜辺に置かれていきます。


先端部分は以下の通り。


ここで一端作業を中断し報道陣向けのセレモニーが行われます。


ケーブルの先端の周りに集まる人々。


上空にはTV局の取材ヘリも飛んでいます。


陸揚げ成功を祝うシャンパンが登場。


ジャバジャバー。


この後は、ケーブルの先端を浜辺に掘ったトンネルに入れ、その先にある千倉海底線中継所に引き込む作業が行われます。


◆中継所の外部

ケーブルの引き込み先であり、アメリカ西海岸からシンガポールをつなぐ総延長9000kmの巨大通信網のハブとなる千倉海底線中継所の外観は以下の通り。


中継所の屋上からケーブルが陸揚げされている海岸を見るとこんな感じ。建物の脇にある道路1本を隔てたすぐ先が海です。


陸揚げされたケーブルは建物の横にある溝の中を通って屋内に入ります。


今日陸揚げされたケーブルの先端が地下のトンネルを通って建物まで到着しました。


この後は実際に内部の通信設備や電源と接続をしてテストを行った後、異常がなければ沖合に停泊している敷設船がシンガポールに向けて出航していくことになります。


◆中継所の内部

建物内部にあるケーブル引き込みトンネルへの入り口。


写真は既に接続が完了している別のケーブルですが、今回陸揚げされたケーブルもつなぎ終わった後は以下の写真とだいたい同じようになるはずです。


日本とアメリカ西海岸をつなぐケーブル「Unity」を発見。


ケーブルの中から分岐された光ファイバーは天井を通って信号を処理する機械などにつながれて行きます。


信号処理装置がズラリと並ぶ様子。なお、それぞれの機械のアップでの撮影はNGでした。


設備の温度を約26度に保つための空調設備はこんな感じ。


総延長9000kmに及ぶケーブルには一定区間毎に信号を増幅するための中継器が備えられており、以下の様な機械で両端から給電が行われています。


停電時にはまずバッテリーで施設全体に給電が行われ、30秒以内に軽油を利用した自家発電装置に自動で切り替わり約56時間は無補給で稼働ができるとのこと。


なお、この施設は2011年の東日本大震災の際にも稼働を続けることができたそうで、災害時でも情報のインフラが切断されないよう相当に堅牢な作りになっているようです。しかし、もし仮に南海トラフ地震が発生した場合はこの建物があるエリアに8m以上の津波が押し寄せる可能性があるとのことなので、それに耐えるには更なる設備の増強が必要となりそうです。

発電装置が稼働した際に騒音を抑えるため、周囲の壁は弾力性のある音を吸収する素材でできています。


緊急用の消火設備。


というわけで、日本と東南アジアを結ぶSJC(Southe-East Asia Japan Cable)は前の記事にある通り北九州で製造、船積みされて千葉県の房総沖に運ばれ端局と接続が完了。今後はケーブルシップによってシンガポールに向けた敷設作業が行われていくという状態になっています。なお、KDDIの湯本敏彦ネットワーク技術本部長によれば、このケーブルが完成した際には初期値で16Tbps、その後は23Tbpsでの通信が可能になり、2011年から2018年の約7年で8倍に増加すると予測されている東南アジアのトラフィック需要を支えていくことになるとのこと。

なお、SJCの運用が始まっても一般的なインターネットユーザーが速度の向上を体感できるということはありませんが、例えば日本にデータセンターを持つ企業がインドネシア向けのサービスを提供するといったような場合には低遅延での処理が可能になるといったメリットがあるそうです。

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in 取材,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log