ハードウェア

世界のインターネット上の全トラフィックを転送することが可能な技術が登場


レーザー光を無数の周波数に分けてそれぞれにデータを乗せる技術により、全世界のインターネットで通信されているトラフィックの2倍に相当する毎秒1.8ペタビットものデータ伝送を可能にする技術が発表されました。

Petabit-per-second data transmission using a chip-scale microcomb ring resonator source | Nature Photonics
https://doi.org/10.1038/s41566-022-01082-z

New data transmission record
https://www.dtu.dk/english/news/all-news/new-data-transmission-record?id=213f1735-036d-44c9-b229-d25d74dd3f02

Record-breaking chip can transmit entire internet's traffic per second
https://newatlas.com/telecommunications/optical-chip-fastest-data-transmission-record-entire-internet-traffic/

今回、1つの光源と1つの光チップだけで全世界のインターネットのトラフィックを超える伝送速度をたたき出したのは、デンマーク工科大学とスウェーデンのチャルマース工科大学の国際研究グループです。

研究グループはこの記録を実現するにあたり、特別に設計された光チップによる「周波数コム(frequency-comb)」という技術を使用しました。これは、レーザーを多数の周波数、つまり色に分けてそれぞれの周波数の振幅、位相、偏光を変調してデータを符号化することで、膨大なデータを1つの光源から送ることができるというものです。くしを意味する「comb」という名称が使われているのは、固定された周波数の振幅が「くしの歯」のように見えるからなのだそうです。


2020年には、オーストラリアの研究チームがこの技術を使って毎秒44.2テラビットの記録を出していたほか、2022年5月には日本の情報通信研究機構が毎秒1.02ペタビットの記録を出していました。

さらに、デンマークとスウェーデンの研究チームは今回の実験で、27個のコアを持つ長さ7.9kmの光ファイバーに223の波長で符号化した毎秒1.84ペタビットのデータを伝送する実験を行いました。世界のインターネットでやりとりされているデータは、記事作成時点では毎秒1ペタビット弱程度であることから、この実験により全世界のインターネットの2倍近いデータをたった1本のレーザーに変えて伝送できたことになります。


しかも、この記録はまだほんの序の口に過ぎず、理論上はさらに100倍ものデータを送信できると見積もられているとのこと。共著者の1人であるデンマーク工科大学のLeif Katsuo Oxenløwe教授は「私たちの計算では、最大で毎秒100ペタビットの伝送が可能であることが示されています。なぜなら、私たちのソリューションはスケーラブルだからです。さらに拡大させるには周波数コムを増幅しなければなりませんが、その場合でも周波数コムの特質を失うことなくスペクトル効率の高いデータ転送を実現できます」と話しました。

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in ハードウェア, Posted by log1l_ks

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